第21回 翻訳家としての人生を切り開いてくれた先生へ Rest in Peace.

一行翻訳コンテスト2009.02.16

■今月のペーパーバック
翻訳本も相次いで登場! コミックスにもなった人気作家のオススメの1作!
『Bootleg』
(Alex Shearer著、Macmillan Children’s Books刊)

Bootleg

では今月の1冊目。「チョコレート・アンダーグラウンド」というと「青空の向こう」で知られるアレックス・シアラーの作品で、今度アニメ映画になりますが、その原題は「Bootleg」と言います。2002年にはBBCでミニシリーズ化されています。実はこの本の翻訳が出た時に、少しだけチェックのお手伝いをさせてもらいました。個人的には翻訳でも原書でもどちらでも読んでいただきたいんですが、これ、とても面白いです。話としては、アメリカ禁酒法時代を彷彿とさせる小説で、ある国でチョコレートが禁止されてしまい、これに対して少年たちが地下チョコバーを作って対抗するという話です。また全体主義との対決みたいな側面もあります。子供でも大人でも楽しめる、ある意味ファンタジー、ある意味十五少年漂流記みたいな話なので、ぜひどうぞ。文章がちょっと事情があってご紹介できないので、こちらはタイトルだけで簡単に。

2002年度カーネギー賞受賞作品
『Thursday’s Child』
(Sonja Hartnett著、Candlewick Pr刊)

Thursday's Child

2冊目も、やはり翻訳のチェックのお手伝いをした本です。こちらはソーニャ・ハートネット(Sonja Hartnett)の「Thursday’s Child」といいます。「チョコレート・アンダーグラウンド」がユーモアたっぷりの本だったのに対して、こちらはシリアス度ばつぐん。でもちょっとだけファンタジーが入っています。オーストラリアの作家による、大恐慌時代のある家族が苦難の時代を生き抜いていこうという中で、主人公の弟は穴を掘るという特殊能力を持ち、その掘る穴はどんどん深くなっていきます。そしてやがて一家を悲劇が襲います、という感じ。文章はけっこう染みる感じでいいですよ。たとえば

Summer passed and autumn came and with it came rain, the first we had seen for a year and a half, sometimes heavy and sometimes light and sometimes just a mist on your face as if you’d walked through a cobweb strung between trees, but always, always there. Caffy was scared of it, and would shake his fists and bawl; I cavorted in the puddles and got drenched to the bloomers trying to teach him bravery.

みたいな。こちらも原書でも翻訳でも手にとっていただけるとうれしいです。

■オススメの一冊
最新映画は2月13日に世界同時公開!

『Fiday the 13th: Church of the Divine Psychopath』
(Scott Phillips著、Games Workshop Ltd刊)

Fiday the 13th: Church of the Divine Psychopath

3冊目、これを今月のメインイベントにしようかと。あ、ちなみに内容的にはあまり推薦しません(苦笑)。前にも何度か書きましたが、僕はホラーが好きだがスプラッターは嫌いというなかなか困ったタイプで、英国ハマー・プロのドラキュラ(やっぱりクリストファー・リーだよねえ)とかミイラ男は大好きだが、ジョージ・ロメロとかダリオ・アルジェントは全くダメです。エイリアンvs.プレデターは可だけど、エイリアンvsプレデター2は、エイリアン・ファンとして一応観たものの、怖い(というかグロテスクなのがダメなので)、PCで再生し、それも画面サイズを極小にすることで、どんなに怖そうなシーンもほとんど何も分からないぞ状態で見ました(うはは)。日本語で読んでもその手のは結構ダメで、同じ「殺人鬼」でも横溝正史ならいいけど、綾辻行人のは絶対ダメというタイプ。昔は英語で読むとピンと来ない(をい)ので、英語で読むと割と平気だったのですが、最近はようやく英語ができるようになったせいか、英語で読んでも気持ち悪いのは気持ち悪くなってしまいました(泣)。

