第65回 アジア諸国の観光行政官へ日本のガイド事情を紹介

通訳ガイド行脚2013.03.16

震災後の訪日観光業界に復活と活気が感じられる2013年春は、アジア各国からの訪日観光客数が伸びています。同時にアジア諸地域では日本からの観光客を誘致しようとする熱も高まっているようで、日本の観光事情を学ぼうというメコン地域の観光行政官の方々に、日本の通訳案内士事情を紹介させていただく機会が神戸でありました。ベトナム、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジアが自国単体だけではなく、隣接した地域全体で連携して観光を盛り上げようという研究をしているのです。午前中は講義、午後は通訳ガイド体験をしてもらう目的での大阪市内観光がありました。アジア諸国の観光行政の一面に触れた興味深い一日をご紹介したいと思います。

研修の講義は公用語の英語で行なわれましたが、参加者の言語は様々。それぞれの国の特徴あるアクセントがついて、参加者の多様な英語スタイルに慣れるのにちょっと時間が必要でした。あまり何度も聞き返すと失礼かな? と恐縮しながらもくり返し言ってもらっていると、他の国の参加者が助け船を出してくれたりして、それが全体の助け合いムードを助長して、プラスの効果を出すような場面もありました。ジャパニーズ・アクセントの英語も、こんな国際舞台では決して恥じることはないのだ、日本はアジアの一員だと感じた日です。

日本のガイド制度について意見を交換
今まで観光事業に関連した研修は何度も行われて来ましたが、通訳案内士をとりあげて研究されることはありませんでした。今回初めて「ガイドの役割とその重要性」に1日を割り当てて焦点があてられたことは嬉しい限りです。

午前中は、通訳案内士制度のこと、通訳案内士法の取決めや罰則、3種類の有償ガイド(全国で就業できるNational Guide、地域限定ガイド、総合特区法における研修のみで稼働するガイド)が存在すること、登録制度、試験制度、そして現在の通訳案内士の研修や就業状況や収入、業界が抱える問題点などについてお話をしました。

日本では一旦国家試験に合格して登録すれば、更新なしで永久に資格が有効です。それで良いのだろうか? と質問が出ました。優秀なガイドが必要とされているのに政府の行う研修が少ないのではないかとか、通訳ガイドの保証のない不安定な生計のありかたについても意見交換がありました。

他国でも見られるノンライセンス・ガイドの問題
ここ数年浮かび上がってきた大きな問題点のひとつである外国人添乗員によるノンライセンス・ガイドについては、「私たちの国でも同じ問題がある」とタイの代表者が大きくうなづいて反応します。「これは国が解決すべきことだが難しい…」どうやら世界のあちらこちらでノンライセンス被害がある事実がわかってきました。これから外国人観光客を増やそうとする国の担当者達は、これから起こり得る要注意事項として興味深げにメモをとっていました。

大雨に降られようと、トラブルが起ころうとも、その場でアテンドする通訳案内士の笑顔や振る舞い方ひとつで、問題が回避されたり、ツアーが成功へ導かれる可能性があります、ガイドとは言語の橋渡しだけではなく、国の経済にも影響を与え、国の印象を決める大切な任務を負っています…と締めくくった後、午後は楽しい大阪城への観光へ出かけました。

お城の建築や石垣の壮大さに感心しながらも、皆さんが最も歓喜してとても嬉しそうな表情を見せたのは、梅や水仙など自然の花が咲いている様子でした。写真を撮りながら「これは本物か?」やはり花々が人の心を和ませるのは国籍に関係ありませんでした。

大阪城のあとは庶民の繁華街、道頓堀を散策し、法善寺水かけ地蔵に参拝しました。さすが仏教国の皆さん! 一人ひとりが順番に前に出て水をかけ、静かに祈りをささげて次の人に代わります。他の国の人々なら2~3人同時に参拝をしがちですが、時間がかかっても全員の個別参拝を尊重する姿にハッと心を打たれた気がしました。そういえば以前、鎌倉の大仏の前の石段でも、靴を脱いで裸足になって膝まずき祈りをささげるアジアの観光客の団体にちょっと驚いたことがありました。

観光産業は日本が発展していますが、仏教に関しては彼らが先輩かもしれませんね。いつもお互いに学ぶことの多い日々が続きます。