第17回 調べまくるのが翻訳の醍醐味!?

一行翻訳コンテスト2008.09.16

■オススメの一冊
2005年アガサ賞最優秀処女篇賞ノミネート作家のユーモアたっぷり推理小説

『Not a Girl Detective』
(Susan Kandel著 Avon Books刊)

Not a Girl Detective

さて、暗い話はこれくらいにして、今月のネタは「Not a Girl Detective」。著者のSusan Kandelは、美術評論家から転向してミステリー作家になったという人物で、主人公はCece Carusoというミステリー作家の伝記作家。イタリア系なので、チェチェ・カルーゾかな。このチェチェが、第一作「I Dreamed I Married Perry Mason」ではアール・スタンリー・ガードナーとペリー・メイスン(テレビ・シリーズにもなったので知っている人もいるかな?)を題材に取り上げていました。この第二作は、アメリカの少年少女ならば誰でも知っている少女探偵、ナンシー・ドリューとその作家というかその作家グループについて取り上げています。ストラトマイヤー・シンジケート社は、複数の作家を雇い、キャロリン・キーンという偽名の下で数多くのナンシー・ドルー作品を残しています。さすがに数で言えば、ドイツの宇宙英雄ペリー・ローダン・シリーズには負ける(ギネスブックに世界最長の小説シリーズとして取り上げられており、既に350巻を超えている)には及ばないものの相当数の作品が発行されています。ということで、チェチェは、ナンシー・ドルー・ファン大会(コミケみたいなもんですね)で基調演説をやることになり、友人のラエル、それにブリジェットと共に、ナンシーに関するコレクター、エドガー・エドワーズのところをたずねますが、そこで見つかったのは額に穴が開いたエドガーの姿でした。殺人者は誰なのか、さらにその魔の手はチェチェにも迫ってきます。という風に書くとかなりシリアスな印象を受けるかも知れませんが、その文章はとてもユーモラスなもの。また音楽好きなら、曲名の地の文に対する埋め込みなどもあって楽しみ倍満。登場人物がマニアなだけに、ペダンティズムもたっぷりなので、かなりお勧め。ちなみにシリーズでは「Shamus in the Green Room」とか「Christietown」が続いています。たとえば、こんな会話が出てきます。

“What do you collect, Cece?”
“Does dust count?”
“No. Little tea sets? Salt and pepper shakers? Navajo bascket?”

みたいな。こういうのを当意即妙っていうんですかねえ。あるいは

Or that early printings of number 18, The Mystery at the Moss-Covered Mansion, made reference to the forthcoming volume as The Quest of the Telltale Map when it was actually printed as The Quest of the Missing Map.
Fan is short for fanatic.

読みながら自分だったらこういうのをどう訳すだろうなあとつい考えてしまうんですよねえ。

■今月のペーパーバック
Bram Stoker Award受賞のホラー作家のペーパーバック最新作
『The Vanishing』
(Bentley Little著 Signet刊)

The Vanishing

今月の2冊目は、ああ、またくだらない(笑)ものを読んでしまいました。ペーパーバックって定価で買うと高いので、マニアックなものはともかく、ベストセラーについてはなるべくバーゲンで買うようにしています。たとえば、丸善や三省堂のバーゲンも有名ですが、量を考えると紀伊國屋書店の洋書バーゲンははずせません。会場が昔は新宿南口店だったんですが、最近は松坂屋の催事場で行われることが多いので、ちょっと注意していないと見逃すのが難点かな。それで、この連載のネタ探しも兼ねて、この間、何冊か買い込んできたんですが、その中に以前取り上げたベントリー・リトルが数冊転がっていて、ついサルベージ。今回取り上げるのは、「The Vanishing」、2007年出版だから、ペーパーバックでは最新刊になるかなあ。(ハードカバーでは「The Academy」というのが8月に出ました。)カリフォルニアで、次々と凄惨な事件が起こっていきます。金持ちのCEO(今の時期にはとてもいやな響きですが)が家族や隣人を次々と殺戮。彼の残したメッセージは「This is where it all begins.」早くもいやな感じですねえ。さらに子供たちが犠牲になったり、消えたりしていきます。ソーシャル・ワーカーのキャリー・ダニエルズはレポーターのブライアン・ハウエルズと共にこの出来事の背景にあるものを探っていくのですが、そこで見つけたものは……。というわけで、読んでしまうんですよ、こういうのはとほほ。ちなみにワタクシの場合、活字はともかく映像は絶対にアウトです。「ソウ」だの「ホステル」だのは絶対に禁止。約束だよ。

■第16回 ウルトラショート翻訳課題の講評

では今月の課題に行ってみましょう。今月はご応募が58通! もありました。ありがたいけど、ちょっと大変(^-^;

<課題文>
On a cool and perfect California morning, on the last day of her short life, Lisa Benedict parked her Fiero in a quiet residential area several streets away from the gate house of Sur La Mer.