前置きが長くなりましたが、このような理由から「13日の金曜日」とか「ゾンビ」はダメなんですが、ノベライズでは読むんですね。まあホラーに限らず、スタートレックやスターウォーズなど、Movie Tie-inと呼ばれる小説やスピンオフ小説は一杯出ているんですが、そのような中に「Friday the 13th」もあるのです。ということで今回取り上げるのは「Fiday the 13th: Church of the Divine Psychopath」。内容は説明するまでもありませんが、クリスタル・レイクという湖の近辺には昔から伝説の殺人鬼が住んでいて、普通、シリーズ10作もやればそれだけでだいたい100人近くは死んでいるわけですから、どう考えても犯人が捕まるまで立ち入り禁止だよねえ。(余談ですが、暴れん坊将軍を見ていると、松平健演じる徳川吉宗が悪い勘定奉行とか悪い寺社奉行とかに向かって「余の顔に見覚えはないか」とか言って、それから開き直った悪党が最後は「成敗」されて終わるわけです。で、ワタクシの疑問は、上様の顔を知っているくらいだから、たいていは自分が任命した奉行だと思うのに、そもそも上様に任命責任はないのか、上様にそんになに見る目がないのかというあたりで、なるほど、江戸時代からトップは任命責任を認めてこなかったのか(笑)と一人納得していたり。あと西村京太郎の鉄道ミステリー読んでいると、ほとんどすべての列車で殺人事件起こっているよねえ。これもこわい。)で、また性懲りもなく、必ずティーンエイジャーが夏休みにこの危険地帯にやってきて、無防備にカップルで森の中に入り、ジェイソンにやられてしまうという。この小説ももちろん基本路線はそこなんですが、この小説で新規のネタになっているのは、ジェイソンが天罰を与える存在であるとして、崇拝してしまうという危ない宗教団体が出てくることくらいかな。(別の作品では、犯罪者によるバトル・ロワイヤルをやらせ、それをテレビで生中継するというどっかで聞いたような見たような設定に、より番組としての臨場感を出すために、ジェイソンをトリックスターとして投入するというさらにめちゃくちゃなのもあったんですが、どうもジェイソンXからさらに何でもあり状態が続いているようで。)ただ、この手の小説はアクションシーンとかはそれなりに勉強になるというか、つい夢中で読んでしまうと言うか。
ということで、アクション・シーンの一節だけご紹介。

Somewhere just beyond the lights of the camp, a branch cracked in the forest. Hobb instantly shouldered his FN MK46 machine gun, while around him a variety of weapons were leveled at the trees surrounding the team. Bright red beams of laser light crossed in the darkness as the Operators sought a target. Come on out, Hobb willed. Come on out and let’s get this over with. Moments passed. Not another sound. Slowly, the team returned to their positions. Ortega, Hurley, Leonard, and Acheson continued to stand watch, their weapons at the ready.

うーん、ありふれてはいるけどけっこうテンション上がる文章だなあ。この手の小説はいかに場面を視覚的に読ませるかが勝負なんですよねえ。でも課題文は別のにしようっと。ということで、今月の課題文に行ってみましょう。

■第20回 ウルトラショート翻訳課題の講評

いわゆる書いてある通り(直訳調で訳すと)

永遠に大洋の波によって打たれている、ダイヤモンド・ヘッドの西の曲がりくねった海岸線は、この惑星で最も刺激的な風景の一つを見せている、すなわち瑞々しいハワイの緑樹の中に埋もれるように立つワイキキとホノルルである。

