第19回 不景気の時は勉強のしどき!?

一行翻訳コンテスト2008.11.16

■オススメの一冊
イギリスの女流作家が放つ前衛的小説

『The Waves』
(Virginia Woolf著、Harvest Books刊)

The Waves

まず今月の1冊目。といっても、先月中旬まではやたらと忙しくて洋書をしっかり読む時間も取れませんでしたとほほ。ということで、昔読んだ本からご紹介。たまには文学もいいでしょうということで、Virginia Woolfの『The Wave』などいかがでしょうか。昔話になりますが、僕は上智大学外国語学部英語学科の出身です。といっても、高校までに留学経験があったわけではないので、入学していきなり劣等生でしたが。当時、最初の英語学の授業で、いきなりNewsweek配られて、来週までにfront to backで全部読んでこいと言われた時にはまじ引きましたよ。大学ってこんな大変なところだったかと。で、僕みたいに受験英語で入ってきて、まったくオーラルができない学生の場合、先生が何しゃべっているのかがまず分からないんです。そういう学生は教室で後ろの方に座るのね。で、先生が何かジョークを飛ばすと、前の方2/3くらいが笑うわけです。で、それから僕たち劣等生は、前の英語が分かる連中に何がおかしかったのか教わってから笑うので、笑いに時差があると(^-^; 思えば遠くにきたもんだ。

夏休みの宿題がD.H. Lawrenceの『The Plumed Serpent』を読んで、原稿用紙50枚、感想文書いてこいだったし(^-^; 今はないECHOという英会話サークルに入ったんですが、これが英語学科の生徒しか入れないというシビアなところで、放課後にExtra Activityというのがあったんですわ。で、ノルマがReading Discussionというのだったら毎週ペーパーバック1冊。どぎつかったですよ。しかも先輩が麻雀の相手を求めてメインストリートで待ち伏せしているし(^-^;
洋書なんかはなるべくバーゲンで買うんですね。そんな中にVirginiaも入っていて、まあ買ってはみたものの、まったく意味不明。単語が分からない、文法が分からない、表現が分からないといった感じ。『Finnegans Wake』とかもそうだったなあ。さすがに今は少しは分かるような(気がする)。詩的だし、当時は語彙もなかったからよけい分からなかったんですねえ。書き出しはこんな感じ。(ご心配なく、こっちは課題文じゃありません。)

The sun had not yet risen. The sea was indistinguishable from the sky, except that the sea was slightly creased as if a cloth had wrinkles in it. Gradually as the sky whitened a dark line lay on the horizon dividing the sea from the sky and the grey cloth became barred with thick strokes moving, one after another, beneath the surface, following each other, pursuing each other, perpetually.

Virginia Woolfはけっこう短編集に入っています。前にご紹介した『The Penguin Book of English Short Stories』にも入ってますよ。難しいのが。短編から入るのが一番いいかな。西崎憲訳の「ヴァージニア・ウルフ短編集」(ちくま文庫)を小脇に置いて原書をひもとくのも一興かと。

■今月のペーパーバック
全米大ベストセラーシリーズ第2弾。かっこいい女刑事が大活躍!
『The Man Who Cast Two Shadows』
(Carol O’Connell著、Jove刊)

The Man Who Cast Two Shadows

今月の2冊目は、Carol O’Connellの『The Man Who Cast Two Shadows』をご紹介しておきます。デビュー作の『Mallory’s Oracle』が実に強烈な印象を与えた作家ですが、ミステリーであると同時に非常に文学的な香りの漂う作品でした。主人公はNYPDの巡査部長、キャシー・マロリーで、不良上がり、コンピューターが得意であり、同時にタフで、独立心の強いヒロインです。この2作目では、セントラル・パークで死体が見つかるのですが、これがマロリーの死体と間違えられて大騒ぎになることから始まります。マロリーは自分自身をおとりにして犯人を探そうと、ネットの掲示板を使いますが、実際にマロリーの命を狙う者も現れて……という話です。このシリーズ、面白いのでぜひ読んでみてください。翻訳は初期が竹書房文庫から、現在は創元推理文庫から出ています。

Her fixation with machines had its roots in the telephone company nets which spread around the planet.
The child had only the numbers written on her palm in ink, written there so she could not be lost. All but the last four numbers had disappeared in a wet smudge of blood.
こんな感じ。良かったら読んでね。

■第18回 ウルトラショート翻訳課題の講評
<課題文>

He wished he could get the insidious melody out of his mind –or, remember the rest of the words.
<解説>
まず全文をざっと見ておきましょうね。

‘As I passed by the ol’ state’s prison,
Ridin’ on a steam-line train–‘

John J. Malone shuddered. He wished he could get the insidious melody out of his mind –or, remember the rest of the words. It had been annoying hims since three o’clock that morning, when he’d heard it sung by the janitor of Joe the Angel’s City Hall Bar.
It seemed like a bad omen, and it made him uncomfortable.