<解説>
文章自体は平易なんですが、小説の書き出しですから、かなり注意が必要です。本を買う場合って、書店で手にとって、とりあえずぱらぱらめくってみる。面白そうなら最初の数行を読んでみるというパターンが多いんじゃないかなあ。ですから、書き出しの文章がぎくしゃくしていたり、日本語として成立していなかったりすると、まずそのまま本棚や平台に戻されてしまう可能性が高いです。その辺を含めて訳してもらえれば最高ですね。最初のa cool and perfect California morningという部分はまずイメージを浮かべて欲しいところ。「からっとして、気持ちよい、ああ、朝ってこう言うもんだよねえ、みたいな朝」と来て、その後に「the last day of her short life」とくるから、ええっとなるんですね。後に名前が来るからherを彼女のとかやってしまうと、何か軽くなります。従って「その」くらいがちょうどいい感じ。her Fieroは、GMが出しているポンティアック(Pontiac)ブランドの一つで、「彼女のフィエロ」を止めたとかするとちょっとピンとこないかも知れません。以前はポンティアックも輸入されていたんですが、いまは正規販売されていないので、「ポンティアック・フィエロ」でも悪くはないですが、むしろ「愛車のフィエロ」みたいに処理する方が吉かも。gate houseは「守衛詰所」で、アメリカのアクション映画で良く車を止めようとして守衛が撃たれるか、逆に中から出てきた車が突破するか、あるいは爆発するという(先入観強し。)「守衛所」でもいいですが、「守衛室」というと部屋がある感じになるのでベストではないかも。「守衛所がある門から」みたいに処理しちゃってもいいんじゃないかなあ。あるいは「守衛所のところから」。意外にめんどいのが「Sur La Mer」。もともとはフランス語で「on the sea」という意味です。従って、フランス語読みをすれば「シュール・ラ・メール」あるいは「スー・ラ・メール」くらいかな。上からきちんと訳し下げてもいいですし、逆にしてもいいです。

1.
涼しく、申し分のないカリフォルニアの朝。その短い生涯の最後の日、リサ・ベネディクトはポンティアック・フィエロを閑静な住宅地に停めた。通りをいくつか隔てた向こうにはシュル・ラ・メールの守衛室がある。

(全般的にはとても良くできています。ただ単語ベースで「シュル・ラ・メール」それから「守衛室」がちょっと引っかかるかなあ。でも筋はとても良いですよ。)

2.
涼しく清々しいカリフォルニアのある朝、この日短い生涯を終えることになるリサ=ベネディクトはスール・ラ・メールの門番小屋から通り何本か先の静かな住宅地にポンティアック・フィエロを駐めた。

(アメリカの普通の人名だとイコールは使わなくて、中黒が普通。門番小屋というと何かちょっとイメージ違うような気がします。「駐める」は当て字なので、翻訳では避けた方がいいかも。あと読点(、)を余りに使っていないので、読み手に不親切ですよう。)

3.
これぞカリフォルニアといった感じの、涼しくて申し分ない朝だった。短い人生最後の日に、リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールの守衛所から通りを数本へだてた閑静な住宅地にフィエロを駐車した。

(「これぞ」で始めてしまうと、朝がポイントのように読み手には伝わるんじゃないかなあ。こんないい天気なのに死んじゃうのよんという流れが読者を引き付ける感じなので。)

4.
カリフォルニアの涼しいパーフェクトなある朝、彼女の短い人生の最後の日、シュール・ラ・メールのゲートハウスから通りを何本か隔てた閑静な住宅街に、リサ ベネディクトはフィエロを駐めた。

(小説の書き出しだったら、やっぱりパーフェクトな朝と書かれている時点でちょっとアウト。ゲートハウスはたぶん読み手にはピンと来にくいんじゃないかなあ。)

5.
ひんやりとして申し分のないカリフォルニアの朝、その短い生涯の最後となる日に、リサ・ベネディクトは愛車フィエロを閑静な住宅街に駐車した。シュール・ラメールの正門は数ブロック先にあった。