意味はそういうことなんですが、さすがにこれだとしんどいですね。今回は言葉の選び方を中心に考えてみましょう。まずperpetuallyというのは「永遠に」なんですが、「永遠に打たれる」というのは何か落ち着かないですよね。同義語を考えてみると、たとえば「とこしえに」といった言葉が浮かびますし、別の発想で考えれば「変わることなく」、あるいは「どんなときも」といった表現も浮かぶと思います。「打たれる」もそうで、波の場合は「洗われる」とか「波打ち」みたいな表現が考えられます。「曲がりくねった」は「出入り」という風な表現もできます。「惑星」が意外と難しかったというコメントが多かったのですが、「地球で」、「この惑星で」の他に、少し大胆にいけば、「この世で」とか「世界で」といった訳語も思いつくはず。「刺激的な風景」は文体によっては「心躍る」とか「わくわくする」といった選択肢も考えられます。そうすると「示す」にしても、この写真だったら、「海岸線の向こうに浮かぶ/見えるのは」みたいにしても構わないんですね。あるいは「浮かぶ」というのを緑の方にひっかけてもいい。「ハワイの緑に浮かぶワイキキ、そしてホノルル」とか、あるいは「ハワイの緑を背景にしたワイキキとホノルルの姿」とか。あるいは「ハワイの緑も鮮やかに、ワイキキとホノルルが……」とすることもあり得ますよね。たった1行の文章でも、訳文の可能性は皆さん一人一人の中に無限に存在しています。その意味で大切なのは言葉の連想。昔「連想ゲーム」というテレビ番組がありましたが、普段から意識していろいろな言葉をイメージするトレーニングしておくといいですよう。頭の中で、風景を想像しながら、言葉を紡いでいくという感覚ができてくると、文章自体がとても美しいものになります。(なるといいなあ。)あと、いつもの繰り返しになりますが、読者の視点を忘れないように。

たとえば

ダイヤモンド・ヘッドの西、永久(とこしえ)の波に洗われる、うねるような海岸沿いには、この世で最も心弾ませる風景の一つ、瑞々しいハワイの緑を背景にした、ワイキキ、そしてホノルルの姿が浮かび上がる。

とか

ダイヤモンド・ヘッドの西、外海の波に打たれ、まがりくねるような海岸線に広がる、ハワイの緑に映えるワイキキとホノルルの姿は、この世で最も心躍らせる風景の一つ。

とか。ではコメント行ってみましょう。がんばるぞー。

1.
絶え間なく打ち寄せる波、ダイアモンドヘッド西側の曲がりくねった海岸線が織りなすこの地上で最高に美しい景色の一つ。それは、ハワイの豊かな緑の中にあるワイキキとホノルルだ。

(個別の言葉の選び方はけっこういいんですが、たとえば、一行目の後半は読点がないのでどうにも係り受けがすっと入ってこないです。もったいないなあ。「この地上で」は「地上で」の方がコンパクトでいいんじゃないかな)

2.
大海の波が絶え間なくぶつかる、ダイヤモンド・ヘッドの西の曲がりくねった海岸線は、地球上で最も心躍る光景のひとつです。ワイキキやホノルルは、ハワイの豊かな緑に抱かれるようにしてたたずんでいます。

(「ぶつかる」というのは何かもう一つ色気がないかな。「洗われる」とか「打たれる」とか。後半はけっこういいかも知れない。あと海岸線そのものが心躍る風景に読めちゃうかなあ。あと「ワイキキやホノルルが」かな。あと「そこには」でつないだ方がきれいかも。)

3.
ダイヤモンドヘッド西側、たゆまず打ち寄せる波が生み出した曲がりくねる海岸線。見るものの心を捕らえ離さない世界有数の絶景だ。ワイキキ、ホノルルといった市街地も、ハワイの深い緑の懐に抱かれている。

(これも惜しい感じ。「世界有数の絶景だ」と断定してしまっているのがどうも。海岸線があって、そこに素晴らしい風景が広がるという流れにしたかったところ。だから「も」ではなく「が」。)

4.
大洋の波たちによって絶え間なく叩き潰された、ダイアモンドヘッドの西の曲がりくねった海岸線は惑星上の最も興奮させる景色の一つを見せている。その景色の中でワイキキとホノルルが瑞々しいハワイ島の青葉のなかに見隠れしている。

(たたきつぶしちゃだめだよう。あの黒い生物じゃないんだから。「惑星上」だとどの惑星だかわからないよねえ。「見え隠れ」かな。実際写真を見ると分かりますが、見え隠れではないのね。(「〔「みえがくれ」とも〕見えたり、見えなくなったりすること。」大辞林)

5.
ダイヤモンドヘッド西側に位置する曲がりくねった海岸線。海の波が絶え間なく打ち寄せ、ここから臨む地球の景色に、興奮は最高潮に達する。ワイキキ海岸やホノルル市の周りには、ハワイの豊かな緑が広がっている。

