現役翻訳者による実践的な指導と手厚いキャリアサポート体制で
多様なニーズに対応できるプロフェッショナルを育成

語学のプロフェッショナル養成機関としての豊富なノウハウと、現役翻訳者の講師陣による授業で、将来を見据えた高いスキルを身につけられる。通訳・翻訳業界のリーディングカンパニー、㈱インターグループを母体に持ち、優秀な受講生には在学中から活躍の場が与えられる仕組みもプロをめざす人には高いアドバンテージとなっている。

訪問クラス 産業翻訳コース基礎Ⅱ

グラマーエクササイズで英語基礎力の肉付け

「産業翻訳コース」は、基礎Ⅰ、Ⅱ、本科、プロ実践科に分かれ、翻訳の精度を段階的に引き上げながらプロの翻訳者としてのスキルを磨くコースだ。取材したのは淺野みつ子先生の基礎Ⅱのクラス。新型コロナウイルス感染症防止の観点から、授業はオンラインで実施されている。

はじめに、課題のグラマーエクササイズから。6問ある文章の空欄に当てはまる単語を選び、指名された受講生は解答を穴埋めした文章の音読と、口頭訳出をする。最初のテーマは「時制」。解答には時制の異なる4つの選択肢が並んでおり、淺野先生は答え合わせとともにそれぞれの時制の使い方について解説する。

「will have + 過去分詞は、ある時点までに終わっているだろう、というニュアンスで、will be ~ing形は、どんどん展開しているイメージ。そして、過去進行形は、過去において動きが感じられるときに使われます」

時制など、文法書をどれだけ読み込んでもなかなか理解しにくい文法は、最低限のルールを覚えつつ大量の英文に触れることで、細やかなニュアンスをつかむことが大切なのだそうだ。

次の「分詞・分詞構文」も問題形式は同じだが、こちらは初見で辞書を使わず10分間で訳出準備を行う。このとき、わからない単語はそのままカタカナ置きでOKだが品詞を意識して、と淺野先生。

受講生による訳出が終わると、「では、今度はこれを分詞構文にしてください」と、画面上に複数の例文を提示する。受講生が解答の発表を終えると、淺野先生は画面上で英文を入力しながら、文章の事実関係や内容を整理できるように分詞構文のルールと注意点について説明を加えていく。また、「文法書では触れていないことが多いですが、ネイティブの文章では『,which(=and it)』のイメージでよく使われています」など、淺野先生の翻訳経験で培われた点も共有する。

英語の理解力を養うとともに
対クライアントを意識した翻訳者の心構えも指南

次は、初見リーディングにうつる。教材はJ.K.Rowling(『ハリー・ポッター』シリーズの著者)についての記事だ。

ここでもグラマーエクササイズ同様、口頭訳出の前に必ず音読。というのも、英語学習の最終目標である「ネイティブのように英文は英語のまま理解して読む」ために、音読することで英文を前から情報処理していくスキルを身につける必要がある。また、基礎科クラスの受講生が本科やプロ実践科クラスへ進学した際に、ネイティブ講師が担当する授業に参加することも見据え、「英語で発言することに慣れる」訓練でもあるという。

今回授業で取り上げられた記事の内容は、「(トランスジェンダーに対して差別的だと非難されていた)彼女の著書に出てくる犯人が『女装をした男性』だったことで騒ぎを大きくした」という内容だが、「すべての案件に対してワードチョイスは慎重であるべきですが、今回のような人権に関わる案件についてはクライアントの意識が特に高い場合が多いので、表現方法はシビアに確認・検討しましょう」と淺野先生。「“良い翻訳”に関してはさまざまな解釈がありますが、“クライアントが満足する翻訳”をめざす場合、翻訳者にはクライアントの意向を反映した上で訳出できるかどうかが問われます。そのためには、あらゆる点で“迷う習慣”をつける必要があります。例えば『障害者』を『障がい者』と表記するのか、『子供』は『子ども』と表記するのか。原文に忠実な訳にするのか、あるいは日本語としてわかりやすい意訳にするのか。各クライアントに関する情報収集と、その中からひとつずつ検討する姿勢が求められます」と説いていた。

授業の最後は、事前課題となっていた別の米国政府に関する記事を音読して訳出。正しく訳出した受講生にも、「これを具体的に指しているフレーズは?」「この単語はどこを修飾している?」など、きちんと内容を理解した上で訳出できているかを細かく確認していた。

こうして2時間の授業はあっという間だったが、ここでは英語の理解力を養うのはもちろん、対クライアントを意識した「第一線で活躍する翻訳者の視点」が多分に反映されていた。そうした生きた情報共有こそが、プロの翻訳者をめざすコースの真骨頂だろう。

講師コメント

産業翻訳コース基礎Ⅱ
淺野みつ子先生

大学在学中は英文科を専攻。大手電機メーカーの役員秘書や人事本部勤務を経て、インタースクールで翻訳を学び始める。翻訳本科コース修了後の現在は、大学でも教鞭をとるかたわら、インターグループ翻訳者として翻訳室に勤務し、産業・ビジネス分野を中心にジャンルを問わず日々多くの案件を手掛けている。

試行錯誤しながら、人間にしかできない「ぐっとくる」翻訳をめざしましょう

「産業翻訳コース基礎Ⅱ」では、「自らの疑問点を明確にし、100%の確信は持てないにしても、その疑問点に対して自分で答えを用意すること」を目標に掲げています。この目標を日々意識することで、クライアントから「どうしてこの訳なのか?」と聞かれたときに、「持てる知識を総動員してきちんと答えられる姿勢」を身につけるためです。

そこで私は3つのステップを確認しながら授業を進めています。ステップ1は、動詞や名詞といった品詞を正確に捉えて文章の構造を把握しているか、もしくは把握しようと意識できているか。ステップ2は、andやbutといった接続詞を深掘りして文章の流れを把握しているか、もしくは把握しようと意識できているか。ステップ3は、ステップ1と2を踏まえて文章を真摯に読み込んだ上での疑問点を明らかにし、それに対して自分なりの答えを導き出せるかどうか。こうして段階を踏みながら翻訳者としてのスキル体得をめざしてもらいます。

今後、「文法ルールに基づいて英文を機械的に日本語に置き換え、“内容が把握できる”文章に整える」という仕事については、日々進化を遂げる機械翻訳を前に、人間による手翻訳の未来は厳しいかもしれません。ただ、クライアントからの「ぐっとくる翻訳をお願いします」という依頼に対して挑戦できることが手翻訳の強みであり、また、手翻訳が果たすべき役割ではないでしょうか。

翻訳者の大きな魅力は、この仕事をしなければ興味を持てなかったであろうさまざまな世界に触れることで、自分の世界もどんどん広がることです。翻訳の作業は迷いの連続ですが、悩みながら試行錯誤するという翻訳の醍醐味を感じていただきながら、人間にしかできない翻訳をめざしてほしいと思っています。