多彩な産業翻訳講座をラインアップ
創業45年の翻訳会社が運営する翻訳者養成スクール

サン・フレア アカデミーは、実務翻訳で45年以上の実績を誇る㈱サン・フレアが運営する翻訳学校。豊富な翻訳実務を通して培ったノウハウを教育に生かし、さまざまな分野別講座を開講している。翻訳実務検定「TQE」の実施により、同社の翻訳者として登録できる機会を提供するなど、キャリアサポートも充実している。

訪問クラス 「医学・薬学」上級

日英翻訳に取り組み医薬英語と英文法を確認

「医学・薬学」上級講座は、論文などの医学薬学関連文献を教材に、読解力と翻訳力をバランスよく養う講座。臨床系、免疫、医薬品、医療機器など幅広い分野を扱い、日英と英日、双方向の翻訳を学ぶ。医学・薬学の基礎的な知識を持った人を対象としており、医療や製薬関連の仕事に就いている人の受講も少なくない。

「前回のクラスで疑問として残った『補整』と『補正』について、リサーチした結果をご報告します」
講師の渡辺理恵子先生がそう切り出し、この日の授業が始まる。先生は参照したウェブサイトのコピーを配布し、「補整(graduation)」は「曲線あてはめ(カービングフィット)」のことを指し、統計学ではあまり使わないと指摘。一方の「補正(correction)」については、統計学の概念である「交絡因子」と「調整」の説明を加えながら、その意味を解説した。翻訳では調査が大事と言われるが、この調査報告はその実践。ベテラン翻訳者である先生がお手本を示した格好だ。

続いて、日英課題の検討に移る。学習テーマは医療機器で、課題文は試験報告書と試験手順書の2種類。訳文を吟味する際、渡辺先生は「『2群による(試験)』は(試験)with twogroupsとします」「『~に関するABCスコア』はscore for…です」などとポイントとなる表現を先に確認し、その上で受講生たちの訳文に対してコメントしていく。

「at…はその瞬間だけを指し、by…は『その期限までの間に』というニュアンス。よって『6カ月目の来院時までに』はby the 6-month visitとします」
「『データが記載された報告書』の『記載された』はdescribingもしくはcontaining。includingは抽象的なものを含む場合にしか使えません」

文法面からも指導していくが、単複の扱いや時制だけにとどまらない。「~を用いて」をusing…と訳した受講生に対し、「通常はwith を使います。with と同じような意味で使う懸垂分詞のusingは、文法的には誤りですが、便利なため頻用され、ネイティブの間でも使用の是非は意見が分かれます」と突っ込んだ解説をした。

そうした解説を、受講生たちはただ聞いているだけではない。疑問をぶつけたり、考えを述べたり、「~は使えますか」と質問したり。活発なやり取りが行われる中、授業は熱を帯びながら進んでいく。

医学薬学論文の英日翻訳を通して記述ルールと専門表現を学ぶ

授業の後半には、英日課題の検討が行われた。課題はある薬剤に関する臨床試験の論文。次回が最後の授業ということで、渡辺先生いわく「いろいろなテクニックが必要な、総復習するのにぴったりな課題」だという。

受講生たちが一様につまずいたのは、ある文章の主部であるonce-daily donepezil 23 mg, an acetylcholinesterase inhibitorという箇所。結論から言えば、「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルの23㎎1日1回投与」と訳すのが正しい。

「『アセチル~薬』と『ドネペジル』が同格だとわかるように訳さなければなりません。Aさんの『1日1回投与のドネペジルのアセチル~薬』は曖昧です。Bさんの『アセチル~薬であるドネペジル23㎎の1日1回投与』は『の』の位置がよくありません。『ドネペジル23㎎の』ではなく『ドネペジルの23㎎』としないと、『アセチル~薬』と『ドネペジル23㎎』が同格になってしまいます」

この箇所にはポイントがもう1つある。薬剤の投与量を記述する際、英語の語順にかかわらず、日本語では「薬剤名、用量、頻度、期間」の順になるのが原則だという。

そうした論文の記述に関するルールに加え、「benefit=有益性、利点」「significantly=有意に」など、単語レベルの訳し方についても随時確認。ポイントが次々に教示される中、受講生たちはメモを取ったり確認の質問をしたり、真剣に聞き入っていた。

2時間20分という長丁場の授業は終始、活気にあふれ、受講生たちは最後まで受け身になることなく、積極的に授業に参加していた。講師との物理的な距離の近さに加え、渡辺先生の親しみやすい雰囲気と的確で丁寧な指導が、そうさせるのだろう。今はさまざまな学びの形があるが、人と人が実際に集まって学ぶことの意味、醍醐味を感じられる授業だった。

講師コメント

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「医学・薬学」上級
渡辺理恵子先生
わたなべ・りえこ

早稲田大学卒業。医薬翻訳者、サン・フレアアカデミー中級・上級「医学・薬学」講師。大手企業勤務を経て、同アカデミーで医薬翻訳を学び、フリーランスの翻訳者に。『非侵襲的人工呼吸法ケアマニュアル』ほか、訳書多数。

自ら学び調べる「意欲」が大切
焦らずコツコツと勉強していきましょう

専門性の高い医薬論文の英語を正しく理解し、翻訳するには、基礎的専門知識に基づいて高度な調査力と英文法の応用力が求められます。これらを実践を通して習得し、問題にぶつかったときに自力で解決できる力を身につけていただくことが、このクラスの一番の目標です。

授業ではオリジナルのテキストを使い、膨大な参考資料も配布します。背景を理解するためのもの、訳を決める際の根拠となるものですが、揃えておくべき参考文献の紹介という意味合いもあります。

学習段階では、正しく訳せていることより、正しい手順を踏んで訳したかが大事。授業を受けている間に、手間を惜しまず専門書にあたる習慣をつけてほしいと思います。また、テキストの翻訳課題は一度訳して終わりにするのではなく、時間をおいて最低3回訳してみましょう。その上で、同じテーマについて書かれたほかの英文を訳せば、間違いなく力がついていきます。

最先端の成果にふれられる医薬翻訳には、知的好奇心が満たされる醍醐味があります。ミスの許されない厳しい世界ですが、そのぶん達成感は大きく、医療に貢献しているという充実感を得ることもできます。

文系か理系かは関係ありません。大切なのは、自ら進んで学んだり調べたりする「意欲」です。医薬に限らず、これから学ぼうとするものに誠実に向き合える人が、プロになれるのだと思います。最低3年はかかると覚悟を決め、焦ることなく、コツコツと勉強してほしいと思います。