
第12回 激安!沖縄0泊3日1万円ノマドツアー
限界に挑戦
ノマド旅(PC片手に仕事しながらの旅)を持続可能なものにするためには、少なくともノマド単体として黒字でなければならない。つまり旅先でした仕事の報酬が、その旅費を上回らなければならない。だから質素に楽しむのが基本だというのは第7回で述べた通りだ。
今回はその極限に挑戦しようということで格安沖縄ツアーに出た。予算はなんと交通費込みで1万円。普通なら片道の飛行機代だけで軽くオーバーしてしまうところだろう。
しかし昨今はLCC(格安航空会社)というものがある。僕がよく利用するのはジェットスター。東京近郊で一番アクセスが悪い成田第三ターミナルまで行くのも、もう慣れっこだ。平日なら通常6千円ほどで那覇まで行けてしまうのだが、セール中ならもっとお得な3千円程度。さらに有料会員(会費は年間3千円ほど)限定セールというのがあり、片道880円で予約できた。空港使用料など込みで成田那覇が往復1760円。ただし荷物の制限(7kgまで追加料金なし)があり、合計3kgほどのノマドギアを抱えてこれをクリアするのは、素人さんにはなかなか難しいかもしれない。
さて、幾ばくもない東京の爽やかな秋を無駄にして不快指数MAXの那覇までやって来たはいいが、着いたのは22時。やはり格安なのは夜に成田発や朝に那覇発なのだ。帰りのフライトは翌々日の早朝。普通ならホテルで2泊するところだろう。だが今回はスーパー貧乏旅。その辺で仕事してりゃ朝になるじゃん、ということでホテルはとっていない。ただし、沖縄は車社会。モノレールが申し訳程度に走っているぐらいで、東京のように公共交通でどこにでも行けるという訳ではない。レンタカーが必須で、これは事前予約で24時間3000円だった。
仕事そして観光
4月に南部を回ったので、今回は北へ向かってみる。那覇市街の夜はなかなか活気があり、24時間営業の食堂もいくつかある。そういえば慌てて飛行機に乗って、昼から何も食べてないんだっけ。タクシーがたくさん停まっている食堂が目に入った瞬間、これは間違いない!ということでウインカーを出して駐車場にイン。この判断の素早さはノマドで培われたものだ。豆腐チャンプルー定食(500円)で満腹になり、さらに北を目指した。
結局名護市まで来たころに眠たくなってしまい、車の屋根をたたきつける雨音を聞きながら眠る。起きると7時で、幸い雨は止んでいた。数分で市街に入り、沖縄限定のファストフードチェーン「A&W」(通称「エンダー」)で昼前まで仕事。名物のお代わり無料「ルートビア」は好き嫌いが分かれるようで、僕は大いに気に入ったのだが、関西から水族館を見に来たと思われる隣の家族連れは「サロンパスの味や~」と酷評していた。朝セット+コーヒーで450円。
すでに今回の旅費を十分まかなえるだけの仕事はした。「ビーチの写真プリーズ」という友人のリクエストに応えて21世紀の森ビーチで散策し、小一時間読書。そして市街へ戻り、沖縄通の友人おすすめのソーキそばを食べる(500円+駐車場代50円)。飛行機代が片道1000円もしないのなら、これを食べるためだけに沖縄まで来たっていいかもしれない。それはさすがに褒めすぎかもしれないが、ノマド翻訳者にとって基本わずらわしいSNSも時には頼りになるものだ。
観光モードはさらに加速し、美ら海水族館へ。さっきのそば屋は、家族と来たときに連れて行ける。一方で、家族と一緒に初めて体験し、一緒に驚いて楽しめる場所も残しておきたい。そんなわけで、ここでは建物の下見をするだけにとどめた。まあ、既に残り4000円足らずということで予算不足なのだが。ところが、海の動物たちは屋外でも飼育されていて、イルカショーからウミガメ、マナティまで無料で見学できた。沖縄は寛大だ。
ミッション達成なるか?
続いて三山時代に北山の中心として栄えた今帰仁城(なきじんグスク)跡(入場料400円)をゆっくり見学し終わると日が暮れ始め、那覇へ向かう。途中、美浜アメリカンビレッジでお土産を購入し(これは予算に含めず)、返却期限ぎりぎりで車を返す(ガソリン代1310円)。もう体は汗でねっとり。自分は我慢できても飛行機で隣になる人に申しわけないということで銭湯を探したが、時間も遅いし営業しているところは少ない。ゆいレール(230円)に乗って那覇市街の温泉へ(1000円)。手痛い出費だ。
沖縄の深夜の定番はステーキらしい。しかし予算が足りないので午前1時の食堂で魚フライ定食(570円)。それから飲みに行って、現地の人たちと仲良くなって、大盛り上がりして…とでも書きたいところだが、飲めないし、そんな社交性もないし、そもそもゼニがない。国際通りのマクドナルドで数時間仕事したあと(100円)、夜明け前の那覇の風を感じながら最後の体力を振り絞って空港まで5キロほど歩いた(途中でペットボトル130円)。旅の費用はもろもろ込みでジャスト1万円。自分でもヤラセかと思うほどのピッタリ賞で見事ミッションクリア!
と思ったら、忘れていた。そういえば成田へ向かうとき大停電で電車が止まってしまい、タクシーに乗ったんだっけ。特急も使ってぎりぎり間に合ったものの、自宅から成田まで約6000円。成田から自宅まではリムジンバスを使って最安で帰ったけど、それでも約2000円。これも含めると予算の倍近くになってしまい、ミッション達成ならず。なんだバカバカしい。こんなことならケチケチせずにもっと楽しめばよかった。そんなわけで、翌週こちらも片道880円で初雪の舞う札幌へ向かったときは、ちょっとだけ財布のひもを緩めたのであった。