書き出しは(たぶん)架空の歌詞の引用です。the old state’s prisonというのは

A few days before August 17 of that year, this strange looking craft was taken around from the East River to the North River and moored near the old State’s Prison, which stood on the square now bounded by Washington, West Tenth, West and Charles streets.

という場所にあったらしいです。本気で訳すなら歴史書をひもとくわけですが、ここではそういうのがニューヨークにあったということくらいを心得ておけばいいですね。あと、riding on a steam-line trainですから、要は「汽車に乗って、州刑務所を通りかかった時……」というのを聞いたわけです。本文をざっと訳していくと、

ジョン・J・マローンは体を震わせた。He wished he could get the insidious melody out of his mind — or, remember the rest of the words.その朝3時から、このメロディーはジョンを悩ませていた。「天使のジョーの市役所バー」の門番が歌っているのを聞いてしまったのだ。何か不吉な予兆のようにも思えて、どうも落ち着かない気分だった。
となるわけですね。よくあるパターンですが、歌詞とかメロディーを聞いて、これなんだっけなあ、うーん、うーんとなるのは日常でもよく経験があると思います。それが楽しい曲ならいいですけど、「刑務所の脇を通りかかった時」、いきなり銃が乱射されたのか、プレデターが出てきたのか、妙に中途半端で気になってしまいますね。
英和辞典だと:
ひそかに[こっそり]たくらむ, 険悪な, 腹黒い, 油断ならない, 知らず知らずのうちに魔の手をのばす, 〈病気などが〉知らない間に進行する[潜行性の, 潜伏性の]
みたいな訳が付いています。これにつかまっちゃうと訳文が変になっちゃうよ。どうも日本語が落ち着かない時には英和辞典じゃなくて英英辞典(今はオンラインで簡単に引けます)を見てみましょう。
insidiousは:
1: beguiling but harmful; “insidious pleasures”
2: intended to entrap
3: working or spreading in a hidden and usually injurious way
とか
1. Working or spreading harmfully in a subtle or stealthy manner
2. Intended to entracp; treacherous
3. Beguiling but harmful; alluring
だからイメージとして「腹黒い曲」とかにはならないです(^-^; 要は頭から離れないという感じですよね。統語としては
He wished he could get the melody out of his mind
he could remember the rest of the words.
です。従って、このメロディーに頭から出ていってもらうか、さもなければ歌詞の残りの部分を思い出してしまいたいわけです。そうすれば落ち着くから。
とすると、これはいろいろなアプローチが考えられますが、たとえば「このどうにも気になって仕方がないこのメロディーを忘れ去るか、いっそ歌詞の残りを思い出せたらいいのに」という感じ。「頭から離れない」でもいいし「くせになる」とかでもいいですね。あるいは「頭に引っかかる」とか。こういう感覚が掴めたら、あとは自分の言葉で訳すだけです。
どういうメロディーかピンとこない時には、Googleで「”insidious melody”」として検索するといいですよ。それで実際に他にどんな文脈で使われているのかを確認するのです。例としてFEAR FACTORYとか挙がってました。あとこんなのもあったよ。
He also has a knack for the insidious melody that occasionally recalls the early work of Aztec Camera.
DADAというグループの「Dog」という曲がinsidious melodyを持っているというのでこれも聞いてみたけど、ダークではないなあ。やっぱりalluringが一番近いと思います。大人向けだとボブ・ディランの『Nashville Skyline』に入っている「I Throw It All Away」のメロディーもinsidiousだそうな。
ではコメントいってみましょう。

1.
いつのまにか頭の中で歌いだしている。このいやな曲を止めることはできないものだろうか。それが無理なら、残りの歌詞を思い出すのでもいい。

(独白調にするのは悪くないと思うんですが、「歌い出している」で切っちゃうと流れが悪いよね。句点じゃなくて読点にすると良かったのに。「いやな」とするとちょっと違うかな。)