(入り方はいいと思います。二行目は波と最高潮を引っかけたのかなあ。ただ「ここ」がどこかすっと入ってこないんですよ。海岸線なのかな。この写真を撮った空中なのかな。そのあたりの意識の流れにもう少し注意を。あと海岸とか市も足さない方がいいと思います。惜しい)

6.
ダイヤモンドヘッド西側の曲がりくねった海岸線には絶え間なく波が打ち寄せ、この地球上で最もエキサイティングな光景を、私達に見せてくれる。また、ワイキキとホノルルには、ハワイの豊かな緑が生い茂っている。

(うーん、「また」でつないじゃうと、別の話になっちゃうんだよねえ。「この地球上で最も~、私たちに見せてくれる」の部分はもう少し締まった感じにしないと前との流れが切れている感じ。たとえば「そこには~が広がる」とか。)

7.
大海の波に絶え間なく打たれ続け,緩やかに湾曲するダイアモンドヘッド西海岸-ワイキキ,ホノルルをハワイ独特の緑樹で豊かに包み,この惑星で最も感動的な景色のうち一つを見せてくれる。

(確かに打たれ続けているんだけど、何かそうするとリアス式海岸みたいにごつごつした感じがします。「洗われる」とかの方がいいんじゃないかなあ。ダッシュでつないだのは工夫なんだろうけど、ちょっと風景がぱっと浮かびにくいような気がします。)

8.
絶え間なく打ち寄せる太平洋の波に浸食され、ダイヤモンドヘッドの西に広がる波状の海岸線は、まさに地球上で最も胸躍る景色の一つ。青々としたハワイの緑樹に囲まれた、ワイキキビーチとホノルルの町並みが寄り添うような光景をご堪能下さい。

(浸食しちゃあかんよ。というか、浸食じゃあまりに文章に色気がないです。波状の海岸線というのもちょっと硬いかな。あと「ご堪能ください」だとどちらかというと写真のキャプションじゃなくて、観光案内だねえ。)

9.
ダイアモンドヘッドの西海岸は、絶え間なく打ち付ける波によってその曲線美を描き出され、地球上で最も美しい景観の一つである。ワイキキとホノルルはハワイのあふれんばかりの大自然にピッタリと収まっている。

(曲線美(曲線によって構成された美。)自体は悪いアイデアじゃないんだけど、それだと何か曲線美そのものがこの文章の主人公になってしまうような気がします。「あふれんばかりの大自然に~収まる」というのもちょっと違和感があります。)

10.
絶え間なく波が打ち寄せ、ダイアモンドヘッドの西に広がる柔らかい線を描く海岸は、地球上で有数の素晴らしい景色を見せてくれる。ワイキキとホノルルは、この青々としたハワイの緑地に抱かれるように位置している。

(柔らかい線はいいと思いますが「柔らかな」にするともっといいかな。緑地はちょっと素っ気ない感じ。工夫は分かるんだけど、海岸と緑地の関係が良く分からないかな。)

11.
絶え間ない波のうねりに打たれ続けるダイヤモンド・ヘッドの西へと広がるしなやかな弧を描く海岸線。それはこの世でもっとも心を揺さぶる絶景の一つである、生き生きとした緑の木々に溶け込むワイキキとホノルルを見せてくれる。

(弧を描くというと、出入りがある感じはあまりしないんですね。「打たれ続ける」なんか殴られているみたいに見える「うち寄せる」とか。「絶景」はいいですね。「生き生き」だったら鮮やかなとかの方がいいかなあ。)

12.
世界でもっとも目を奪われる景観の一つはここ、ひっきりなしに波が襲うダイアモンドヘッドの西に広がる曲がりくねった海岸線。 - そして、そこにはワイキキとホノルルがハワイの豊かな緑に抱きかかえられている。

(「ここ」と「そこ」がどうも気になります。もっと簡潔にできるんじゃないかなあ。あと「波が襲う」というと何かやっぱり荒涼とした印象を受けちゃうんですよ。「絶え間なく波が洗う」とか。)

13.
絶え間なく波に洗われたために曲がりくねったダイヤモンドヘッド西の海岸線は、地球上でもっとも心躍る景色の一つである。ワイキキやホノルルは豊かなハワイの緑に恵まれているのだ。

