第11回 通訳ガイドの営業法

通訳ガイド行脚2008.04.16

資格を取ってすぐに期待した仕事に就くのは困難
でもいくつになっても稼動できるマイペースな仕事

今年の1月末、2007年度の通訳案内士国家試験結果発表では、1,905名という前年度の倍近い合格者が出ました。Yokoso Japan! キャンペーンで外国からの観光客を増やそうとしている国の政策にそった環境整備につながる人材確保という点で素晴らしいことです。ソウルや台湾など海外でも一次試験の受験が可能になったこと、英検1級保持者などは語学試験の一部が免除になるなど、さまざまな制度の改革が影響しているのでしょう。

でも、そんなに急に有資格者が増えても、それに見合った業務量があるのでしょうか? せっかく合格して「いざガイドになろう」と意気込んでいらっしゃる新人の方々の気持ちを思うと、ちょっと不安でもあります。資格を取得してすぐにお仕事ができるわけではなく、業務研修を修了して旅行会社に営業にまわってやっとポツポツと仕事が入るようになるという初期段階レベルがあるからです。1年で売れっ子になって次から次へと仕事に恵まれる人は超ラッキーなケース。資格はとっても稼働なしの人も多いのが現実です。ですから「ガイド稼働したい人は焦らずに。デビューは自分の実力が適切に育まれ、準備がそろったときに人生いつでもスタートできます」というお話をよくします。50代でデビューしてイキイキとマイペースでお仕事をこなされている方も珍しくありません。通訳ガイドは自分のライフスタイルに合わせて働くことができるのが強みのお仕事ですね。

個人でお客さまと直接取引するのは
さまざまなリスクが伴う

資格をとったらどうやって営業(仕事をゲット)するのか?というのは頭痛の種。誰でも戸惑います。自分の足で旅行会社を回ることも必要ですが。自分で自分の売り込みはしにくいもの。まずは履歴書を送って書類選考というのが一般的でしょう。知人の紹介で仕事を頼まれるケースも多いので、名刺を作り、広く「通訳ガイド業務を始めました」とふれまわることが効果的ですね。

どうやってお客様をゲットするか、というのは観光業界全体共通の悩みです。多額な宣伝費をかける余裕がない、宣伝や営業をしてもいま一つ効果に表れにくい。でもそんな中、意外に小さな民宿や温泉旅館でいつも外国人客で盛況というところがあります。通常、観光業界は旅行会社からお客様を送ってもらう流通ルートが多いのですが、繁盛している施設は世界中のお客様から直接の予約を受けています。通訳ガイドの営業に参考になるのではないかと思いました。インターネットで自分のホームページを作成し、世界にダイレクトに売り込むという手法です。(パソコンの知識が生きる時代を実感しますが)自分で予約を入れた結果、楽しく快適に過ごせた場所は、お客様自身が得意げに口コミで情報を広げてくれます。ガイド業界でもガイドさんの紹介をまとめて載せるインターネットシステムの整備が進んでいますが、それとは別に個人発信ベースでいつでも自由に行える営業法ですね。

しかし、インターネットで宣伝する(=個人で直接営業取引をする)場合にはうまく受注できて収入増につながるラッキーケースだけでなく、注意すべきリスクもあります。様々な個人情報が無差別の相手に見られるわけです。参考に過去の例をご紹介しておきましょう:

(1) 問い合わせが頻繁で、その返事に明け暮れてしまう
(2) 旅程や訪問先の相談を受けると調査や応答に時間が取られる
(3) 相談にのって情報を提供しても実際にガイド業務を依頼をしてくれない
(4) 見積もりをだすと値切られ、他のガイドとの料金競争をさせられて最終的に安いガイド料金で業務を受けることになった
(5) 日程の変更や直前のキャンセルが多く、キャンセル料金がとりづらい
(6) カードでの支払いができないことに文句を言われる
(7) 客の希望でドル建て料金になったが、支払の段階で為替差損を被った
(8) 銀行振り込みで自分の口座に送金された金銭を日本で現金化するためだけにも自己負担で別途2000円強の手数料が別途必要となり、思いのほか経費がかかった
(9) どんなトラブルがあってもすべて自力で解決せねばならない
等々。

国際ビジネスに慣れてリスクマネジメントができるならばおおいに活用すべきです。でもそうでなければ、痛い目にあってしまうこともあるかもしれません。通訳ガイドといえども経費精算など事務作業も伴うので、業務に慣れるまでは在日本の旅行会社や派遣会社などの組織を通してお仕事をされるほうがとりあえずは安心かもしれませんね。