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訪問クラス 「英訳の基本Ⅰ」

SVOの構文に英語的発想のヒントがある
「英訳の基本Ⅰ」は、オリジナルテキストの翻訳課題に取り組みながら、英文ライティングに必須の英語的発想を身につけることを目的とする講座だ。プロジェクターを中心にコの字型に配置された机には、各自1台のパソコン完備。授業中は必要に応じてインターネットや辞書で調べ、お互いの顔を見ながら活発に意見交換ができるようになっている。授業を担当するのは、現役英訳者であり、英文ライティングに関する著書も多い遠田和子先生。”英語的発想をモノにする”とはどういうことか、以下にレポートしよう。

全8回のうち第4回となる今回は、テキストの「Section 3 動詞のいろいろ」を扱う。遠田先生はまず、「英語はアクションの言語であって、Somebody does something.(誰かが何かをする)というSVOで表現するところに英語の力強さがある」と前置きし、「富士山が見える」を例に日本語的発想から英語的発想に転換するコツを披露する。

「日本人は日本語の構文に引っ張られてMt. Fuji is visible.と訳しがちですが、be動詞ではなくdo動詞を使ったSVOの構文に変えてみたらどうでしょう。I see Mt. Fuji.のほうが、ずっとネイティブらしい英文ですね。このように、SVOの構文で考えることが、英語的発想の大きなヒントになります」と解説。わずか数ワードの簡単な例文ながら、遠田先生の説明を聞くと、英語的発想とは何かがハッキリわかる。

その後は、A is more important than B.→ A outweighs B. There are many scientists who like to paint.→ Many scientists like to paint.などのように、SVOの構文に則った明快でわかりやすい英文を考える作業が続く。遠田先生は、「明快さが求められる実務英語では、どの動詞を使うかがカギ。常にSVを気にしていると、英訳が上達します」と動詞の重要性を説いた。

動詞を使い分けることで場面を生き生きと描写する

do動詞の中にも、平凡な動詞と意味の濃い動詞がある。続いて授業は、「do動詞の訳し分け」へと移る。

「『止まれ』と彼は大きな声で叫んだ」を英訳する際、”Stop!”he shouted.のほか”yell” “bellow” “scream”などの動詞が考えられるが、どのような違いがあるのか遠田先生は、その場で英英辞典を引くよう促し、それらの動詞を使った場合にピッタリとくる日本語訳を訊いていく。

「bellowは『低い声でどなる』、screamは『金切り声をあげる』などと訳せます。これは、意味の濃い動詞には、動作だけではなく感情や音まで描写する力があるからです。動詞を一つ変えただけで、擬態語や擬声語で表すような意味まで加わる。つまり、動詞をうまく使い分けることで、場面を生き生きと描写することができるのです」と解説を続け、「読者の頭の中にどんな絵が浮かぶか、それを決めるのが動詞の力」と結んだ。

授業の後半は、翻訳課題の解説の時間だ。受講生はあらかじめ英訳課題を提出しており、後半開始時に添削済みの課題を受け取っている。遠田先生は、受講生の訳文で間違いが多かった箇所を中心に、受講生からの質問やコメントにも応える形で講評する。この日の課題で初めに話題になったのは、パラレリズムだ。

「Tencel生地は洗っても色落ちせず、長持ちします」の例文を、ある受講生はTencel fabric is color-fast and lasts long.と英訳した。一見、問題のない訳文のようだが、遠田先生は「一文の中にbe動詞+形容詞『is colorfast』とdo動詞『last』を用いており、パラレリズムができていない」と指摘する。このような場合、形容詞でTencel fabric is colorfast and long-lasting.とするか、動詞でTencel fabric washes and wears well.とすると美しい英文になるそうだ。

また、セントラル・パークにある施設を紹介する例文の英訳では、湖、劇場、噴水、テニスコートなどの冠詞をどうするかで迷ったという質問が寄せられた。この質問に対し遠田先生は、「英語では、常に名詞の単数/複数を考える必要がある。公式HPに地図があるので、実際に施設を確認するのも一つの方法」とアドバイス。そのほかの質問やコメントにも丁寧に応え、第4回の授業が終了した。

英訳の要ともいうべき「動詞」について指導を受けた受講生。この授業を通して、それぞれが英訳に対する確かな手応えを感じたに違いない。

講師コメント

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「英訳の基本Ⅰ」
遠田和子先生
えんだ・かずこ

青山学院大学文学部英米文学科卒。在学中に米・パシフィック大学に留学。大手電機メーカーで翻訳業務に従事した後、フリーランスとなる。現在、日英翻訳者、翻訳学校講師、英語関連書籍・雑誌のライターとして活躍中。著書に『英語「なるほど!」ライティング』『Google英文ライティング』(ともに講談社)などがある。

全体的な発想の枠組みの中で言語パーツを見て
日英の違いを認識しましょう
日本人が英文を書く場合、日本語の影響が強い英文を書きがちです。シンプルでわかりやすい英文を書くには、英語的発想が必要。「英訳の基本Ⅰ」では、その英語的発想を身につけるコツをお伝えしていきます。全8回の授業では、動詞、前置詞、冠詞など品詞ごとにアプローチして、どうすれば英語らしい文章になるかを解説します。全体的な発想の枠組みの中で、一つひとつの言語パーツを丁寧に見ながら、日英の言語の違いを認識していただきたいと思います。

授業中は、ペアワークを取り入れるなど、受講生がアクティブに関われる雰囲気づくりに努めています。お互いの顔を見ながらディスカッションができるよう、机はコの字型に配置。辞書や検索エンジンを使ってリサーチができるよう、パソコンは1人1台用意しています。まず自分で考え、調べ、検証し、そのアイデアをみんなで共有してさらに考える。このプロセスを大切にしながら、好奇心と探究心を持って授業に臨んでください。

曖昧さを含む日本語と、明確な表現の英語。その2言語間に介在するのが翻訳者であり、曖昧な表現を輪郭のはっきりした表現に変えていく英訳は、自由度と創造性が高い作業です。そこが英訳のおもしろさであり、難しさでもありますね。

英訳者を目指す方には、良い英語にふれて、英語の語彙や表現を増やす努力をしていただきたいと思います。産業翻訳者志望だからといって、実務文書にこだわる必要はありません。映画を見たり、小説を読んだり、自分の好きなことで英語をインプットしていき、表現の引き出しを増やすことが大切です。