第35回 国際空港のお膝元、成田をガイディング

通訳ガイド行脚2010.05.16

観光スポットの主役は成田山新勝寺
年数、建物の大きさなど細かい数字よりストーリー重視で

飛行機の離発着時間の関係で、外国のお客さまをお連れして千葉県成田の国際空港周辺でちょっと時間をつぶすことがあります。2~3時間あれば成田市の成田山新勝寺への参詣がまず思い浮かびます。

新勝寺というのは、朱雀天皇より平将門の乱平定の密勅を受けた寛朝大僧正による940年の開山ですが、彼は弘法大師が敬刻開眼した不動明王を奉持し、大阪は難波から海路を経由して成田の地に至り、乱平定の平和祈願の護摩を奉修したそうです。大任を果たして再びその不動明王像と共に都に戻ろうとしたのですが、不思議にもご尊像は磐石のように微動だにせず、「我が願いは尽くる事なし、永くこの地に留まりて無辺の衆生を利益せん」との霊告が響きました。これに感動した天皇が国司に命じてお堂を建立し、東国鎮護の霊場として「成田山」が開山に至りました。寺のこの由来から、平将門を支持する参拝客は入場を断られることもあると聞きました。

ところで、2010年7月29日は、歌舞伎の名門市川宗家の十一代目市川海老蔵丈さんとフリーアナウンサー小林麻央さんとの結婚式が行われるということで、巷では話題になっています。お二人が家内安全を祈願して新勝寺で特別大護摩供を修行し、開運招福絵馬を奉納した7月9日には、大本堂前に各町内の山車、屋台が勢揃いの賑わい。「成田屋」という市川宗家の屋号の由来となった初代市川團十郎に想いを馳せての壮大な元禄絵巻の再現となるようです。

こんな昔話や現代のエピソードは外国人にとってはとても新鮮で興味深く響くようですよ。細かい年数や建物の大きさなど数字に関しては、案外、無頓着なケースも多いので、ここは心に訴えるストーリーをご紹介したいものですね。

新勝寺の参拝は
総門 → 堂庭御護摩受付所 → 仁王門 → 大本堂 → 釈迦堂 → 額堂・光明堂 → 平和大塔 →  聖徳太子堂(仏教図書館) → 三重塔 → 大師堂 → 弁財天堂 → 総門 
というルートが一般的ですが、平和大塔まで行くと結構時間がかかるので、大本堂、三重塔、釈迦堂など主な建物を示して概要説明をしておき、あとは自由拝観にするのも気がきいています。

お正月には大勢の参拝者で賑わう全国的に有名な寺、車両のフロントガラスに「交通安全」のお守りとして成田山のお守りがぶら下がっているのもよく見かける風景です。座禅体験、写経などもできる各種機能フル装備(?)の密教寺で、もちろん御護摩祈祷 加持祈祷なども有名ですから護摩祈祷の時間に合わせて参拝できるとさらに興味深いでしょう。

護摩祈祷については、人々がご利益を期待してバッグなどを護摩焚きで清めてもらおうとする姿が見受けられますが、本来の意味は護摩の火(不動明王の智慧)によって薪(煩悩、欲、執着)を焼き尽くすもの。期待通りの効果があるのか疑問で、むしろそれは逆効果なのではないでしょうかね?というガイド仲間の意見がありましたが、私もそれに賛成したいです。こんなお話も加えるのが、現実感が出て面白がっていただける秘訣なのですね。

「土用の丑の日の鰻」に秘められた
したたかな江戸時代のマーケティング戦略

さてさて、新勝寺の近辺にはさすが千葉県の名産物である落花生のお土産や漬物に加え、鰻屋さんがたくさん目につきます。江戸時代に家康が開拓事業を始めてから増えた泥沼に鰻が生息しはじめて労働者の食糧となったそうですが、鰻はビタミンAやEで栄養満点。でも実は夏の鰻は秋冬の鰻に比べて味が落ちるのです。鰻の旬は冬眠に備えて養分を蓄えた晩秋から初冬。そこで夏でも鰻が売れるようにするためには?「土用の丑の日に鰻を食べて夏バテを防ぎましょう」という習慣を提唱したのが平賀源内というのは有名な話。現代のマーケティングに通じる知恵は鰻の昔から。チョコレートでも何でも、宣伝の方法ひとつですね。・・・こうして観光のガイディングは日本の文化に及び、さらに興味深くなっていきます。

鰻をJapanese eelと言ってしまうと「蛇のようで気持ち悪いイメージ」が先行し、美味しいものも食べず嫌いになってしまうかもしれません。Woo Na Gheeなどと日本語の読み方そのままで覚えて帰ってもらうのも一案だと思います。