(「波に洗われたので曲がりくねった」とまでは書いてないと思うよ。あと一行目と二行目の間の流れが今ひとつ良く分からないよねえ。それから緑の方が主人公になっちゃっていますね。)

14.
悠久の波に洗われてダイヤモンド・ヘッドの西側でうねる海岸線は、この地球上でもっとも美しい情景のひとつとなっています。そこは、まばゆいばかりのハワイの緑に抱かれたワイキキ、そしてホノルル。

(ああ、これもいい感じ。ただ「そこは」だとちょっと素っ気ない。「そこには~の姿が」とかにした方がよかったんじゃないかな。)

15.
太平洋の波が、絶え間なく、次から次へと打ち寄せ、ダイヤモンド・ヘッドの西に広がる曲がりくねった海岸線は、地球上もっとも圧巻される絶景の一つである。ワイキキやホノルルには、ハワイ独特の生い茂る樹木が所々に点在している。

(「打ち寄せ」がどこにつながっているのかが今ひとつ不明確ですね。「圧巻される」とは言わないです。「圧倒」かな。ワイキキやホノルルと木々の関係が逆になっちゃってますね。)

16.
絶え間なく打ち寄せる波、くねくねとした海岸線、ダイアモンドヘッドの山頂から西を眺めれば、地球上で最も美しい景色のひとつを見渡すがことができる。ワイキキもホノルルも、ハワイならではの緑があふれる街である。

(いや、さすがに山頂に登ってはいけません(^-^; 上ってからワイキキの方を見ると、西の海岸全部は見えなくなります。見えるのはマジック・アイランドまでかなあ。イメージとしては、緑をバックにホテル群が見えるんだよん。)

17.
ハワイの大自然豊かなダイヤモンドヘッドのそばに横たわるホノルル市ワイキキ。しなやかに曲がりくねったダイヤモンドヘッド西海岸線は、絶え間なく打ち寄せる波が創りあげた世界で最も美しい景色のひとつ。

(ええと、話が全然変わっちゃってます。ダイヤモンド・ヘッドは確かに自然は豊かも知れないけど。「横たわる」っていうのもなんかちょっと。「広がる」とかかな。最も美しい景色はワイキキの方なんだよう。(たぶん海岸線の美しさなら三陸海岸が勝利すると思います。松島も可。)

18.
寄せては返す波に打たれて、ダイヤモンドヘッドの西側を走るしなやかな海岸線。世界屈指の心躍る風景が、そこにはあります。ハワイのみずみずしい青葉に包まれながらくつろげる空間–ワイキキ、ホノルル

(「寄せては返す」はなかなかいいですね。でも海岸線はしなやかじゃないよう。あと、くつろいではいないから。この辺のやり過ぎとそうでないところの線引きがすごく難しいんだけどねえ。)

19.
絶え間なく打ち付ける大洋の波。生い茂るハワイの緑に抱かれるワイキキとホノルル。ダイアモンドヘッド西側ののびやかな海岸線は地球上でどこよりも胸躍らせる風景を見せる。

(ああ、これはいいなあ。「生い茂る」は「瑞々しい」とかにするとなおいいかも。ただ海岸線がのびやかになっちゃったのが惜しい。)

20.
ダイヤモンドヘッドの西に位置し、波が延々と打ち寄せる湾曲した海岸線は、地球上で最も感動的な眺めの1つといえるだろう。ワイキキとホノルルは、豊かに茂ったハワイの草木に囲まれている。

(ああ、「感動的な眺め」はとてもいい感じです。「ワイキキとホノルルが」かな。訳としてもそつなくまとめた感じがあるんですが、「草木」がちょっと浮いているよねえ。「くさき」と読んでも「そうもく」と読んでもやっぱり流れ崩しているなあ。「緑」にしてくれていれば敢闘賞でした。)

21.
ひっきりなしに打ち寄せる波。エメラルドグリーンのグラデーション。ダイヤモンドヘッド西側の海岸線は地球上でもっとも美しい景色のひとつ。ワイキキとホノルルは瑞々しいハワイの自然にそっと囲まれています。

