Vol.3 “ハーフ”でも何もしなければ“バイリンガル”には育たない/会議通訳者・エバレット千尋さん

通訳者・翻訳者の子育て2017.07.14

「clean」は「kleen」?

子ども達がオーストラリアに移住したのは、娘が11歳、下の息子が5歳の時でした。日本の公立小学校で読み書きを学んだ娘と違い、息子は保育所以外に通ったことがありませんでした。英語も話せましたが、やはり現地の子供たちとはレベルが段違いです。のんびり屋で口数も少ない息子は、現地のプレップ(幼稚園年長組)の先生から「少し遅れた子」というレッテルを貼られてしまいました。ただそこは移民の国、読み書きの遅れている子どもには専門の先生が個別に補修をしてくださります。この補修クラスが効果を発揮したのでしょう、息子は少しずつ読み書きを覚えていきました。
一般的にネイティブの子どもたちは英語を耳から学び、文字を習いたての小さな子どもは発音の通りに書くことも珍しくありません。例えば「clean」を「kleen」と書くといった具合です。そんな中で「読み書きが遅れた」息子は、先生に教えてもらったスペリングを淡々と忠実に覚えていったように思います。

お母さんは古くならないよ、年をとるんだよ

一方で日本語教育は、移住して最初の2年間お休みにしていました。英語の遅れを挽回するためです。でも「土曜校」と呼ばれる日本人学校の補修コースに行かせようと思ったときにはすでに遅し。息子は英語を頭で翻訳して日本語を話すようになっていました。「僕が大きくなったら、お母さんは古くなる」と言っていたのもこの頃です。
一方、無事土曜校に入った娘は、そこで日本のいろいろな地方の友達に出会い、ハイブリッドな方言を話せるようになりました。息子の日本語はキッチン・ジャパニーズ(幼児が親から学んだような日本語)のままですが、密かにひらがなとカタカナはマスターしたようです。今はスマホのアプリで日本語を勉強しています。

バイリンガルの子どもをもって思うのは、幼い頃から本や動画で英語に外国語に触れさせることの大切さです。三つ子の魂百まで。たとえセミリンガルであっても一つの言語の基盤があれば、その上に立派な言語の城を築くことができると思います。

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