2.
「続きのメロディーか、残りの歌詞を覚えてたらなぁ。」

(ちょっとシンプルすぎて、この頭から離れない雰囲気がまったく消えてしまっています。ちょっと色気がないよねえ。)

3.
纏わりつくこのメロディを、頭の中から追い払えたらいいのに・・・そうでなければ、残りの歌詞を思い出せたら。

(「まとわりつく」メロディというのはちょっとピンときにくいかな。「頭にまとわりつくようなこのメロディを、追い払えたらいいのに」とかの方がすっきりするかも)

4.
ジョンは忘れてしまった狡猾な曲か、歌詞の続きを思い出せればいいと思った。

(「狡猾な曲」はその時点で意味不明だと思いますよ。曲自体は覚えているんだから、意味も逆になっていますね。)

5.
ジョンはその陰湿なメロディーを忘れるか、あるいは残りの歌詞を思い出すことができればと願った。

(陰湿なメロディーってどういうメロディーだろうって思いません? だいたい日本語として落ち着かない時は、訳文が十分に練られていないんだと思います。「暗い」とか「重い」とか。)

6.
耳について離れないこの陰鬱なメロディーを、どうにか頭の中からかき消したかった。でなければ、せめて歌詞をすべて思い出したかった。

(ああ、これはいい感じなんだけど、「陰鬱な」というとえらくダークな感じを受けるんですよねえ。文体からするとそこまで重くないと思う。こう言う時には「陰を落とした」がいいですよ。)

7.
このたちの悪いメロディを頭から追い出すか、歌詞の残りを思い出すかできればいいんだが。

(たちの悪いメロディってどういうメロディーでしょうか。フツーの小説(か?)なので、そうするとあまり違和感がある英語はでてこないと思うのです)

8.
このうっとうしいメロディーを頭から放り出せないものか、もしくは、せめて残りの歌詞を思い出せれば、と願う。

(これもけっこうまとまっていていいんですが、「うっとうしい」はやっぱりどうも重いよね。「気になる」とか。)

9.
頭に焼きついて離れないこの音楽を取っ払えたら?もしくは残りの歌詞を思い出せたら、と願った。

(全体的には悪くないんですが、どうにも「取っ払う」というのがちょっと荒っぽい感じを受けます。ここだけ口語っぽいんだよねえ。)

10.
いつの間にか忍び込み、耳について離れないその曲を締め出してしまいたかった。??いや、せめて続きを思い出せるといいんだが。

(メロディーが忍び込むというのもちょっと怪しいかな。「いつの間にか入り込んで」かな。「締め出す」は「頭から」とか付けないと落ち着かないと思います。)

11.
気付いたら頭から離れなくなっていたこのメロディーを、心の中から締め出せたらーーじゃなければ残りの歌詞を思い出せたらいいのだが、と彼は思った。

(英語って、誰が主体なのかを示すためにいちいち「彼は?した」とかいう類が入るんですね。それを一つ一つ訳すととてもうざったくなるんです。だから和訳する時にはなるべく代名詞を削るようにしてみてください。「じゃなければ」は口語過ぎ。「心」よりは頭かなあ。)

12.
頭の外をぐるぐるまわっているこの暗いメロディをつかまえることができたら、そうでなくともせめて、歌詞の続きを思い出すことができたらよいのにと願った。

(暗いメロディーをつかまえるってどうやるんだろう? 後もう少し後半は読点が欲しいところかな。もう少し簡潔に。)

13.
マローンは頭の中でしつこく鳴るメロディーから逃れられたら、せめて残りの言葉を思い出せたらと願った。

(orのニュアンスが出てないと思います。これだと両方求めていることになってしまいますね。残りの言葉ってたぶんピンと来にくいです。歌詞はwords、lyricsなどと言います。Words and music by XXXみたいな。)

14.
この陰気くさい唄が早く頭から離れてくれるか、でなければ、せめて歌詞の続きを思い出すことができればいいのにと思った。

(「陰気くさい」というのは何か今ひとつあか抜けない感じがします。そっちの解釈でやるなら「陰気な」かなあ。)

15.
あの陰湿なメロディは何だっただろう・・・、歌詞が全部思い出せればいいんだが。

(現実に「陰湿なメロディ」ってどんなんだと思います? 「陰を落とした」とか「重い」とか。あとこれだと、やはりメロディを忘れるというニュアンスはなくなってますね。)