(「ひんやりとして申し分のない朝」ってよく考えると「冷たい感触・雰囲気であるさま」だから、coldじゃないかなあ。とするとあまり申し分なくはないような。あと「ブロック」まで持っていくかどうかはちょっと悩むかも。)

6.
ある涼しく気持ちのいいカリフォルニアの朝、彼女の短い人生に終わりを告げたその日、リサベネディクトは、サーラマーの家の門から数通り離れた閑静な住宅街に、彼女のフィエロを停めた。

(「カリフォルニアの朝」というとperfectになるかしら。それなら「カリフォルニアらしい」とかにしたらどうかな。終わりを告げたというと、何か自分からという感じだけど、リサは殺されちゃうので。あと中黒をちゃんと使いましょう。サーラマーからsur la merは想像つかないよ。「数通り」という言い方もしないし。)

7.
涼しくて申し分のないカリフォルニアの朝。それは、彼女の短い生涯が最後を迎える日のことだった。リサ・ベネディクトは、シュール・ラメールのゲートハウスから道路を数本挟んだところにある、静かな住宅地にフィエロを停めた。

(訳文自体としては悪くないんですが、「それは~だった」が原文のさらっとした感じではなく、すごく目立つようになっている気がします。もう少し「えっ」という感じになると良いですね。)

8.
短い生涯の最後の日となった、涼しくて、最高のカルフォルニアの朝、リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールの守衛所からいくつか通りを隔てた、静かな住宅地にフィエロを停めた。

(「日となった」と「朝」のつながりがちょっとわかりにくいかな。後半は割といい感じです。)

9.
ひんやりとして気持ちのいいカリフォルニアの朝、リサ・ベネディクトは短い人生の最後の日に、シュール・ラ・メールの守衛詰所からいくらか離れた通りにある静かな居住区に愛車フィエロを停車した。

(「ひんやり」は上述。「守衛詰所」はちょっと堅苦しい感じ。「いくらか離れた通り」というのはseveral streets awayのニュアンスがちょっと伝わらないかも。)

10.
涼しくて完璧なカリフォルニアの朝、彼女の短い人生の最後の日に、リーザ・ベネディクトは彼女のフィエロをスー・ラ・メールの門楼から5,6通り離れた住宅地に停めた。

(「彼女」が繰り返されるのはちょっと荒っぽい感じがします。「5,6通り」というのは意味が通じないでしょう。門楼は「門の上にある楼」なので、ここでは意味が違うかな。)

11.
涼しく完璧なカリフォルニアの朝、短い生涯の最期の日に、リサ・ベネディクトはフィエロを閑静な住宅街に停めた。豪邸スル・ラ・メラからいく道か離れた場所だ。

(豪邸じゃないんですよ。sur la merはもともとフランス語なので「メラ」と読むことはないです。「いく道か」もたぶんすーっとは読めないでしょう。)

12.
空気のきりりとひきしまった、カリフォルニアのとびっきりの朝、それは彼女の短い人生の、最後の日、リサ・ベネディクトは門衛付き豪邸サ・ラ・マーからほんの数ブロック離れた、静かな住宅街の一角に彼女のスポーツカーを停めた。

(「空気のきりりとひきしまった」は少しばかりいじりすぎのような。「門衛付き豪邸」ではないです。前回も書いたように、これは施設なので。「サ・ラ・マー」とは読みません。ポンティアックはスポーツカーまでいうと微妙かなあ。)

13.
その朝、カリフォルニアは晴れわたり、ひんやりと心地よかった。短い生涯を終えるこの日、リサ・ベネディクトはフィエロを静かな住宅街に停めた。通りをいくつか行くと、シュール・ラ・メールの守衛所に着く。

(前半はけっこう工夫されていてとてもいい感じです。ただ「通りをいくつか~着く」の部分はさすがにやり過ぎかなあ。ちょっと原文の雰囲気からはかけ離れすぎているかも知れません。勉強という意味では原文にもう少し忠実に訳した方が力はつきますよ。)

14.
爽やかな、文句なしのカリフォルニアの朝だった。短い生涯の最後の一日となるその日、リサ・ベネディクトは閑静な住宅街にフィエロを止めた。シュル・ラ・メールへの扉である管理ゲートから、通りをいくつか隔てた場所だった。

(前半は悪くありません。ただ「シュル・ラ・メールへの扉である管理ゲート」は意味自体が良く分からないんじゃないかなあ。)

15.
ある涼しい絶好なカリフォルニアの朝に、短い人生の最終日を迎えたリサ・ベネディクトがシュルラメールの門番小屋から少し離れた閑静な住宅地に自身のフィエロを停めた。

