第3回 通訳ガイドと語学ボランティア

通訳ガイド行脚2007.04.17

国際イベント開催になくてはならない
ボランティア・パワー

「プロには至らないが、語学力を活かしたボランティアとして社会の役に立ちたい」という声が広まる中、「ボランティアがいるために仕事が取られてしまう!」と懸念するプロの立場があることも事実です。前2回は、通訳ガイドと一般の通訳業務の違いについて触れてみましたが、今回は全国で増加している語学ボランティアについて私の考えを述べてみたいと思います。

語学ボランティアというのは、全国の自治体や各種の組織が育成する傾向にある人材またはそのグループで、災害時やイベント時などに通訳やその他の作業を主としたボランティア活動する人達です。もちろん観光の案内やガイドをするボランティアも含まれます。今年も5月には京都でADB(アジア開発銀行の年次総会)という大型の国際会議が開催されるのですが、そこでは地元の語学ボランティアスタッフが半年も前から選考を経て何百名と集められ、受け入れの準備が進められています。そういった国際会議やスポーツイベントにおいては、外国からの参加者のアテンドをしたり、案内その他のサポート業務をするボランティア・パワーは、今ではなくてはならない存在になっているのが全世界的な傾向といえます。

ボランティアとは言っても、その語学レベルはピンからキリまで幅広く、中にはTOEIC 900点を超える優秀な方々もいらっしゃいます。ところが、いくら語学力があるからといっても、本来は国家資格によるライセンス保持者が行なうべき通訳ガイドの業務までも、すべてがボランティアでまかなわれてしまっては、やはり大きな問題が残ります。ボランティアを依頼する側、つまり、イベントの主催者や担当者が、ボランティアとプロの力量や責任の範囲の違いをどこまできちんと把握して、適正な手配をするかが重要な鍵となります。単に経費が押さえられるからボランティアを使うという短絡的な姿勢では将来に向けて正しいレールが敷けません。プロを育てる場も必要とされているのです。

プロはボランティアよりも数段上の技術や、
知識、経験に基づいた専門のノウハウを提供

ボランティアは、プロの領域を侵さないレベルでサポートをする。プロは優秀なボランティアを目のかたきとせず、舞台裏を支える貴重な力として、一緒に国際度・ホスピタリティの高い社会づくりのパートナーとして共存の意識を持つことが必要だと思います。ボランティアが年々優秀になってゆけばゆくほど、プロはウカウカしていられません。ボランティアよりも数段上の技術や知識、経験にもとづいた専門ノウハウの提供を目指さなくてはなりません。

プロの領域を侵さないとは、(地域によって事情は異なりますが)たとえば大都市であればプロの人数も多いので、ボランティア活動は1地域に限定された拠点(ブースなど)を設けて、その場での案内サポート活動に留めるなどという配慮がこれにあたるでしょう。たとえば、主要観光地の最寄りの駅の構内でボランティアが一般インフォメーションのサポートを行ない、「一緒に廻ってガイドをして欲しい」というような要望が出たら、そこからプロにバトンタッチする、あるいは最大限その場所でのガイドをしたとしても次の地域まで移動同行はしない、などは良いコラボレーションの形ではないかと思います。ですが、地方都市では地域の国際化のために、プロ並の振る舞いを期待されるされるケースも多いのです。

一人前の通訳ガイドとしてプロデビューするまでには、やはり練習の場数を踏んで技術を磨く必要があります。そのためにはボランティアとして活動するのもおおいにお薦めです。もちろん「練習になるから」などとは口が裂けても言わないことが大切。現場で、外国人のお客様はまさか自分が練習台にされているとは思いません。ある国際会議に参加した外国人の知人が
“Yoko, can you imagine how many times I was asked if this is my first visit to Japan and if I love the Japanese food?”
と嘆いていました。心優しい彼女は日本滞在中、いつも微笑みを返して国際親善に協力し、疲れ果ててしまったのでした。