16.
勝手に頭の中に流れ込んでくるその曲を忘れられたら・・・、もしくは残りの歌詞を思い出せたら、と彼は願った。

(「もしくは」を使うとちょっと硬い感じになります。「さもなければ」とかの方がいいかな。あと流れ込んでくるというと今聴いているという感じがします。)

17.
耳ついて離れないその歌を忘れ去ることができれば、せめて、覚えているにしても別の部分の歌詞であればと思った。

(「耳_に_ついて」ですね。あと後半は意味が違っています。今覚えている部分+残りの部分が知りたいんですね。)

18.
心の底から、思わず口ずさめるようなメロディーだったらな。それなら、残りの歌詞も覚えられるのに。

(これも意味がぜんぜん違っちゃってます。メロディー自体は口ずさめるようなものだったんです。janitorがそうしていたわけですから。歌詞の一部だけを聞いて、メロは思い出せるのに、歌詞の続きが気になって仕方がないんです。)

19.
頭の中で執拗になり続けるメロディーが止んでくれればいいのだが?あるいは、せめて歌詞を全部思い出すことができれば。

(これも比較的良い感じなんですが、「執拗に」がちょっと強いかなあ。「しつこく」の方が読みやすいかも。)

20.
心を蝕んでいくそのメロディーを頭から追い出すことができたら、残りの歌詞を覚えていたら、と思った。

(「心を蝕む」というと、何かこの人が壊れつつあるような感じがします。それは違うかな。あと「あるいは」は足したいところ。)

21.
この男は徐々に心を蝕んでいくあのメロディーを記憶から抹殺してしまいたがっていた。でなければ、残りの歌詞を思い出してしまうのだ。

(前後の流れもあって、一応主人公なので「この男」としちゃうと視点がずれそうです。「抹殺」は少し強いかなあ。あと残りの歌詞をさもなければ思い出したいんです。)

22.
その陰険なメロディを頭の中から消し去りたかったができず、それならば残りの歌詞を思い出せればいいとのにと思った。

(「陰険なメロディ」がやっぱりわからないよね。「できず」というか、どっちかにしてくれという感じです。あと「できず」が文章のリズム崩してしまってます。)

23.
彼はじわじわとこたえる旋律が心から離れるように願い、そして他の言葉を思い出そうとした。

(うーん、「じわじわとこたえる」旋律ってどんなメロディーだろう。orだからそしてという意味にはならないです。他の言葉っていうと歌詞との関連性が分かりにくいですね。)

24.
頭の中に勝手に入り込んでずっとまわっているこの曲、いいかげん忘れたいよ。それが無理ならせめて歌詞の続きでも思い出したいもんだな、と彼は思った。

(アイデアは悪くないですが、何かこういう人かなあ。もう少しだけ丁寧な口調にすると読みやすくなるかも。)

25.
「あの陰険なメロディーを頭から振り払えたら、あるいはあの歌詞の残りの部分を思い出せたら…」とマローンは思った。

(「陰険なメロディー」が気になるですよ。訳文としてはやっぱり説明的というかちょっと直訳っぽいです。もう少し流れを大事に。)

26.
不吉なフレーズだ。頭から追い払えたらいいんだが。それか残りの歌詞を思い出せれば。

(フレーズは、「楽曲の小さな区分。小楽節に相当することもあるが、旋律の流れの自然な一区切りを指すことが多い」という意味ですね。うーん、間違いではないんだけど、やっぱりメロディーの方がすんなり読めるんじゃないかなあ。あと「不吉」ではないよねえ。)

27.
耳にこびりついて離れないこのメロディを、なんとかして追い払いたかった。あるいは、せめて歌詞の続きを思い出せれば。

(これは悪くないです。主語付けても良かったんじゃないかな。「ジョンは、耳にこびりついて…)

28.
この陰険な歌がどうしても耳について離れない–せめて残りの歌詞を思い出させてくれとマローンは心につぶやいた。

(「陰険はいけん」、うう、東国原知事のようだ。それなら陰気とか、せめて。「心の中でつぶやいた」かな。)

29.
思わず知らず頭に流れるこのメロディーをなんとか振り払いたい。せめて、歌詞の続きが思い出せれば。

(流れは悪くないんですが、orがうまくいきてないんだよねえ。もう少しすっきりしない感じが出せると良かったです。)