(「ある涼しい絶好な朝」ってどんな朝でしょう。「人生の最終日」というのも何か素っ気ない感じがします。門番小屋ももう一つかなあ。several streets awayはもう少し忠実に訳すこと。)

16.
涼しくて完璧なカリフォルニアの朝、彼女の短い人生の最後の日に、リサ・ベネディクトは、彼女のフィエロを、海沿いの門番小屋から何本か通りを隔てたところの、閑静な住宅街に停めた。

(彼女が繰り返されるのがどうにも気になります。Sur La Merは大文字になっていることからも分かるように固有名詞。門番小屋というと何か田舎っぽい感じを受けますね。)

17.
彼女の短い生涯の最後日を飾るかのようなさわやかで気持ちのいいカリフォルニアの朝、リサ・ベネディクトはシュールラメールの守衛室から通りをいくつかまたいだ静かな住宅街に彼女のフィエロを停めた。

(読点が少ないので、どの言葉がどの言葉にかかっているのかがとてもわかりにくくなっています。「最後日」とは言わないですね。)

18.
冴え渡った最高のカリフォルニアの朝、短い生涯の最後の日、リサ・ベネディクトはフィエロをシュール・ラ・メールの守衛所から幾筋か離れた閑静な住宅街に停めた。

(「冴え渡る」は(1)あたりの空気が冷たく澄んで、物の形や風景などがくっきりと見える。(2)あたり一面が冷え冷えとする。という意味になりますから、カリフォルニアの風景には向かないと思います。「幾筋」というのはさすがに通りを示す意味には使えないでしょう。もっと国語辞典を引くこと。)

19.
涼しくて完璧なカリフォルニアの朝である。彼女の短い人生の最後の日だ。リサ・ベネディクトはサー・ラ・マーの家のゲートからいくつかの通りを離れた閑静な住宅地に車を停めた。

(「サー・ラ・マー」とは読まないです。gate houseは「家のゲート」ではありません。「いくつかの」というのは翻訳上とても使いにくい言葉ですよ。全体に文体がハードボイルド調になっています。)

20.
冴えわたる絶好のカリフォルニアの朝、彼女は短い人生最期の日を迎えた。リサ・ベネディクトは、フィエロをある閑静な住宅地に駐車した。そこから幾つか通りを隔てた所に、サー・ラ・メールという施設のゲートはあった。

(「冴え渡る」は上参照。「サー・ラ・メール」はちょっと音違うかな。最後は「ゲートがあった」になるかな。これもハードボイルド調。少し文章切りすぎです。)

21.
彼女が短い生涯を閉じるその日、カリフォルニアの朝はさわやかで完璧だった。ラ・メール伯爵の門番小屋から、通りをいくつか隔てた閑静な住宅地に、リサ ベネディクトは彼女のフィエロを駐車した。

(伯爵はearl。sirは伯爵とは限らないですよ。(これはsurだけど。)なんか、伯爵の門番小屋ってけっこう違和感がある表現だったりします(^-^;。)

22.
カルフォルニアの、ひんやりとして申し分のないある朝のことであった。その日こそが彼女の短い人生最後の日となるのだが、リサ・ベネディクトは愛車フィエロを閑静な住宅地の一角、シュール・ラ・メールの守衛小屋から何本か通りを隔てたところに止めた。

(雰囲気はあります。「その日こそ」とすると強調されるので、「その日は」みたいな感じで処理しちゃったら雰囲気良かったんじゃないかなあ。嫌いな訳ではないです。)

23.
ひんやりとしたすばらしいカリフォルニアの朝。短かった人生の最後の日。リサ・ベネディクトはシュール・ラメールの入り口から少し離れた閑静な住宅街の道路にフィエロを停めた。

(これだと視点がリサ風に読めちゃうんじゃないかな。でも死人が振り返るというのもちょっとホラーだよう。それ以外のところは悪くはないんだけど、はしょっちゃったところもあるかな。)

24.
リサ・ベネディクトの短い人生最後の日である素晴らしく完璧なカリフォルニアの朝、彼女はSur La Merの門番小屋から離れた住宅地のいくつかの通りにフィーロを停めた。

(修飾句が長すぎなのに、読点が少ないです。Sur La Merはカタカナ表記試みようよ。門番小屋はやっぱり閑静な住宅地の側にはあまりないような気がするんだけどねえ(^-^;)