(うーん、さすがに「エメラルドグリーンのグラデーション」はやり過ぎ(^-^; 「そっと囲まれ」もちょびっとやり過ぎ。ないものはなるべく足さないという感じでよろしく。)

22.
1年中波に洗われて、美しい曲線を描くダイヤモンド・ヘッドの西に位置する海岸線は、地上で最もワクワクする景色の1つです;ハワイの豊かな緑に囲まれたワイキキ、ホノルル

(「美しい曲線を描く」はなかなかいいですね。ただ前半と後半のつながりが良く分からなくなっています。「海岸線に広がるのは」に直して、「;」の代わりに「それは」を入れると結構良くなると思いますよ。)

23.
たえず打ちよせる波に侵食され、曲がりくねったダイヤモンド・ヘッド以西の海岸線–この地球上でもっとも心躍る眺めのひとつだ。ワイキキとホノルルの町がハワイ特有の豊かな緑の中に見えていた。

(侵食は浸食と同じ意味ではあるんですが、ここでは浸食の方がいいでしょうね。「曲がりくねった」は、海岸線に直接つないだ方がよかったかな。全体に何かちょっと色気がない感じがします。淡々としすぎているみたいです。)

24.
磯波が絶え間なく打ち寄せる、ダイアモンド・ヘッド西の屈曲に富んだ海岸線には、ハワイの豊かな緑に抱かれた、世界の絶景ワイキキとホノルルがあります。

(訳文としては意味はそれなりに取れているんですが、「屈曲に富んだ」というとかなりうねうねした感じがします。実際は微妙かなあ。そつなくまとまってはいます。)

25.
絶え間なく波に打たれて形成された、入り組んだ海岸線を描くダイヤモンドヘッドの西側は、この惑星の最高に刺激的な景色だ。ワイキキやホノルルは、そんなハワイらしい豊かな緑樹に囲まれている。

(「形成された」という風にすると、読者の意識が違うところに行っちゃうのよねえ。「入り組んだ~西側」は良く工夫されていますが、「そんな」が何を差しているのか良く分からないですね。)

26.
絶えず押し寄せる波、ダイヤモンドヘッド西の曲がりくねった海岸は地球上で最もワクワクする景色の一つです。そしてワイキキとホノルルは青々としたハワイの緑に囲まれています。

(「海岸は~景色の一つです」とすると海岸そのものがワクワクする景色に読めるんですね。「そして」を「そこには」に変えると良くなるかな。)

27.
絶えず波が打ち寄せる、ダイアモンドヘッド西部の入り組んだ海岸線は、地球上最もすばらしい眺めが見られる場所の一つだ。ホノルルのワイキキビーチは周囲の緑あふれるハワイの自然にとけこんでいる。

(「入り組んだ」までは行かないんですよね。そのへんは写真を見てもうちょっと言葉を選べば良かったと思います。で、ワイキキ+ホノルルなんですね。ワイキキビーチというのは、ワイキキというエリアのまた限られた海岸を指しているので、この訳文だと搾りすぎになってしまうのです。あとやっぱり緑が背景、ワイキキ+ハワイが主人公という風に訳せればよかったかな。)

28.
繰り返し波に洗われ、曲がりくねったダイアモンドヘッドの西の海岸線は、世界の絶景のひとつ。ワイキキとホノルルは、ハワイの豊かな緑に囲まれている。

(海岸線が主人公になってしまっています。あと、緑に囲まれているのも意味的には「従」なんですよねえ。たとえば「西の海岸には、世界の絶景の一つがあります」みたいな感じかなあ。)

29.
絶え間なく波にあらわれ、しなやかな曲線を描く海岸線がダイヤモンド・ヘッドの西へ延びている。地球上でも指折りの絶景だ。その先には、ワイキキとホノルルが、ハワイの豊かな緑に抱かれている。

(これも悪くないんですが、なんで「絶景だ」と断定しちゃうのかなあ。たとえば「それは~の絶景。」と体言止めにするとか。「~だ」というのはとても言葉として強いんですね。だから読んでいる方にも強く伝わるので注意が必要。)

