【Event Report】
日本翻訳大賞第6回・第7回合同授賞式
コロナ禍での開催延期を経て
2020年・2021年度の受賞作を会場で表彰
12月11日(土)、東京・表参道の青山ブックセンター本店 大教室で「日本翻訳大賞」(主催:日本翻訳大賞実行委員会)の第6回・第7回合同授賞式が開催された。同賞は過去一年の間(厳密には12月1日から翌年の12月末までの13カ月間)に日本で発表された翻訳作品のうち、最も賞讃したいものに贈られるというものだ。
2020年12月に予定されていた第6回の授賞式がコロナ禍の影響で開催されていなかったため、今回、第6回と第7回と合同での開催となった。密を避けるために会場定員の6割ほどに参加人数が制限されたこともあり、開催日の数日前にチケットは完売となった。
当日のオープニングは、ギターとバイオリンの演奏から始まった(当授賞式では恒例となっているもので、ギター演奏は選考委員の一人である西崎憲氏が担当)。続いて6人の選考委員(金原瑞人氏、岸本佐知子氏、斎藤真理子氏、柴田元幸氏、西崎憲氏、松永美穂氏)が挨拶をしたあと、各回の一次・二次選考、最終選考に残った候補作がどんな作品なのか選考委員から紹介された。第6回については金原氏と岸本氏が、第7回については斎藤氏と松永氏がペアになって担当した。いずれ劣らぬ読書家でトークにも優れた各氏がプレゼンテーションをするので、紹介されるどの作品も読んでみたくなる。
厳正な審査の結果、受賞作に選ばれたのは以下の作品。
第6回受賞作
『アカシアは花咲く』
(デボラ・フォーゲル著、加藤有子訳 松籟社)
『精神病理学私記』
(H. S. サリヴァン著、阿部大樹、須貝秀平訳 日本評論社)
第7回受賞作
『失われたいくつかの物の目録』
(ユーディット・シャランスキー著、細井直子訳 河出書房新社)
『マーダーボット・ダイアリー 上・下』
(マーサ・ウェルズ著、中原尚哉訳 東京創元社)
プログラムの後半に行われた「受賞者座談会」では、選考委員の柴田元幸氏が聞き手となって受賞者別にインタビューが行われた。受賞者の翻訳への向き合い方がそれぞれ異なっていることがわかり、訳者ごとの翻訳の“型”とも言えるようなものが垣間見えたのが興味を引いた。
コロナ禍のなかで多くのイベントが開催をとり止めたり、オンライン開催に替わっていたなか、リアルイベントとして久々に開催されたこの授賞式。プログラムの最初から最後まで終始和やかなムードが漂い、それでいて翻訳や海外文学への熱い思いを感じる貴重なイベントだった。
*日本翻訳大賞第6回・第7回合同授賞式のより詳しいレポート記事は、2022年2月21日発売の『通訳・翻訳ジャーナル2022年春号』に掲載予定です。お楽しみに!*
(TEXT:佐藤直樹)