30.
彼は、頭にこびりついて離れない、この陰鬱なメロディーを忘れたかった。どうせなら、残りの歌詞がちゃんと思い出せれば良かったのだ。

(「どうせなら」だとちょっとorのニュアンスが出てないかなあ。訳文自体は比較的まとまりがあるんですけど。忘れるか、思い出すかという二者択一なんですね。)

31.
ジョンは、この陰気くさいメロディを、記憶から消し去ることができたらどんなにいいかと思ったが、もし無理ならば、続きの歌詞を思い出したいと願った。

(んー、何か「パタリロ!」の中に出てくる説明的なセリフっぽいです。もっとシンプルにできないかな。これだけ長くするなら「せめて」が入りそうです)

32.
ジョンは、頭の中からこの陰鬱なメロディーを追いやるか、残りの歌詞を思い出すか、どちらかしたいと思った。

(「追いやる」場合、どこにという言葉がないと落ち着かないと思います。意味はそういうことなんだけど、「どちらかしたい」としてしまうと少し文章に色気がなくなっちゃうかなあ。)

33.
気づけば思考を邪魔しているこの曲を、なんとか振り払えないものか。せめて歌の続きを思い出せれば。

(うーん、「思考を邪魔する」というと何か哲学者みたいですね。もう少しさらっといけないかなあ。たとえば「気が散ってしか他がない」とか。)

34.
脳裏を這いずるこのメロディーを頭から取り除いてしまいたい、と彼は思った。或いはいっそ、歌詞の続きを思い出せたらいいのに、と。

(「脳裏を這いずる」うーむ、戸川純の「昆虫軍」みたいだ。何かスプラッタみたいなんですが。「あるいは」は開く。「取り除く」んだったら「消し去る」の方がいいんじゃないかなあ。)

35.
その陰鬱なメロディーを、頭の中から追い出してしまいたかった。さもなければ逆に、歌詞の続きを思い出したかった。

(これも意味としてはほぼOKなんですが、やはり文章が素っ気ないというか説明的というか。一つには「さもなければ逆に」がどうにもくどいこと。もう一つは「かった」という語尾が連続していることかな。たとえば「あるいは歌詞の続きを思い出すのでも良い。」とか。)

36.
だんだんと気になって来るその歌を記憶から消し去るか・・あるいは、残りの歌詞を思い出すとかできればいいのにと思った。

(ああ、これは比較的いいなあ。中黒は三点リーダーに変えた方がいいかな。あと最後の方が少しくどい感じがします。)

37.
彼はそのしつこく離れないメロディーが頭から出ていってくれればいいのに、と願った。でなければ残りの歌詞を思い出すことができたら、と。

(ああ、これもなかなかしっかり訳せている方ですね。ただ「いいのに」がちょっと冗漫。あと「、と願った」の読点もなくていいんじゃないかな。もう少しすっきりと。)

38.
あの陰湿なメロディ?を頭から追い払えれば…。それがだめなら、残りのすべての歌詞を思い出せたらいいのに。

(「陰湿なメロディー」って自分の中で思い浮かべてみてください。「哀愁のメロディー」はあります。「陰を落としたメロディー」もあります。でも陰湿とか陰険なメロディーってどんなんだろう。)

39.
俺の頭の中から、この陰険なメロディーを消し去ってくれ。それができないなら、残りの詞(ことば)をおもいださせてくれないだろうか。

(「陰険なメロディー」はあまり言わないよねえ。歌詞なので「ことば」とふりがなをつけなくてもいいんじゃないかな。アイデアは悪くないんですが。)

40.
ジョンは、できるものなら心に引っ掛かっているその歌を消してしまいたいーーーできないのなら、その歌の続きを思い出したいーーと思った。

(「ー」をダッシュの代わりに使ってはだめですよ。「心に引っかかる」も悪くはないですが「頭に」かなあ。)

41.
ジョンは自分の気を狂わせるような鬱陶しいメロディーを取り去りたい、それか自分の気持ちをすっきりさせる続きの歌詞を思い出したいと思ったのだ。

(気も狂いそうなメロディーを門番が歌っている情景はなかなかシュールですよ(^-^; 昔なら「文明堂」、最近なら「サイデリア」って頭で鳴り出すと止まらないじゃないですか。それで「カステラ一番、何とかは二番」ああ、何だっけという感じわかります? 続きの歌詞がすっきりさせるんじゃなくて、歌詞を思い出してすっきりするのね。あと「それか」は口語っぽすぎ。)