25.
カリフォルニアの涼しくて何も文句のつけようのない朝、彼女の短い生涯最後の日に、リサ・バーディクトはシュール・ラ・メールの守衛小屋から数本先の通りに彼女のフィエロを停めた。

(バーディクトというとワタクシはverdictの方を思い出しちゃうよん。スペルは良く見ること。それ以外はけっこういい感じなのでもったいないなあ。)

26.
ひんやりとした、よく晴れたカリフォルニアのある朝。彼女の、短い人生最期となった日。リサ・ベネディクトは、シュール・ラメールの門楼から数本通りを隔てた静かな住宅街にフィエロを停めた。

(門楼は上記。それ以外はけっこう雰囲気も流れもいいので、これももったいない。あと「ラメール」は「ラ・メール」とした方がいいよ。フランス語でsur la merはon the seaみたいな意味です。だからラメールってザシーって書いてある感じがするのよん。)

27.
カリフォルニアのある晴れた涼しい日の朝、それはリサ・ベネディクトの短い人生の最期の日でもあった。その日彼女はシュール・ラ・メールの守衛室から数本離れた通りにある閑静な住宅地にフィエロを停めた。

(守衛室というとどうしても部屋っていう感じがします。守衛所の方がいいだろうなあ。「それは」のそれは何を指しているんだろう。「涼しい日」かなあ。でも朝がその後に来ているからちょっとぴんと来にくいです。)

28.
ある涼しい、素晴らしくカリフォルニアらしい朝に、そして彼女の短い生涯の最終日に、リサ・ベネディクトは、スー・ラ・メアの見張り小屋から何本か道路を隔てた、閑静な住宅街にフィエロを停めた。

(見張り小屋がまずとても気になります。何か森の中とかにありそうだよね。「~に、~に」と繰り返すのもちょっと読みにくいかな。「最終日」って間違いではないんだけど、何か公演みたいだよねえ。)

29.
ひんやりとした空気がこの上なく心地よいカリフォルニアの朝。短い人生の幕を閉じようというこの日、リサ・ベネディクトは、閑静な住宅街に愛車 フィエロを停めた。のシュール・ラ・メールのゲート・ハウスから2、3本入った所だった。

(なぜか文章がおかしい。はて。前半は悪くないです。でも2、3本入った所って「何が」2、3本かが分からないよねえ。)

30.
清々しく気持ちのいいカリフォルニアの朝、その儚い人生の最期の日、リサ・ベネディクトはシュール・ラ・メールの門番所から通りを数本隔てた、閑静な住宅地に愛車のフィエロを止めた。

(「はかない」というのはいろいろ意味があるけど生死について言う時には「*あっけない。あっけなくむなしい。」みたいな感じだからちょっと違うんじゃないかなあ。それ以外はそこそこまとまっています。もう少しさらっと読めるとなお吉。)

31.
クールで完璧なカリフォルニアの朝、彼女の短い人生での最後の日、リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールのゲートハウスから何本か入った閑静な住宅街に、フィエロを停めた。

(「クールで完璧」ってきくと人間考えませんか? 訳文としてはさらっと仕上げていて悪くないんだけど、もっと読者視点に立てると良くなるんじゃないかなあ。)

32.
涼しくて最高なカリフォルニア日和の朝、自分の人生がはかなくも終わる日だと知らずに、リサ・ベネディクトは、スー・ラ・メールの守衛所から数本離れた通りの閑静な住宅街で、自分の車フィエロを停めた。

(「はかなく」については上述。「~と知らずに」はちょっと足しすぎ。「涼しくて最高な~の朝」の部分、もう一工夫するとかなり良い訳文なんですけどね。)

33.
爽やかで雲ひとつなく晴れ渡ったカリフォルニアの朝だった。短い人生の最後の1日となったその日、リサ・ベネディクトは「スール・ラ・メール」と呼ばれる施設の門から通りを数本隔てた閑静な住宅地に、愛車フィエロを停めた。

(gate houseはきちんと訳出すると良かったかも。もう少し足し込まずに訳せばけっこういい感じだったかも知れません。)

34.
ひんやりとすがすがしいカリフォルニアの朝、そして短い生涯最後の日、リサ・ベネディクトはシュー・ラ・マーの門番小屋から何本か離れた静かな住宅街に、愛車のフィエロを停めた。

(「ひんやりとしてすがすがしい」かな? 「何本か」は何から何本かなのかが分からないです。門番小屋はちょっと。)

35.
カリフォルニアの涼しくて申し分のないある朝、短い人生の最後の日に、リサ・ベネディクトは愛車のフィエロを静かな住宅街に停めた。〈シュール・ラ・メール〉の守衛詰所から通りをいくつか隔てた場所だ。

