第89回 ユニークな仕事現場・あれこれ

通訳ガイド行脚2015.04.14

桜の花が舞い散るように、春はさまざまなツアーの繁忙期。
昨年にも増して外国人の訪日ラッシュが続きます。

多様化しているさまざまなツアーの中でも、
「これはほんとに通訳ガイドの業務依頼なんだろうか?」
と首をかしげつつ、興味深くて、
「こんなお仕事もあるのだ!」
と、ガイドさん達が楽しみながら現場に臨んだ業務をご紹介したいと思います。

ひとつは世界的に有名な某高級アパレルメーカーのショールーム・イベント関連でのお仕事でした。“通訳ガイドの顔写真を見せて下さい”というのはよくあるので、私の派遣会社でも用意がしてあります。けれども今回は“英文の履歴書を見せて下さい”というリクエストに加えて、“制服を着ることになるので服と靴のサイズを教えて下さい。”
…なんだかモデルさんみたいでおもしろ~い!
「あのXXXX社の制服が着られるなんて!ステキ!」
キャッと嬉しがった女性ガイドさんもいました。
すると次に“制服が似合っているかどうか確かめるために、制服を着用した全身写真を送って欲しい”
…その頃になるとガイドさん達も別の仕事で忙しくなり、時間がとりづらくなってきていましたが、「モデルエージェンシーじゃないのにねえ」とブツブツ言いながらも楽しそう。前と後ろのサンプル顔写真つきでヘアメークの指定が届きました。
「控え目なメークながらも明るめの色のファンデーション、目はブラウンのグラデーションのアイシャドウ、口紅は赤。ヘアーは短い場合はきっちり整え、長い場合には後ろの下の方でシニオンにまとめること。」
仕事中はその企業の一員としての言動が期待されることは心得ていますが、ここまで細かい指定を受けるのはあまりないことでした。さすがファッションの会社だ!と変に感心しつつ、現場に向かったのです。

世界からのセレブ顧客を歓待するお役目は、アジア地区をまとめる香港の会社のマネージャー。彼女の指揮の下で制服を着た通訳ガイドが仰せつかったのは、お客様が滞在される豪華ホテルに作られたホスピタリティ・デスクでの配車業務でした。VIP客の為には24時間自由に使えるハイヤーが準備されており、その使用時間の管理とドライバーとの連絡が主な作業でした。

24時間とは言ってもドライバーも休憩は必要だし、スタンバイする場所の問題もあるので「次は何時から何時まで、行先は○○です」とドライバーにお伝えしたいのですが、なかなかその答えがお客様からもらえません。気の向くままに何でも思い通りになって当然という感覚のお客様には、日本の諸事情をお話しても理解していただきにくいのです。

VIPのお仕事は
より大変になる!?

一方で、ある国際会議に参加された某国のロイヤルファミリーの場合も、車輛の扱いについては同様なことがありました。SP用の車輛を含めて数台のハイヤーが、予定時間を越しても現れない客を延々と待っていましたが、とうとうホテルのベルマンから、他のお客様への迷惑になるからと玄関前を離れるように指示されてしまいました。やむなく移動して地下の駐車場を旋回中の隙に、突然お客様が現れました。
「車がないじゃないか!」
怒って叫びまくるSP。そんな中で通訳ガイドはお客様とドライバーさんと、ホテルとの中にはいって右往左往の冷汗です。

VIPのお仕事と聞くと、さぞ豪華で華やかだろうと想像されるかもしれませんが、通訳ガイドは外国語を使用した裏方の仕事に携わる事も多いのです。ラッキーな場合は、セレブのお買いものに同行という事もありますが。

でも、そんな作業を通じて通訳ガイド達はさらに業界の幅広い知識と人脈を広げて一歩ずつ成長してゆくのです。自分磨きを心がけねばと実感する瞬間ですが、どんな時にも忍耐力と笑顔!この二つが欠かせない一番大きな武器となりますね。