現場のニーズに即したカリキュラムで、プロデビューに必要な
スキル、知識を効率的に習得できる

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多様化する映像翻訳の需要に対応した充実のカリキュラムで、数多くのプロ翻訳者を世に送り出してきた日本映像翻訳アカデミー。就業支援のための「メディア・トランスレーション・センター(MTC)」を併設し、受講中からプロデビュー後までのサポート体制を整えている。

訪問クラス 英日映像翻訳科「総合コース・Ⅰ」

番組のジャンルや話者の個性の違いから訳す言葉のトーンを見きわめる

「英日映像翻訳科 総合コース・Ⅰ」は、映像翻訳の基本ルールや考え方を学ぶ「基礎マスター」と、基礎を踏まえた上で翻訳スキルを磨いていく「応用トレーニング」の2つのパートに分かれている。今回見学したのは「基礎マスター」のうちの1コマで、藤田奈緒講師が担当する「翻訳スキルの基礎」。アメリカの深夜トーク番組を題材に、ナマで語られる言葉の翻訳手法について学んでいく。

番組は字幕放送だが、この講義ではその前段階の手法として、話者のトークの内容をすべて書き起こした「スクリプト」を全文訳する。学び始めは特に、原語に含まれているニュアンスや情報をあますところなく訳す訓練が重要なのだという。「原語の理解が不安定なまま字幕を作っていくと、字数制限があるのをいいことに、意味がとりづらいところを省いて訳す癖がついてしまうことも。そうすると文脈が変わってしまったり、誤訳につながったりします」と、藤田講師が全文訳を行う重要性を強調する。

課題となったのは、番組司会者による冒頭のトーク。「同じナマの言葉を扱う翻訳でも、トークショーとニュースでは、訳語の選び方、話者の口調などが異なります」。ニュースは基本的に原稿の読み上げで、話者の感情も抑え気味だ。しかし、トークショーでは観客の反応を受けて話者のテンションが変化し、感情も言葉にのってくる。

翻訳する際も番組の内容に合った言葉のトーンを見きわめる必要があるのだそうだ。たとえば司会者の言葉を「です・ます」調にするか、くだけた言葉にするかで雰囲気はかなり変わるという。また、話す人物が“知的な皮肉”を売りにしているのか、下ネタありのジョークを連発する人なのかによって、同じ単語でも訳し方が変わってくる場合がある。

翻訳者は事前に番組や話者のリサーチを行い、適宜判断することが重要だという。「類似のトーク番組でどんな字幕が当てられているか、いく
つかリサーチするのも有効です」と藤田講師が続ける。教室でも実際にいくつかのトークショー映像を見ながら、字幕の口調や言葉選びについての確認が行われた。

映像と話者の言葉、どちらの情報も正確に読みとって翻訳に反映させる

トークショーの特性をひととおり確認したところで、映像に合わせ、各人の訳を検討していく。同じ台詞について複数の受講生に訳してもらうと、十人十色、さまざまな訳が出てくる。

「訳はいろいろあって当然。それでいい」と藤田講師。その上で、ニュアンスをうまく引き出せているか、情報がきちんと盛り込まれているか、細かな表現をチェックしていく。単に言葉の意味を追うだけではない。話者がカメラ目線でyouと言っているなら、それはスタジオの観客だけではなく、視聴者も含めたyouであると考えられる。トークなどでは特に、誰に向けて話しているかも常に念頭に置いて訳に反映する必要があるという。

また、トークにつきもののジョークも訳すのが難しいポイントだ。「観客の笑いが入るところでは、できるだけ字幕でもクスッとさせたい。そのまま訳して笑えそうにない場合でも、何かしら笑える要素がないかよく考えましょう」とアドバイスする。

たとえば話者が「番組には宣伝費もたっぷりかけてるよ。sign spinnerとかね」と言って笑いが起きるシーン。sign spinnerは日本では馴染みのない言葉だ。映像を見れば手軽で予算のかからない広告スタイルを見て笑いが起きたと分かるが、日本人には伝わらない。「日本の視聴者に笑いを引き起こすために訳語で工夫してみましょう」と藤田講師。受講生のひとりの訳の「広告看板回し」に「チープ感が出ていていいですね」とコメントする。

講義では、各人がどういう解釈とリサーチのもと、その訳語にたどりついたのかを聞くことも重要視している。教室で自分と異なるアプローチ法を知ることは、今後翻訳スキルを磨いていく上でも非常に力になるそうだ。

翻訳の答えはひとつではないからこそ、多くのアプローチ法に触れ、翻訳の視野を広め、スキルの土台を固めることが大事だとわかる。受講生から訳についての疑問や意見も上がり、積極的にスキルを深めていこうという熱意が伝わる2時間20分だった。

講師コメント

総合コース・Ⅰ
藤田奈緒講師
ふじた・なお

JVTA日本映像翻訳アカデミー講師。受講生・修了生サポート部門リーダー。同校を修了し、映像翻訳者としてキャリアをスタート。その後、修了生のための就業支援部門「メディア・トランスレーション・センター(MTC)」でディレクターを務め、現職に至る。UNHCR WILL 2LIVE映画祭の字幕制作総合ディレクター、明星大学非常勤講師としても映像翻訳の指導を行う。

自分の弱点を理解し、克服できる人ほど翻訳の実力は伸びていきます

「総合コース・Ⅰ」は、映像翻訳を初めて学ぶ方が翻訳の初歩から技術を習得し、より専門的な映像翻訳の講義に備えるコースです。コース前半の『基礎マスター』と後半の『応用トレーニング』と2つのパートに分かれており、映像翻訳を本格的に学ぶ前にまず自身の適性を確かめたいという方は、『基礎マスター』のみの受講も可能です。

『基礎マスター』では、字幕・吹き替えという手法の違いを踏まえ、それぞれのルールの基本を身につけます。それと同時に、映像を翻訳するとはどういうことなのか、その考え方について理解を深め、映像翻訳に欠かせない「作品解釈」というスキルも学んでいきます。

映像翻訳の手法に応じ、多彩な講師陣を配しているのも本コースの特徴のひとつでしょう。そもそも翻訳には、ひとつの正解があるわけではありません。先輩でプロとして活躍中の講師たちから学習の早い段階で、翻訳に対する多様なアプローチ法を学び、それぞれの現場の経験を知ることができるのは、非常に大きな財産になるはずです。

講座では毎回課題に取り組みます。訳に対する講師からの指摘やフィードバックを受け入れ、自分の弱点を克服していこうという方は、教室でも大きく伸びていきます。そういう方は、仕事をしながら学んでいる場合でも、スケジュールをうまく割り振って翻訳のための時間を捻出しているようです。スクールで学ぶ期間は、長い人生の中でほんの少しの間です。プロデビューしたいという明確な目標をお持ちなら、この期間、ぜひ集中して全力で走り続けてください。

世界的に“動画の時代”が到来した今、映像翻訳者の活動の場は広がりを見せています。当校では最新のニーズに沿った手法を身につけられるよう、定期的にカリキュラムのアップデートを行っています。それらのスキルを身につけ、翻訳のよしあしを自分で見きわめられる実力を養っていけば、活躍のチャンスは必ずあります。