(「申し分のないある朝」の「ある」の置き方が気になるのですねえ。「ないある」とつながってしまってどうにも読みにくいです。全体的には悪くないのでもうちょっとかなあ。)

36.
気持ちのよい、最高のカリフォルニアの朝だった。短い生涯の最後の日に、リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールの守衛詰所から通りを数本隔てた静かな住宅地にフィエロを駐めた。

(「駐めた」は当て字ね。「短い生涯」の前に「その」と付けた方が良かったかも。後半はもう一カ所くらい読点を打ってもよかったかなあ。全体的には悪くないです。)

37.
清清しく完璧なカリフォルニアの朝、短い生涯の最終日に、リーサ・ベネディクトはシュール・ラメールの門番から数路はずれた閑静な住宅街に愛用のフィエロを止めた。

(「数路」ってピンと来にくいと思います。「生涯の最終日」も間違いではないけど、そうは言わないだろうという表現ですね。愛用のフィエロも「愛用の」と付けたことでかえって分かりにくくなっているような。)

38.
ある、涼しくてこの上なく快適な、カリフォルニアの朝。彼女の短い人生最後の日。リサ・ベネディクトは、スール・ラ・メールという名のゲートハウスからいくつか通りを隔てた、静かな住宅街に、愛車のフィエロを止めた。

(ゲートハウスってたぶん普通の読者にはピンと来にくいように思うんですよ。これだったら「カリフォルニアの(と)ある朝」とした方が流れが良かったかな。全体的にはいい感じです。)

39.
涼しくて快適なカリフォルニアの朝であって、彼女の短い人生の最期の日、リサベネディクトはSurLaMerの水門小屋から何本か離れた静かな住宅街に車を停めた。

(「であって」はどうにも流れを崩しています。Sur La Merね。水門小屋じゃないです。何が「何本か」離れているのでしょうか? もっと読者の立場に立って訳しましょう。)

40.
その朝、カリフォルニアの涼しくパーフェクトな、彼女の短い生涯の最期の朝、リサ・ベネディクトはフィエロを、閑静な住宅街にあるシュール・ラメールの守衛室から数本離れた通りに停めた。

(いじりすぎ。最後の日ではあるけれど、最後の朝というわけでもないんですね。「涼しくパーフェクトな」がどこにかかっているのかがちょっと分かりにくいです。中黒の位置に注意。もう少し交通整理してね。)

41.
涼しくて気持ちのよいカリフォルニアの朝、リサ・ベネディクトは、その短い生涯の最後の日、シュールラメールの守衛詰所から通りを数本離れた閑静な住宅地に愛車を止めた。

(フィエロはやっぱり外しちゃうとちょっとまずいかなあ。朝と最後の日を離しちゃったのが気になります。そのために文章がかえって散漫になってしまったかも。)

42.
最高かつ完璧なカリフォルニアの朝、短かった人生最後の日、リサ・ベネディクトがフィエロを駐車したのは、「スール・ラ・メール」の入り口にそびえる建物から数ブロック離れた静かな住宅地だった。

(coolは文字通りの意味でサイコーという意味ではないです。朝なので。gate houseがそびえていたらこわいですよう。辞書はまめに引きましょう。数ブロックは間違いではないですが、streetsを活かしましょうね。)

43.
カリフォルニアらしいクールな朝、リサ・ベネディクトの短い人生最後の日。閑静なサー・ラー・マー住宅街へ入り、守衛官舎から通りを幾つか過ぎた所で、リサはフィエロを停めた。

(ちょっといじりすぎ。「サー・ラ・マー」じゃなくて「シュー・ラ・メール」で、これは建物。官舎っていうのは「(1)国や自治団体が、官公吏の宿舎として設けた住宅。官宅。(2)役所。また、役所の建物。」ですよん。)

44.
最高にイカしたカリフォルニアの朝は、彼女の終わりの始まりだった。リサ・ベネディクトは閑静な住宅街にフィエロを停めた。サー・ラ・マーの門番小屋とは、いくつか通りをはさんで離れている。

(うーん、やりすぎ。「終わりの始まり」といっても一日とは限らないでしょ。「サー・ラ・マー」とは読みません。「門番小屋とは」じゃなくて「門番小屋からは」の方がいいんじゃないかなあ。門番小屋はちょっといまいちだけど。)

