第2回 文書校正支援ツール Just Right!6 Pro入門

翻訳LifeHack2017.02.07

翻訳者にとって、入力ミスは時に致命的です。専門知識に裏付けられた誤訳のない翻訳を読みやすい文章で納品しても、「確率」を「確立」と誤変換してあるだけで評価は下がります。数字を間違うのも致命的です。
数百ページの翻訳で入力ミスを完全になくすのは無理でも、限りなくゼロに近づける努力を怠ってはならないでしょう。自分の目で確認するのはもちろん、ツールに任せることで、時間を節約しながら一定範囲のミスを確実につぶすことができます。

私の場合、納品前に
1)CATツールの校正機能(数字・用語チェック/曜日や月、左右、上下、オン オフなど)
2)正規表現やマクロを使った自作の校正機能(助詞の重複・同音異義語・入力ミス)
3)Wordの校正機能
4)Just Right!6 Pro(入れている校正辞書をすべて実行)
5)読み上げソフト/印刷
の順で段階的にミスを減らしています。

残念ながらこれさえ使えば100%安心、という校正ツールはないので、ミスを見つけたらそのつど1)2)4)のいずれかで設定を変えたり項目を追加したりして、次回発生時にチェックできるようにしています。

第2回は、JustSystemsの文書校正支援ツール、Just Right!6 Pro をご紹介します。高価なソフト(定価は約5万円、直販サイトで割引価格になっている期間あり)ですのですぐに導入することは難しいかもしれませんが、検討材料としてお読みいただければいいなと思います。

Just Right!でチェックできること

01チェック項目

なんだか難しそうな名前が並んでいます。まず一番上の項目、誤りチェックの具体例を見てみましょう。

02誤りチェック

左上の「校正実行」をクリックするとすべての項目がチェックされ、色分けマーキングされます。この例では「誤りチェック」でひっかかる誤りだけが入れてあります。ピンク色の「誤り」ボタンを押すと左ペインに「誤り」とその種類が一覧表示されます。これを見てもわかるとおり、例えば「間が持てない」や「足元をすくう」は誤りとして指摘されていません。すべてを網羅しているわけではないことがわかります。

本文中の誤り部分(ピンク色)にカーソルを当てると、次のようなウィンドウが表示されますので、修正します。このウィンドウでは、文書全体で「まとめて修正」することも、専門用語などを指定語から外すこともできます。チェック対象から外した単語は、次から同じ理由では指摘されなくなります
03訂正ウィンドウ

この例では「勉強とが」の「と」と呼応するもう1つの「~と」葉が見つからないため表示されています。
「誤りチェック」では他に、「人事移動」や「できますた。」などの誤字脱字、「こんにちわ」 「1つづつ」などのかなづかい、「食べれる」などのら抜き表現等がチェックされます。

さらに例として上記一覧表の2番目にある「用語基準」を見てみましょう。ここでは送りがな(取り付け or 取付け/浮ぶ or 浮かぶ)や、漢字/ひらがな使用(但し or ただし/例えば or たとえば)、登録商標(一般名称を提示)、数字の表記(一億5000万 or 1億5000万)など、このツールの辞書やルールに沿っているかどうかが紫色で示されます。

04用語チェック

ここでは「文部省」には「文部科学省」が、「行なった」には「行った」が、「宅急便」には「宅配便」が正しい用語として提案されます。

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