42.
できるものならこの暗いメロディーを頭から取り去ってしまいたい。しかし、後の歌詞を思い出したくも思う。

(これも「or」のニュアンスがうまくいかせてないです。ジョンは、中途半端な感じがいやなんですよね。喉に小骨がつかえた感じというか)

43.
ジョンはその陰険な旋律を彼の頭から追い出すことを望んだ・・・あるいはその詞の残りを思い出すことを。

(「陰険な旋律」ってイメージわきますか? 陰険=「表面はよく見せかけて、裏でこっそり悪いことをするさま。感じが暗くて、たくらみの多そうなさま。」ですよん。ただそれ以外の部分ではよくまとまっているので、ちょっともったいなかったです。)

44.
その陰気な旋律を頭から追いやりたいと思う一方で、続きを思い出したい衝動にかられもしていた。

(「陰気な旋律」というと葬送行進曲っぽい気が(^-^; 「追いやる」は「追って他の場所に去らせる」ですから、「頭の外に追いやる」の方がいいんじゃないかな。あと「衝動に駆られる」はurged toとかになりますね)

45.
知らず知らずのうちに気分を悪くさせるこのメロディーを彼の心から追い出したいと思ったのだ。だが一方でこの歌詞の続きをすべて思い出したいとも思ったのである。

(「思ったのだ」「思ったのである」というのはくどいよね。もっとシンプルにできるはず。「だが一方で」よりは「さもなければ」の方がいいかな。やっぱりちょっと長いです。)

46.
彼は頭の中のうろ覚えのメロディーを忘れるか、歌の続きを思い出したかった。

(insidiousのニュアンスが今ひとつ出てないなあ。うろ覚えというのではないです。)

<試訳>
●このどうにも気になるメロディーを頭の中から追い出せないものか。あるいはいっそ歌詞の残りを思い出せればいいのに。(独白調)
●ジョンは、このどうにも頭から離れないメロディーを忘れるか、さもなければ残りの歌詞が思い出せればと願った。(地の文)
●ジョンは、頭の中で鳴り続けているメロディーが消えてなくなるか、さもなければ残りの歌詞を思い出せればと思った。(地の文)

<全体コメント>
たくさんのご応募ありがとうございました。どうにも気になるのが「陰湿なメロディー」とか「陰険なメロディー」。実際想像してどういうのが「陰険なメロディー」だと思います? 「暗いメロディー」とか「重い曲」とかは言いますけど、メロディーが陰険になるのって非常に難しいんじゃないかな。あともともとこれを歌っていたのは門番とかだから、門番が、変拍子とかポリリズム(Perfumeじゃないって)で歌っていたらそれこそ怖い(^-^; 普通、何となく歌っているメロディーは頭に残るわけです。ですから「記憶に残る」メロディーなんですね。解釈自体は、暗いメロディーの方に取ったとしても、それが「陰険なメロディー」になっちゃだめだよん。

第18回ウルトラショート翻訳課題 MVP

自分の試訳も含めて、いまひとつ納得は行かないのですが、今回のMVPは塚本みな子さんにお送りします。ぱちぱちぱち。精進してください。僕ももっと精進しますので。

<次回の課題文>

今月の問題は、ちょっとユーモラスなのをやりたくなったので、Dave Barryの『Dave Barry does Japan』から。ユーモア作家のデイヴが日本での経験を描いた?怪しい本の一節を。

If I had to summarize the important early lesson I learned from TV, it would be: “Watch out — the world is full of people who want to kill you!” The western shows, for example, were infested with bad men who did nothing but grow chin stubble and ride around shooting people. Your average hero cowboy, such as Gene Autry or the Cisco Kid, could not ride his horse twenty feet without getting ambushed by bad guys packing six-guns that could shoot 17 million bullets without reloading.

太文字下線部分の英文が課題文です。笑えるようにお願いします。毎回ですが、コメント付きで回答をいただけるとチェックしていてやる気がでますので、またメッセージよろしくね。あとmixiとかにもいますから、翻訳屋さんに興味がある人はメッセどうぞ。(ハンドルはそのままです。)
ではまた来月。

★★訳文の応募は締め切りました★★