45.
涼しく完璧なカリフォルニアのある朝、その短い生涯の最後となる日に、リサ・ベネディクトはスール・ラ・マーのゲートハウスから通りを何本か隔てた静かな住宅街に車(ルビ:フィエロ)を止めた。

(「スール・ラ・マー」はちょっと違和感があります。ゲートハウスも訳出した方がいいだろうなあ。あと、読点をもう少し打った方がいいでしょうね。もうちょっとなんだなあ。実に惜しいんですけど。)

46.
カリフォルニアのあるとてもさわやかな朝。その短い生涯最後の日に、リサ・ベネディクトはスー・ラ・マーの守衛室から数ブロック離れた閑静な住宅街に愛車を止めた。

(「スー・ラ・マー」はちょっと。streetsはやっぱり活かしたいところ。streetsとするかblocksとするかによって浮かぶ風景が変わるんですよ。あとフィエロは出しましょうね。)

47.
爽やかで非の打ち所のないカリフォルニアのある朝、彼女の短い生涯の最期の一日が幕を開けた。リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールの守衛所からいくつか通りを隔てたところにある、閑静な住宅地にフィエロを停めた。

(「幕を開けた」までやると、そこが強調されちゃうんですよね。もう少し原文のさらっとした雰囲気が活かせるとよいのですが。流れ自体は悪くないですよ。)

48.
清々しく満ち足りたカリフォルニアの朝、彼女の短い人生が最期を刻む日。リサ・ベネディクトはシューラメールの正門から何本か通りを越えた閑静な住宅地にフェアロを停めた。

(うーん、「満ち足りた朝」って何に満ち足りているんでしょうか。「最後を刻む」は「最後の時を刻む」としたかったのかな。通りを越えたというと、何か先の方のような気がするんですけれど。あとフィエロね。)

49.
すがすがしい見事なカリフォルニアのある朝、自分の短い生涯がその日終わることになるとも知らず、リサ・ベネディクトはポンティアック・フィエロを閑静な住宅街の一角に停めた。そこから通りを何本か隔てたところに「スール・ラ・メール」の守衛室がある。

(「見事な朝」ってピンとこないんじゃないかなあ。「自分の短い生涯が~知らず」は足しすぎ。その後は、感覚的な問題なんだけど、書き手は「~の手前」として書いているんじゃないかな。「~の先」ではなく。)

50.
それは、ひんやりとした雲一つないカリフォルニアの朝だった。彼女の短い生涯の最後となる日。リサ・ベネディクトは閑静な住宅街にフィエロを停めた。そこはサーラマー>の門番小屋からいくつもの通りを隔てた場所だった。

(ひんやりは上述。「最後となる日」の方を体言止めにしてしまうと、文章としては落ち着きがなくなる気がします。体言止めにするなら前の方がいいような。severalだから「いくつもの」ではないよね。サーラマーとは読まないだろうなあ。Sur La Merってけっこうフレンチ・レストランであると思うんだけど。)

51.
ひんやりとした、カリフォルニアらしい晴天の朝。その短い生涯最後の日。リサ・ベネディクトは、シェル・ラ・メール病院のゲイトハウスがある道から数本先の、閑静な住宅街の路上にフィエロを駐めた。

(ひんやりは上述(検索してね。)Surはシュール(シューリアリズムのシュール)なので、シェルとは絶対にならないです。病院でもないので、やっぱりちょっとやりすぎ。ゲイトハウスとは日本語では書かなくて、Gateは(発音はゲイトなんだけど)フツーはゲートハウス。先というと、自分がいて、その先にゲートハウスがあって、さらにその先に住宅街がある感じがするよねえ。)

52.
ひんやりと乾いた空気が辺りを漂う申し分のないカリフォルニアのある朝。それは短い生涯の最後となる日でもあった。リサ・ベネディクトは、Sur La Mer という建物の門から通りを数本隔てた閑静な住宅街に愛車のフェリオをとめた。

(最初の部分は言葉を足しすぎ。Sur La Merはカタカナにしてほしかったところ。門ではなくてやっぱりGate Houseもきっちり訳したかったかなあ。)

53.
これぞカリフォルニアというような爽快な朝、それが彼女の短い人生最後の日となる。リサ・ベネディクトは、“スー・ラ・メール”の守衛所からいくつか通りを隔てた静かな住宅街にフィエロを停めた。

(これも「人生最後の日」が少し強調されてはいるんだけど、割といい感じかなあ。)

