第39回 翻訳者的生活とは?

一行翻訳コンテスト2010.09.16

■オススメの一冊
はじめてさんにおすすめ!
経済入門書
『The Armchair Economist』
(Steven E. Landsburg著、Pocket Books刊)

The Armchair Economist

では今月の1冊目。Steven E. Landsburgの「The Armchair Economist」。経済の本ですが、それほど硬い内容ではありません。ユーモラスな文章を読みながら、経済について理解することができる本。副題は、「Economics and Everyday Life」で、著者は、Slate、Forbes、Wall Street Journalに寄稿している人です。これまでに5カ国語に翻訳されているそうですが、日本語はまだのようです。ここ一ヶ月半ほど、金融関係の仕事(トータル666枚。ちょっとやでしょ? きつかったー)をやっていたのですが、改めてこの分野の知識と表現が不足しているなあと思いました。本当に年齢を重ねるほどに自分の無知・不勉強が嫌になるばかりです。特に銀行や証券といった分野の語彙が乏しい。ただいきなり「Options, Futures…」みたいな本を買ってきたって分からないですよね。とりあえず経済についての軽めのエッセイを読んでみようかな、と思うなら、とても入りやすい本です。こんな感じ。

Most of economics can be summarized in four words: “People respond to incentives.” The rest is commentary.

“People respond to incentives” sounds innocuous enough, and almost everyone will admit its validity as a general principle. What distinguishes the economist is his insistence on taking the principle seriously at all times.

こんな感じ。ちょっと楽しそうでしょ。上の方の政治の話にもちょっとだけ関係してくるんですが、経済についての理解は本当はとても大切なことです。ただ、どうしても需要曲線とか限界効用逓減の法則とか果てしなく難しそうな言葉で引いちゃうのは分かります。ちなみに英語ではそれぞれがdemand curveとlaw of diminishing marginal utility。日本語と英語の違いは、法律文章などでも、基本的に日常語(もしくはそれに近い言葉)で書かれているということです。以前にも何度となく書いていますが、たとえばinstallationだったら、インストール、据付からインスタレーションまで、日本語になると、たちまち専門分野ごとに訳語が分かれ、さらに専門的になるほど難解にしたがる傾向があります。英語で読むと「求められている度合の曲線」、「どんどん増えるとだんだんうれしくなくなるの法則」くらいの意味(ホントはもう少し硬いけど)なんですね。ですから覚えやすいし、ある程度、字面で意味が分かる。もちろん日本語で専門用語を覚えることも大切だとは思いますが、まず考え方とかものの見方を身につけてからでないと、結局宝の持ち腐れになるだけです。たまにこういう本も紹介していきますので、どうぞぱらぱらとめくってみてください。

■今月のペーパーバック
猛暑にぴったり!  涼しくなる一冊
『Creepers』
(David Morrell著、Brilliance Corp刊)

Creepers

次は2冊目。David Morrellの「Creepers」をご紹介します。David Morrellといってもあまりご記憶にないかも知れませんが、「ランボー」の原作者といったら、ああ、と思われるのではないでしょうか。というと、冒険小説やアクションものの作家という印象を受けるかも知れませんし、たしかにそういう側面も強いのですが、スリラー作家でもあるということが見落とされがち。creepersというのは、たとえば解体が決まっている建物に侵入(不法です)して、写真を撮ってこようという、まあ一種の都会の探検隊みたいな人たちのことなのですが、取材に来たレポーターの視点から書かれるこの小説では、パラゴン・ホテルというかつては瀟洒なホテルだったものの、今は取り壊しを待っている建築物に侵入するさまが描かれます。(まあこの時点である程度先は読めますが。)ジャック・フィニィやリチャード・マシスンに捧ぐとされており、また本人が文学博士でもあるため、文章も読ませます。こんな感じ。

No, keep control, Balenger warned himself. You’re letting this damned place get to you. Stay focused. You’ve been through worse than this. He had a sudden sweat-producing memory of a foul-smelling sack tied around his head. No! Don’t think about that! Suppose one of the others sees you holding the gun. If they learn you’re armed, they’ll surely wonder what else they don’t know about you.

He waited, studying the shadows. Inhaling through his nose, exhaling through his mouth, holding each breath for three counts, he calmed himself. The sound at the end of the hall was not repeated.

ちょうど暑い季節。涼しくなるにはなかなかおすすめですよ。

<ハワイ情報>
* ワイキキ、クヒオ通り沿いにあったバイキング形式(buffetといいます)レストラン、ペリーズ・スモーギーが突然閉店。僕は一度しか行ったことがありませんが、新婚旅行の頃からあった店がまた一つなくなるのは寂しい限り。
* ちょっと前ですが、The Busがまた値上げで2.5ドルに。日本のバスより高くなっちゃった。
* ラハイナの裏通りにOld Lahaina Book Emporium(http://oldlahainabookemporium.com/)というとても渋い古書店(多少新刊も)があります。昔懐かしい古本屋さんなので、ラハイナに行くことがあったらぜひ一度足を運んでください。
* ハワイ大学マノア校に天皇陛下が寄贈された日本庭園があり、誰でも見学することができます。
* マッカリー・ショッピングセンターにあ・うんというとてもおいしい和食店があります。めったに旅行誌には乗りませんが、要チェック。

では今月の課題文です。

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