Vol.23 家庭で育てる世界への興味
/通訳者 菱田奈津紀さん

我が家は日本人の夫と私、10歳と7歳の娘の4人家族です。通訳という職業柄、「家でも子どもに英語を教えているの?」とときどき尋ねられますが、我が家の英語教育はのんびりしています。日本語環境にいながら、幼いころから家庭で本格的に英会話を教えるとなると、親の側に相当な努力と根気が必要なのではないでしょうか。残念ながら、私はそのようなものを持ち合わせておらず、娘たちからも「ママ、もう少し英語教えて」とクレームが出るほどです…。そんな母ですが、娘たちにはいずれ英語を自由に使えるようになって欲しい、と期待だけは抱いています。
一方、幼いころから育てたいと意識してきたことがあります。それは、世界への興味と知識。そして多様性を受け入れる柔軟な心を育んで欲しいと思っています。加えて本連載でも語られている通り、第二言語を積み上げるためには、しっかりとした母国語の力と、論理的思考の土台を作ることが大事だと考えています。

家庭の中に思考や表現の環境を

家庭や生活の中に、世界へ興味を持つための仕かけを作る。これを実践で教えてくれたのは、母でした。私や妹たちが子供の頃、ダイニングの壁には大きな世界地図が貼ってありました。ニュースで見る世界の出来事が、子どもにもわかる言葉で食卓の話題となり、母は私たち姉妹の「なんで?なんで?」に答えてくれました。父もヨーロッパで過ごした体験を、おもしろおかしく語ってくれました。二人とも海外ドラマや洋楽が好きで、英会話にも積極的でした。そんな家庭で育ち、私は自分もいつか海外へ行くだろう、英語を話せるようになるだろうと早くから信じていたと思います。当時私の中で膨らんだ世界への興味は、今通訳者という職業に姿を変えているようです。

私も同様に、家族が自然に世界について会話できる環境を、生活の中に整えるようにしています。地球儀や地図は手に届くところに置くだけでなく、日常的にどんどん使います。「テレビに映っている国はここだね」「この国の言葉って何語かな?」といった具合です。また遊びの中に、思考や表現のチャンスをできるだけ作ります。娘たちはいろんな国に関心を示し、私と語り合うことを楽しんでいるようです。「今日は、どこの国の人の通訳をしてきたの?」と帰宅した私に尋ねることも増えました。興味や思考力、表現力を育てることに加えて、好きなことに没頭することも大事にしています。

地図やイラスト入り辞書などはすぐ手に届く場所に

我が家のゆるい英語教育

英語教育で、早くから気にかけたことは3つです。1つ目は耳、つまり音の聞き分けです。耳だけは幼い頃に鍛えようと思い、座っていられるようになる4歳頃から中学受験塾が始まるまでの4~5年間、ネイティブの先生からフォニックスを教えてもらっています。2つ目は、とにかく褒めること。旅先で英会話ができたら褒める。いい発音ができたら褒める。そして、そのうち必ずもっと話せるようになると暗示をかけるように信じさせるのです(笑)。3つ目は、私自身が英語を楽しむ姿をたくさん見せることです。

英語が話せるからグローバル人材、ではありません。自国や自分自身について、自信を持って論理的に語ることができ、相手の意見や他国の文化、習慣を理解しようとする姿勢を続けていけること。このためには知識や視野を広げ、人間力を育てていく必要があるのではないでしょうか。

この記事を書いている今は、新型コロナウイルスの影響による休校期間中ですが、次女は気が向くと、一人で英語の読み聞かせアプリを聴いています。感想を自分なりの英語で書いたり、英語の絵本を書き写したりもしているようです。自発的に遊んでいるので訂正しません。口出しもしません。自由気ままにアルファベットと遊ぶ姿を横目で見守ります。長女は、大好きなバレエで世界を広げるためには、英語が必要だと思っているようです。芽生えた興味が大きく育てと願いつつ、今日も目の前の自分の勉強に追われる母なのです。

旅先では楽しく英語で会話を