第71回 世界遺産登録で活気づく富士山ツアー

通訳ガイド行脚2013.09.16

東京オリンピック開催決定に日本人としては嬉しいエネルギーを感じる昨今ですが、6月に世界遺産に登録になったもう一つの話題、富士山を訪れる通訳ガイ現場実習を9月初頭に開催致しました。その時の様子をお知らせしたいと思います。

ひょっとして五合目まで到達できない混み具合では?と想定して様々な訪問オプションを考えました。案の定、ツアー中は異常な混雑にあちらこちらで巻き込まれ、富士山自体のことよりも通訳ガイドの重要な作業の一部である旅程管理の面では貴重なケーススタディの場となったのでした。

渋滞時にはどう対応する?
新宿出発の時点から渋滞が激しく、やっと中央高速に乗ったかと思えばそこでも渋滞。しかも雨までパラついて、ガイドはそんな時どうやってお客様の沈んだ気持ちを明るくしようか?と考えます。でも出発時に良い天気だったのが富士山に到着したら雨天、というよりはその逆の方がいいですよね。心の中で逆事態を祈りつつ、声は極力天気など気にしないぐらいの明るさで様々なジェネラルトピックスのトークを続けます。

富士五合目に到着したのは、予定よりも50分遅れの時間でした。今年の夏最高の5000人、貸切バス130台の賑わいでした。五合目での案内のしかたは、土産物屋の前のロータリーでバスを降り、約30分滞在後に駐車場で待つバスに戻るという動きになります。
ところが、駐車場が満杯のため、我々のバスは五合目からトンネルを抜けて少し下った空き地のような場所に停まっていたのです。バスを見つけて全員が集合するまでに出発時間がまた15分遅れました。

「ありゃ~!」とアタフタしながら、通訳ガイドは予定より遅れて到着する昼食用レストランに電話を入れます。謝りながら何とか待ってもらい、ランチ手配はクリア。そしてランチ後に訪問する予定の富士吉田にある御師住宅(昔の江戸講の人々の宿となった住宅です)にも連絡を入れます。地元のボランティアガイドさん2名に説明をお願いしていたので、その予約時間を遅らせねばなりません。断られたらどうしよう~の不安な気持ちは、彼らの協力的な対応で解決できました。ホッ!

しかし、問題は行程最後の箱根、畑宿にある寄木作りの工房訪問でした。17時に終了する工房の事情に合わせてもともと16:10が到着予定だったのですが、富士山から御殿場~箱根方面への渋滞も重なって、到着時間が読めなくなってしまったのです。
一回目は「15分ぐらい遅れます」
二回目は「30分遅れます」
そして、とうとう最後は「誠に申し訳ありません。本日は訪問ができなくなりました」
ひたすら謝り続ける事態です。電話を入れるたびに相手側の声の音もとがってくるのが伝わってきます。結局は訪問地を諦め、後日、寄木作り工房の英語と日本語のパンフレットを郵送してもらうことにしました。

トラブルは永遠には続かない。サービスの基本を忘れずに
今回は研修でしたが、そんな時お客様がどのようにこの異変を受け止めて納得して下さるか?が、一番のネックです。だいたい状況経過を見れば理解して頂けるのですが、その都度、「遅れた時間を取り戻すためにここでは20分の滞在とします」
とか、「渋滞を避けて別のルートで廻ります」とか「訪問先に電話をして延着を了解してもらいました」などガイドが努力していることもさりげなく随時知らせることが必要です。

あ~あ!しかし、想像を絶する渋滞はどんなベテランになっても辛いことです。謝り続けることもストレスで疲れますね。金銭もからんで一人で判断できず困った時は、業務の依頼者である旅行会社の方などに報告、連絡、相談(ほうれんそう)しましょう。1時間半に1度はトイレ休憩も必要です。でも事故や病気などのトラブルに比べれば、自然渋滞はまだ平和ですね。幸いなことに“トラブルは永遠には続きません”。
サービスの基本は、①安全、②快適、そして ③楽しんでいるか? これが迷った時に戻るべき基本の順番だ、と思い出した次第でした。

これからは観光シーズンに入ります。今年は外国人観光客も増えて活気が感じられます。通訳ガイドの皆様が、怪我もトラブルもなく活躍できますようお祈りしています。