第7回 ノマド実践編 ~ 翻訳者なら旅に出よう!

実践!ノマドライフ2016.05.27

ノマドできなきゃ翻訳じゃない?

翻訳は孤独な職業だ。心のバランスが少し崩れると、世界の誰にも理解されていないように思えることもある。このコラムを書いていても仮想の批判者が頭をもたげてくる。「旅しながら仕事なんて、家族に迷惑じゃないのか?」。そしてお次は「そもそも“ノマド”なんていうスタイルで翻訳なんてできっこない」という批判。確かに自宅やオフィスでの翻訳に比べて効率面で劣ることは認める。PC 1台だけでは心許ないかもしれない。

それでも守秘義務以外の問題で「旅しながら翻訳できない」なんてことはない。翻訳に必須なのは知識と思考力、つまり頭であって、言葉の置換や編集を支援するソフトのようなツールではない。ところが最近は「頭を使って考えること」がないがしろにされ、「いかにツールを使いこなせるか」ばかりに焦点が当てられがちだ。

ツールを駆使して効率化するのは結構なことだが、翻訳の楽しさ(苦しさでもあるが)は、やはり頭を使って訳文をひねり出すことではないだろうか。そんな信念のせいか、僕の仕事はそういった頭を使う翻訳、ツール等をあまり頼りにできない翻訳に偏っている。だからPC 1台あればどこでもできてしまう。逆に、そんなの無理というなら、それはもはや翻訳ではなく、単なる言葉の置換作業ではないかという気もする。少なくとも僕がやりたい翻訳の仕事ではない。

というわけで今回は福岡へやって来た。孤独を埋めて心のバランスを保つためにも、旅先に友人がいれば落ち合うことが多い。博多に住む小学校時代からの友人に連絡を取ってみると、ノマドファンでもある彼はコラム用に写真を撮ってくれると言う。どうやら少し勘違いしているようだ。仕事しているわけでもないのにPCを広げてポーズだけとる、という“やらせ”は趣旨に反するのだが……でもせっかくの好意をむげにはできないので撮ってもらった。
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九州といえば、震災に遭った熊本、南阿蘇、八代はいずれも思い出の地だ。ノマド翻訳者にできる支援。それはやはり、いつかまた仕事をしに再訪することだと思っている。
nomad7-3                                               (2回訪れた熊本城)

公共交通ノマドのコスト

それにしても日本は狭くなった。LCC(格安航空会社)のおかげで九州にも往復1万円以内でいけるようになった。セールがあると「安い」という理由だけでつい予約してしまう。10月には成田-沖縄便、その翌週には札幌便を予約しているが、いずれも片道なんと500円(諸費用込で往復約2,000円)。移動はファーストクラスというどこかの知事は、ぜひ見習ってほしい。

しょせんはしがない翻訳者。住宅ローンもまだまだ残っているし、子供たちの養育費もかさんできた。サステイナブル(持続可能)にノマドするにはケチケチやるしかない。1泊1万円もするホテルなんてとんでもない。ベッドとデスクさえあれば十分。宿泊予算は基本的に1泊4,000~5,000円程度だ。何十万円も費用計上するどこかの知事は、ぜひ見習ってほしい。

行き先を当日決め、移動しながら宿をネット予約することも多い。そうすると当日割引でシャレたホテルに泊まれたりする。ただ、最近は外国人観光客の増加に伴って宿代は上昇傾向にあり(数年前に比べると2、3割アップか)、特に人気の観光地では予算に収まらなくなってきている。
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交通費、宿泊費以外にかかるのは仕事場としても使うカフェやレストランでの飲食費。最初はケチケチするが、だんだんと「現地にお金を落とすのは悪いことじゃないよね!」などと調子のいい理屈が出てきて財布のヒモが緩みだす。だいたいの予算を財布に入れておいても、今はコンビニで24時間お金をおろせてしまう。そんなこんなでケチケチしていても費用はかさんでくる。

●ノマド費用モデルケース(電車・飛行機移動、福岡5日間の場合)
交通費 15,000円(飛行機往復10,000円+その他5,000円)
宿泊費 20,000円(1泊4,500円 x 3日 + 金曜日6,500円)
飲食費(名物など) 10,000円(1日2,000円 x 5日)
その他 3,000円(施設入場料など)
計48,000円

飲食費はノマドしなくてもかかるので、奮発して名物料理を食べる場合など、通常の飲食費を超える部分のみとした。あとは、みやげ代。来日観光客が選ぶような意外なみやげではなくベタなものばかりだが、これも含めると約5万円。1日1万円。こうやって計算してみると結構使っているものだ……貯金がなかなか増えないわけだ。このコストに見合う効果は出ているかと聞かれると、大きなクエスチョンマークが浮かぶ。
nomad7-5-2          (帰りに寄った実家でベタなみやげに歓喜する甥と姪)

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