第3回 和菓子はNo! 製菓道具はWow!

和菓子に興味津々だけど、味は……

日本人にとって身近なアート、それも食べられるアートといえば和菓子。その姿形を愛でて季節を感じ、最後に味わうという1個で3度楽しめる素晴らしいスイーツです。

でも、和菓子って外国人には意外と(いや予想通り?)不評なのです。お茶席に参加してみたいという要望は極めてよくあるので、そんなときは隣に座ってガイドをしながらお相伴。

さて和菓子が運ばれてきました。彼らがお菓子をしげしげと見つめた後に、最初の一口をかじった瞬間、私もすまし顔でいただきながら必殺流し目“見ないふり”を繰り出しつつもチラッと目を向けると……、結構な確率で微妙~な表情を目にすることに。そういう場合はあえて感想は聞かず、やっぱり見なかったことにします。

機会ある度に調査をした結果、どうも和菓子の不評の原因は、砂糖の味しかしない、何を食べても同じ味、甘すぎる、といったところ。

そんな彼らが打って変わって興味を示すのが、和菓子を作る道具。私達は普段、菓子司に寄って「練りきり3つと黒糖饅頭6個入り一箱ください」などと言うときも、それらがどうやって作られたかまで思いを馳せることはあまりないですよね? 一方、外国人観光客の皆さんは味わうのもそこそこに、どうやって作るのかに注目することが多いんです。

和菓子型のクリエイティブな使い方

和菓子型

      和菓子型

外国人観光客の和菓子の作り方に対する興味深々具合がよくわかるのが、骨董市などで道具に出会ったときです。東京だと毎週日曜日に開かれている大江戸骨董市や、四季ごとに開催される平和島骨董市を訪れる機会が多いのですが、まず興味を引くのが木製の和菓子型。

廃業した和菓子屋さんから引き取ったものが多いようです。いろいろな花や、扇にアユといったいかにも日本なモチーフで、彼らが思わず手にとってしまうのも、まぁ納得。それじゃ、「これって何だと思います?」と聞いてみると、

「アクセサリー入れ」
確かにへこんでいる部分に入れられますね。

「浮世絵の版下」
なかなかツウな回答。

「クッキー型」
惜しい!

諸回答出そろったところで、「さっき食べた和菓子を作る型ですよ」と言うと、「へーー」と流し返事で私の話など聞かず、みんな木型を物色中。ひとつやふたつ買うんだろうと思っていた私は唖然。大量購入です。今のところ、最大購入枚数は22枚。話しかけてもだれもまともに答えてくれないので、戦い終わって恒例の戦利品自慢タイムまで私は勝手に休憩です。

しばらくして、皆様それぞれの目的にかなった柄や枚数を手に入れ、ほくほくとなったところで、どうやって使うのか聞いてみました。すると、ある人は10枚くらい組み合わせて壁に貼るオブジェを作る、そうな。また、ある人は20枚ほど貼り付けてその上にガラスを敷いてテーブルトップにするそうな。さらに2枚組で抜型になっているものを手にした人は、あいだに写真を挟んで写真立てにするような。このような回答を初めて聞いたときは、はぁ~皆さんクリエイティブだわ~と感心しました。

ちなみにある日、ランチに押し寿司を召し上がっていただいたので、その2枚組の抜型を持っていた方に「この型でお昼に食べたお寿司も作れますよ」と言ってみたら、全然クリエイティブじゃないという理由で即却下されました。修業が足りませんでした。

そして最近、中目黒の超モダンな和菓子屋さんの壁に木型を使った大きなデコレーションを目にしました。彼らの言う通り、和菓子型の新たな使い方がついに日本でもお目見えしたという……。いや、大変恐れ入りました。

焼印をジューーっとスタンプ!

焼印

        焼印

03_04もうひとつ、和菓子関連でお土産に買われるものがあります。これも一般の日本人は買わないであろうシロモノ。包丁を買うついでに東京が世界に誇る料理マニアのための街・合羽橋をうろうろしていると、菓子道具のお店が何軒か出てきます。そこでやはり「これどうするの?」となるのが焼印。松竹梅、うさぎ、“寿”や“謹製”などの文字系。いずれも熱して、どら焼きや温泉まんじゅうにジューーーっとあてる焼ごてですね。

手に取るとわかるのですが、見た目よりもかなり重いんですよ、あれ。使い方を説明すれば、なるほどと理解してくれるのですが、旅行者の皆さん考案の使用法はこれに関してもかなりオリジナル。

「白い出窓があるから、そこにバラと一緒に2、3本置いてみようと思って」
なんとなくオシャレそうなことだけはわかる。

「子供が悪いことをしたときに、お仕置きするぞって言ってこらしめるのに使うのよ」
明らかにやけどするので絶対やめていただきたい。

「よく自分でパンを焼くからそれにこのスタンプを押してみたい」

パンに焼印するのもいいけど、シャレた何とかブレッドに大きな七福神や“毎度ありがとうございます”のメッセージはちょっとね……。思わず口に出しそうになりましたが、そこはぐっとこらえました。以上、これが本当の「カタにはまらない」話でした。