30.
大海原から波が打ち寄せる悠久の営み。ダイヤモンドヘッドの西に折れながら伸びる海岸線を臨む眺めは、この星でもいちばんの心躍る景色だ。ワイキキそしてホノルルは緑したたるハワイの自然に抱かれている。

(うーん、工夫は分かります。よく考えているし。でもねえ、たとえば「西に折れながら伸びる」というと海岸線に出入りがあるという印象は受けないんですね。気持ちはすごく分かるんだけど。少し饒舌に過ぎるのかな。)

31.
たえまなく波が打ち寄せ、曲線を描くように海岸線がはしるダイアモンド・ヘッドの西側では、地上の絶景のひとつを目にすることができる。ワイキキとホノルルという、ハワイの豊かな緑にかこまれたやすらぎの地を。

(これももう少しシンプルにやれば敢闘賞かな。たとえば「曲線を描くように海岸線がはしる」だったら英語はcurvingとかになるでしょう。ここはsinuousだからもう一工夫必要。ただ流れ自体はいいんで、もうちょっとがんばって。)

32.
太平洋から絶えまなく打ち寄せる波は、ダイヤモンドヘッドの西側に美しい波状の海岸線を描き、この星を代表する絶景を造り出している。-ハワイの青々とした自然に抱かれる地、ワイキキ、ホノルル

(これも波が主人公になってしまっている気がします。ワイキキは波が創り出したものじゃないんですね。あそこ人口の造成地なんで(^-^; といって波のおかげで絶景になっているわけでもない。このあたりが微妙なんですが。あとダッシュを使うなら、「いる」のあとの句点はなしにしないと。)

33.
太平洋からの波が絶えず打ちつける、ダイアモンド・ヘッドの西側にゆるやかに伸びた海岸線は、ワイキキやホノルルが青々と茂ったハワイアングリーンに包まれ、この地球上で最も魅力的な景観の一つを見せてくれます。

(これも工夫はわかるんだけど、何かワイキキやホノルルが繁っているみたいで怖い(^-^; 係り受けにもう少し注意をしないと文章自体がちょっとよれて見えます。)

34.
ダイヤモンド・ヘッド西方では、絶え間なく打ちつける波のせいで海岸線が曲がりくねり、地球上で最も素晴らしい景色の一つを楽しむことができます。ワイキキやホノルルは、ハワイの豊かな緑に包まれています。

(これも「波のせいで」と波が主人公になっています。ワイキキとかホノルルっていうのは都市なんですね。白砂青松(ここでは使えないですが)の向こうに色鮮やかなビル、その向こうには緑萌える山々みたいな風景が素晴らしいのよん、という感じで。)

35.
絶え間なく波が打ちつける、ダイヤモンドヘッド西側の入り組んだ海岸線。地球上で最も心躍る眺望の一つ。豊かなハワイの緑樹に包まれたワイキキとホノルルの街並み。

(これは体言止めを続けすぎてしまって、各文の間の関係が不明確になってしまっています。「入り組んだ」までは行かないんですが。たとえば「そこには、豊かな~町並みがある」という風に二文目と三文目をつないでみるとか。)

36.
ダイアモンドヘッドの西側に位置する曲がりくねった海岸線、そこに絶え間なく打ち寄せる波。ハワイの豊かな緑に囲まれたホノルルのワイキキには、この地球で最も胸躍る風景の1つが広がっている。

(うーん、ホノルルのワイキキがこの世で一番胸躍る風景なんですよう。これだったら「そこには絶え間なく波が打ち寄せ、この地球で最も~広がっている。それは~」みたいに処理すると良かったかな。もうちょっとがんばろうね。)

37.
海辺に絶え間なく打ち寄せる波–ダイヤモンドヘッドの西に広がる曲がりくねった海岸は、この星でもっとも心ときめく風景のひとつ。ワイキキとホノルルはみずみずしいハワイの緑にすっぽり包まれている。

(ああ、これも惜しい。「ワイキキとホノルルが」ですね。)

38.
海から絶え間なく押し寄せる波で浸食された、ダイヤモンド・ヘッドの入り組んだ海岸線は、地球で最も美しい景色の一つとして、私たちの前に姿を現します。ワイキキとホノルルは、ハワイの青々とした木々の中に位置しています。

