第4回 都内観光ツアー

現役通訳ガイド(全国通訳案内士)が実際にお客様をお連れしたツアーの様子や観光地の魅力を紹介します。
今回は通訳ガイドの福田誠さんが担当します。

●2023年7月某日
都内観光ツアー
お客様:中東からのご家族7名
•1週間の東京滞在の3日目
•基本的に景色が良い場所と有名な場所に行きたいというご希望

通訳ガイドの福田誠です。
通訳ガイド歴は約10年で、主に東京を拠点にガイドをしています。
現在はロングツアーが多いですが、FITや日帰りなどさまざまな業務に携わって、現在も日本全国を駆け回っています。
コロナ禍によって2020年春から3年もの間、身動きが取れませんでしたが2023年春になってガイド需要が復活し、3月頃から大忙しとなっています。

都内観光と食事制限

今回、私がご一緒したのは中東からのご家族7名様で、1週間の東京滞在中に最初の2日間で東京ディズニーリゾート。その後は東京や富士山なども観光するという行程で、そのうちの3日目は都内観光で浅草やお台場、チームラボを訪れてホテルに戻るという行程でした。

コロナ禍が明け、世界中から様々なバックグラウンドをお持ちのお客様が来日されるようになり、それぞれの要望も多岐に渡るようになってきました。
お客様が1番心配されるのは、やはり食事についてです。ほとんどのお客様がそれぞれの国で事前に日本食を食べたことがあり、日本に来て本場の寿司やラーメンを食べることを楽しみにしているという方が多いのです。
しかし、世界中からいらっしゃるお客様の中には宗教上の理由やアレルギーなどが影響し、食事に対して制限がある方が多いのです。

今回は、東京観光様子とお食事の問題について紹介します。

●ツアーの行程
ホテル出発 →浅草 →昼食
→お台場 →チームラボ
→ホテル


食の問題、お会いしたらまず確認

皆さんが「食事制限」と聞いて一番に思い浮かぶのは、食物アレルギー対応ではないでしょうか?
現代の食生活では数々のアレルギーが確認され、特に欧米の方々は様々なアレルギーをお持ちの場合があり、対応が大変になる場合があります。
特に蕎麦やナッツのアレルギーに代表されるような、場合によってはアナフィラキシーショックを起こすような食材や、乳糖不耐症、グルテンアレルギーのような身体に深刻な影響を起こす可能性がある体質には特に注意が必要です。お客様にお会いして、はじめに確認する必要があるのは、アレルギーの有無です。

さらにアレルギーとは別に、世界にはさまざまな宗教やそれに伴う食の制限、各国独特の食文化があり、その情報も把握するように努めなければなりません。
例えばユダヤ教の方のコーシャーやイスラム教の方のハラル、菜食主義者の方は卵は食べられるのか? はたまたヴィーガンなのか、など、確認しなければならないことが数多くあります。

日本食は食事制限に不向き?!

今回、都内ツアーをご一緒したお客様は、出発時間を11:00にしたいということで、最初の浅草観光のあと、すぐに昼食を食べる必要がある行程でした。

ホテルをかなりゆっくり目に出発して、浅草へ。
暑すぎるからということで雷門や宝蔵門、本堂付近でささっと写真を撮って、あっさり浅草観光は終了。
その後は昼食が食べたい、できるだけ高いレストランでハラルの肉が食べられる場所を見つけてほしいとのリクエストでした。

そこで朝から必死にそれに当てはまるレストランをいくつかリストアップしてお客様にお伝えするものの、ほとんどすべてが却下。
結局、ハラル対応が可能な焼肉店に連絡を入れて、席を確保し、そこでの昼食となりました。

店選びがギリギリまで決まらなかった原因には、まずハラル対応のレストランの絶対数が少ないこと、さらにその上で富裕層の嗜好に合うようなレストランがかなり限られてくるということがあります。特に宗教上の理由での食事制限をお持ちの方は、いくらハラル対応をしていたとしてもご自身の慣れた味のレストランを選ぶ傾向があるため、中東系のレストランや、誰にでも好まれる肉料理などのレストランがいいのですが、そういった業態のお店で「高級店」となると都内でも数軒となってしまいます。

しかも日本食はアレルギー対応が意外としにくい料理なのです。
まずは出汁。昆布出汁、鰹出汁のように植物性と動物性の出汁を合わせることが多いので要注意なのです。
さらに日本を代表する調味料である醤油はアルコールであるので、ハラル対応の醤油が使えるか確認する必要があります。

今回の場合は、話題をなんとか食事の話に持って行き、焼肉の話をして、ハラル対応ができることをアピールして、こちらのレストランになりました。
お客様には非常に喜んでいただけたのですが、内心ヒヤヒヤしていたのでした。その後はお台場で買い物をして大人気のチームラボを体験されて非常に満足されたようでした。

*********

現在、日本には数多くのお客様が世界中から来ています。滞在するホテルと食事は基本的なものですが、旅行の満足度の点で非常に重要なウェイトを占めるものです。
まだまだ数は少ないですが、東京にはベジタリアン対応やハラル対応ができるレストランは少しずつ増えているようです。
通訳ガイドとしては、お客様に聞かれた時に、そのようなレストランをすぐにご提案できるように、日頃からアンテナを張っておくことが必要だと思います。


福田  誠
福田 誠Makoto Fukuda

全国通訳案内士。2013年全国通訳案内士資格を取得後、通訳ガイドとして個人客から団体まで幅広く日本全国を案内し、通訳業務も含めて現在に至る。新人研修ほか各種の通訳ガイド関連研修の講師も務める。