
第3回 ジャパンナレッジー有料という選択
私たち翻訳者は、翻訳しているよりも辞書を引いたり調べ物をしたりしている時間のほうが長いのではないか、と思えるくらい毎日何百回も辞書を引きます。私は専門分野の守備範囲が広いこともあり、フリーになってから買い集めたCD辞書は100タイトルを超えています。串刺し検索用に3つの辞書ブラウザーを使用し、海外の有料辞書サイトにもいくつか入会しています。ところが最近は新しいCD辞書が出なくなり、手元にある百科事典などは古くなって、コトバンクなどの百科事典も利用するようになりました。もちろん英独日の「Wikipedia」も引きますが、信頼性は低いので最終手段です。
最近になって有料のインターネット辞書・辞典検索サイトの「ジャパンナレッジ」に入会しました(個人契約の「パーソナル+r」)。辞書た事典以外にもさまざまな資料がそろっており、その膨大なデータベースを全文検索できるので、日々の検索手順が大きく様変わりしました。また調べ物の時間が短縮された分、翻訳に時間がかけられます。翻訳者といってもさまざまな分野・言語の方がおられ、それぞれ必要な資料は違うでしょうが、私がよく利用している資料をいくつかご紹介します。
なお、著作権の関係で辞書画面そのものはご紹介できませんでした。個人会員のコースには「JKパーソナル」(月会費1620円、年会費16200円)と「JKパーソナル+r」(月会費2160円、年会費21600円)があり、「JKパーソナル+r」でしか使用できない公開資料には★印をつけました。また、コトバンクでも利用できるものには■マークを付けました(ただしコトバンクでは本文が一部しか表示されないものもあるようです)。
百科事典は3種類
私はドイツ語翻訳ということもあり、あらゆる分野の翻訳を依頼されます。専門外はもちろん、専門分野であっても仕事が来たらまず百科事典で基礎的な知識を固めるようにしています。今後新版の百科事典が出版されることはまずないと思われる中、現在も更新されている百科事典は貴重です。
小学館「日本百科全書(ニッポニカ)■」
見出し項目約13万、総索引語約50万。書籍やCD-ROM、DVD-ROMでは不可能だった定期的な情報更新・改訂作業が行われている数少ない本格的百科事典。更新頻度は月1回とのことです。
平凡社「改訂新版 世界大百科事典」
見出し語約9万項目、総索引項目は約42万。情報更新はされませんが、書籍版2014年12月1日刊行の改訂新版(第6刷)が公開されています。
講談社「Encyclopedia of Japan」
英文の百科事典で、項目だけ英日併記です。講談社カラー版百科事典『Japan : An Illustrated Encyclopedia』(1993年刊)の本文を完全収録。故 E.O.ライシャワー博士が監修し、一流の日本研究家による正確な英文で評価が高いとのこと。改訂はされていませんが、日本に関するあらゆる事柄がわかりやすい英語で解説されていますので和英翻訳の方に役立つのではないでしょうか。
用語・情報コンテンツ
百科事典を補う意味で便利なのが、集英社「イミダス2016」と自由国民社「現代用語の基礎知識2016」。時事用語や流行語の意味は、ネットで検索しても曖昧だったり真偽不明だったり偏っていたりすることが多いですが、こちらは専門家による解説付きですので裏取り不要です(コトバンクは「知恵蔵」収録)。
例えば「ホメオパシー」という言葉。上記百科事典の項目にはなく、国語辞典の説明は2行ほど。ところがイミダスと現代用語の基礎知識には詳しい解説だけでなく、最近明らかになった問題点などが書かれています。中立的なネガティブ情報は、関連分野を翻訳する際にぜひ押さえておきたい点です。
欲を言えば、最新版だけでなく過去にさかのぼって利用できるようにしてほしい。すでに流行が終わって廃れてしまったことばの意味を調べたい場合もあるからです。
国語辞典として入っている「デジタル大辞泉■」の派生企画、「デジタル大辞泉プラス■」も役にたちます。解説文は短いですが、国語辞典ではほとんどカバーされない固有名詞(世人名、企業名、商品名やサービス名、小説・映画・漫画などの作品名)などもそれほど多くはないようですがカバーされています。年1回更新。
そして予想外に役立っているのが「会社四季報」。原文に日本の会社名が出てきたら、必ずこれで調べています。会社の規模や業務分野・内容、業績がコンパクトにまとめられていて、会社のHPを探すよりはるかに簡単にどんな会社か把握できます。
用語・情報コンテンツにはこのほかに有斐閣「法律用語辞典第4版★」、丸善出版「図書館情報学用語辞典 第4版」が収録されています。