(浸食というとちょっと違うのよねえ。「入り組んだ」も最初は考えたんですよ、ワタクシも。でも実際に写真を見るとそこまで入り組んでいないんだよねえ(^-^;)

39.
ダイアモンド・ヘッドの西側の湾曲した海岸線は、絶えず激しく波が打ち寄せることで、最も刺激的な景観を呈する場所の一つとなっている。眩いばかりのハワイの緑の中に見えているのが、ワイキキとホノルルである。

(波が打ち寄せることは大きな理由ではないんだよねえ。これイメージ的には色鮮やかという感じなんだと思います。海の青、波の白、木々の緑、そしてビルの白とかピンクとか。それを写真が示しているので。)

<全体講評>
今回のは出題した時には簡単すぎるかなと思ったんですが、よく考えると意外に難しかったですね。sinuousも最初は「入り組んだ」とか「複雑な」というのもありかなと思っちゃったけど、良く考えると、写真みてもそこまで入り組んでないんだよねえ(^-^; あと今回おっかないなあと思ったのは、最初、西の海岸とワイキキを切り離して考えてたんですよ。でもよく考えると、ダイヤモンド・ヘッドの西ってそのままワイキキ(正確にはカピオラニ公園があって、その向こうにワイキキのホテル街やビーチ)となるので、切り離すとおかしいことに気付いたりして。ニッセル先生から怒られるところだった(^-^; 自分で何でそういう印象持ったのかと考えると、写真の向きなんですね。実際の写真集の写真はダイヤモンド・ヘッドが下にあって、その向こうにワイキキが見えているというやつで、無意識にそっちが北のように感じていたみたいなんです。いやー、やっぱりきちんと地図をチェックして良かった、良かった。思い込みは怖いなあと改めて思ったのでした。ハワイには今度行くと12回目になるワタクシ(しかもトータルの滞在日数は既に3カ月越え)でこれなんだから、文章だけ読んで訳している皆さんが間違うのも仕方ないところだよねえ。(でもなるべく調べてね。)

第20回ウルトラショート翻訳課題 MVP

ということで、敢闘賞は14さんと37さん。MVPは独断と偏見で前田正子さんにしました。精進してね。

お知らせが一つ。うちのムスメさんたち(お弟子さんたちです)がお手伝いし、おともだちの飯泉恵美子先生が訳した本が出ました。早川書房、「ミケランジェロの暗号」です。内容もとても深いですし、さらに装丁もとても凝っているので、ぜひお手にとってごらんください。

<講師訳例>

ダイヤモンドヘッドの西には、変わることなく外海の波が打ち寄せる、出入りのある海岸線が広がり、そこにはこの世で一番美しい風景、ハワイの鮮やかな緑に包まれたワイキキ、そしてホノルルが姿を見せる。

とか

永久の波が打ち寄せる、ダイヤモンドヘッドの西に出入りする海岸線。そこにはこの世の絶景の一つが広がる。それはハワイの瑞々しい緑を背にしたワイキキ、そしてホノルル。

<次回の課題文>

今回のネタは、上で取り上げた本とはまったく関係のない、でもワタクシの大好きなスティーヴン・キングの中編小説、「Crouch End」の冒頭です。

By the time the woman had finally gone, it was nearly two-thirty in the morning.Outside the Crouch End police station, Tottenham Lane was a small dead river. London was asleep… but London never sleeps deeply, and its dreams are uneasy.

PC Vetter closed his notebook, which he’d almost filled as the American woman’s strange, frenzied story poured out. He looked at the typewriter and the stack of blank forms on the shelf beside it. “This one’ll look odd come morning light,” he said.

PC Farnham was drinking a Coke. He didn’t speak for a long time. “She was American, wasn’t she?” he said finally, as if that might explain most or all of the story she had told.

常体(だである調)で。訳の範囲はOutsideからuneasy.まで(下線部太文字)です。ステキな訳文をたくさんお待ちしてます。コメントには時間かかるけど待っててねえ。来月もメッセージたくさんお待ちしてます。それではまたねえ。

★★訳文の応募は締め切りました★★