1966年の創立以来、50年以上にわたって国際舞台で活躍する優秀な通訳者・翻訳者を数多く輩出してきた名門校。同校の母体である㈱インターグループは、通訳・翻訳請負だけでなく、国際会議の企画・運営、語学スペシャリストの派遣・紹介、企業や官公庁の語学研修など、さまざまな語学サービスを提供し、あらゆる面から人々のコミュニケーションをサポートしている。各部門との連携により、「スクールで学び、現場で生かす」育成システムが確立しており、インタースクール受講生に活躍の機会が提供されることも大きな特徴だ。
 インタースクールで開講している産業翻訳コースは、原文解釈力とリサーチ力を高める「基礎科」、人に伝えるための表現力を鍛える「本科」、柔軟な対応力を磨き、高品質の翻訳を極める「プロ実践科」の3レベルに分かれており、翻訳者に求められるスキルを段階的に身につけていくことができる。業界の第一線で活躍するプロ翻訳者が講師として指導にあたり、広報・IR・経営・技術・法務関連文書など、実践的で幅広い分野の教材を扱いながら、プロとしての作法も養う。
 特別ワークショップや通信講座では、時代の変化や市場のニーズに即した講座も展開。機械翻訳の進化によって需要が高まる「ポストエディット」や、「技術翻訳」・「金融・IR翻訳」など専門知識が必要とされる分野に特化した講座を通して、常に仕事に直結するスキルを習得できる。


講師インタビュー

kawaguchisensei

川口 仁先生
(かわぐち・ひとし)

翻訳会社で品質管理、翻訳事業責任者などを歴任したのち、翻訳事業者として独立。製品カタログや契約書、ニュースリリース、CSRレポートなどさまざまな分野の翻訳案件に携わる。インタースクール翻訳コースのチーフコーディネーターも務める。

機械翻訳とも共存できる翻訳スキルと、ビジネス感覚を兼ね備えた翻訳者を育成

Q カリキュラムの特色について教えてください。

 インタースクールの翻訳コースでは「実践的で、現代のニーズにあった」翻訳スキルを効率よく磨くことを目標に、次の3つに重点を置いたカリキュラムを実施しています。
 第1に、基礎科・本科・プロ実践科を通じ、実際の仕事に必要な語彙や表現、知識、翻訳スキルを指導していきますが、分野は「経営」「広報・マーケティング」「IR」「法務」など、特に翻訳需要の高いものにフォーカス。機械翻訳の進歩が目覚ましい現状をにらみ、各分野とも、機械翻訳が苦手とする内容を課題に選んでいます。複雑な文を丁寧に紐解きながら、わかりやすい翻訳に仕上げる技法の習得をめざします。
 第2に、現在の翻訳者にとって必須スキルである翻訳支援ソフト(CATツール)の使い方についても併せてレクチャーします。
 第3に、当校は、インターグループの翻訳部門と直結している点がとにかく魅力。業界の動向や需要の傾向、求められる人材などがリアルタイムで把握できるため、それらをカリキュラムや教材にも反映させて、授業の中でも受講生と最新情報を共有するようにしています。

Q 機械翻訳と共存するために今後翻訳者に求められるスキルは?

 機械翻訳はスピーディで効率的ですが、分野や内容によって精度に問題があります。このため、機械翻訳後の修正・編集を行う「ポストエディット」といった新たな仕事の需要も高まっています。翻訳者にとって今後の課題とすべきなのは、「従来どおりの翻訳(人手翻訳)でいかに生き残るか」ではなく、「機械翻訳をいかに活用するか」です。当校では、「人手翻訳」「人手翻訳+機械翻訳」「ポストエディット」のどの仕事にも広く対応できる翻訳者、“スマートトランスレーター”になるためのスキルアップの場を提供していきます。

Q プロ育成のために指導上特に心がけていることは何ですか?

 「翻訳力」「CATツール」などのスキルに加え、プロにはビジネスパーソンとしての心構えが求められます。中でも特に重要なのは「クオリティへのこだわり」「スピード」「柔軟性」です。毎回の課題提出についても、訳抜け・スペルミスなどがないよう注意を払い、期日内にクオリティの高い翻訳を仕上げること、すなわち「お客様に納める商品である」という緊張感をもって取り組むよう指導しています。
 スキルと心構え、その両面を徹底して磨き上げ、ビジネスマインドを備えたプロとして自立していただきたいですね。


修了生インタビュー

nagaisan

産業翻訳コース[日英]修了生
長井正紀さん
(ながい・まさのり)

自動車部品メーカーなどで翻訳業務に従事する傍ら、2015年10月よりインタースクールで翻訳を学び始める。「産業翻訳コース[日英]」修了後の2020年、㈱インターグループのトライアルに合格。現在は、技術や観光を中心に多分野の翻訳案件を手がけている。

多種多様の文書を適切にわかりやすく訳す「商品」としての翻訳スキルが身につきました

Q 産業翻訳コースで学んだことについてお聞かせください。

 コース全体を通じて、一般的な新聞記事から法務関連といった専門性の高い文書まで、幅広いジャンルの課題に取り組みます。期日までに提出した翻訳課題には毎回ぎっしりと添削の赤字が入ります。正直毎回かなり落ち込みましたが、この添削と授業での解説から、「商品」として通用する翻訳に必要な3つのスキルを磨くことができました。
 1つめは翻訳に必要な英語力です。私自身、1年ほど留学を経験して英語ができる気になっていた時期もありますが、課題を通して冠詞の有無や単語の並びが違うだけで文章の意味が変わってしまう怖さを痛感しました。「何となく分かった」で終わらせず、細部まで注意を払う姿勢が身につきました。
 2つめはリサーチ力です。課題の内容を深く理解して最適な訳を仕上げるため、寝る間も惜しんでインターネット検索を繰り返し、時には図書館で調べたり、関連書籍を購入したりもしました。先生の「提出する直前までとことん粘りなさい」という言葉を、今も肝に銘じています。
 3つめは表現力。文法的に問題がないというレベルにとどまらず、正確で読み手が理解しやすく、自然な文章で表現できてこそ「商品」だと教わりました。また、自分の訳し方の癖で、同じような箇所でミスを繰り返してしまう傾向があったのですが、先生からのご指摘で復習を重ねる学習法へ変えたことで、ミスを大幅に減らすことができました。

Q 現在の翻訳の仕事に、講座の学びがどう生かされていますか?

 今まで取り組んできた課題の内容は、実践的なものばかりです。現在依頼をいただいている翻訳の内容と変わりません。在学中は、なぜこれほどいろいろな文書を訳すのかと感じたこともありましたが、今の仕事も、観光情報や大学の資料、お寺の案内板など、さまざま。インタースクールであらゆるスタイルの課題を経験したおかげで、余裕を持って仕事に臨むことができています。

Q インタースクールのよさはどんなところでしょうか?

 先生方は長きにわたり第一線でプロとして活躍されている方ばかり。指導も的確で、添削していただいた課題はすべて宝物です。また、翻訳者になることを一度諦めかけたこともありましたが、キャリアサポートの体制が充実しており、在学中から仕事の紹介もしていただけましたので、モチベーションも上がりました。
 今はまだ駆け出しですが、異なる文化間の橋渡し役としてのおもしろさ、難しさを実感しながら翻訳の仕事を楽しんでいます。継続的にスキルアップをはかり、時代の流れやニーズにも対応しながら、人の役に立ち、長く必要とされる産業翻訳者をめざしていきたいです。