54.
涼しく申し分ないカリフォルニアの朝、短い人生の最後の日に、リサ・ベネディクトはシュール・ラ・メールの門番小屋から通りを何本かへだてた閑静な住宅街に愛車フィエロを停めた。

(これも割といい感じなんだけど、門番小屋がどうしても引っかかっちゃうんですよねえ。住宅街の中に門番小屋っていうのがどうもイメージが湧きにくいのです。)

55.
涼しくて、申し分のないほどカリフォルニアらしい朝に-それは彼女の短い人生の最後の日となるのだが-リサ・ベネディクトは、閑静な住宅街にある施設、Sur La Mer(スー・ラ・メール)から少し離れた通りにフィエロを停めた。

(挿入を使うのは悪くないんですけど、どうも「に~だが~は」のリズムが今ひとつ良くないような気がします。severalはやっぱり訳出したいよねえ。)

56.
さわやかな、素晴らしいカリフォルニアの朝――短かった人生最後のこの朝、リサ・ベネディクトはシュール・ラ・メールの守衛室から通りを何本か入った静かな住宅街に、愛車のフィエロを止めた。

(「短かった」というと、お前はすでに死んでいるという感じになっちゃうんですよね。まあ小説の中では死ぬことはわかっているんだけど、この時点では過去形にしたくないなあ。守衛室から通りを何本か入ったというと、物理的に、守衛室の向こうに通りがある感じがしてしまいます。)

57.
人生最後の日というにはもったいない完璧なカリフォルニアの朝、リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールの守衛詰所から数通り離れた閑静な住宅街に、フィエロを停めた。

(「もったいない」というのは僕がコメントに使うのはいいんだけど、小説の中ではそういう価値判断は提示されてないです。それだとやっぱり意味変わりすぎ。「数通り」とは言わないよねえ。)

58.
雲一つなく晴れ上がったカリフォルニアのある涼しい朝、その日で短い生涯を終えることになるリサ・ベネディクトは閑静な住宅街に車をとめた。シュール・ラ・メールという施設の守衛詰所はそこから街路をいくつか隔てたところにあった。

(これもけっこういいかも。ただ読点が少ないので、一行目後半はちょっと読むのがつらいです。あと最初のところは少しいじりすぎかなあ。)

<試訳>
三つくらい考えてみました。

①その短い人生の最後の日の、涼しくて、これ以上ないほどカリフォルニアらしい朝、リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールの守衛所から通りを数本へだてた住宅地の一角に、愛車のフィエロを止めた。
②いかにもカリフォルニアらしい涼しい朝、その短い人生の最後の日に、リサ・ベネディクトは、シュール・ラ・メールの守衛所のある門から通りを数本へだてた住宅地にフィエロを止めた。
③とても涼しく、この上なくカリフォルニアらしい朝のこと。その短い生涯の最後の日に、リサ・ベネディクトは住宅地に愛車のフィエロを止めた。シュール・ラ・メールの守衛所までは通り数本ほど離れていた。

<全体コメント>
シンプルな原文の割りにはずいぶん個人差が出るなあという印象でした。どうにも気になるのが、辞書を引いたり、発音をチェックしたりという部分で楽をしている人が多いこと。翻訳って七割くらいは調べものなんですよう。せっかく地の文がきちんと訳しているのに、固有名詞の発音をチェックせずにMVP逃した人がとにかく多すぎです。いつものお約束だけど「もったいない」。これが一冊本を訳すとか、いやそれ以前に数枚の英訳でも和訳でもとにかく調べて、調べて、調べまくるのが翻訳だから、もうちょっとがんばろうねえ。(自戒も込めて。)

第16回ウルトラショート翻訳課題 MVP

22さん、33さん、36さん、38さん、53さん、58さんが良かったかな。どれも少しずつ不満があるんですが、もう独断と偏見ということで今月のMVPは、横田 正道さんです。おめでとー。

応募する時に、感想でもメッセージでも何か付けてもらえるとチェックする方も励みになるのでよかったらよろしくね。(評価には一切関係しないのでご安心を。)しかし通信講座の添削の仕事をしている人は「本当にエラい!」と今月は思ったのでした。

<今月の課題文>

これいってみましょう。

“What do you collect, Cece?”
“Does dust count?”
“No.”

シンプルなセリフですが、思わず笑えるようにちょっとばかし工夫してください。最初と最後のセリフは男性で金持ちのNancyグッズのコレクター、2番目のセリフはチェチェ、30代後半の女性で、職業は本文にも書いたけど、伝記作家。その辺も考慮してね。

それではまた来月。

★★訳文の応募は締め切りました★★