Vol.24 “心のバリアフリー”と自立心を意識して
/通訳者・大学講師 山崎美保さん

子育てを通じて
通訳者として学んだこと

いったん通訳の仕事を休んだあと、復帰をしましたが、子育てと仕事の両立はなかなか高いハードルでした。ただ、子育てを通して、通訳者である母親の私が学んだこと、身についたこともありました。
ある日、日帰り出張が入り、私が一番に家を出ることになりました。皆に起きるよう声をかけてから外出したものの、朝の会議のあと、休憩時に携帯電話を見ると子どもの学校から何度も着信がありました。急いでコールバックをすると、「お嬢さんが学校に来ていません」と……。結局、娘が寝坊して遅刻した、という結末なのですが、娘と連絡がつかないまま、会議に戻らざるを得なかったときは、生きている心地がしませんでした。どうして私はこんなところにいるのか、子どもに何かあったらどう責任をとるんだ……とひたすら自分を責め続けました。

そのような経験を経て、仕事中に電話がかかってきてもすぐ動けるように、短時間の仕事しか受けないよう調整したり、何かあったときに頼める人をほかに頼んだりと、柔軟にBCP(Business Continuity Plan)を立てること、またすぐに動ける瞬発力、時間とリソースが無い中での意思決定力などが、自然と身についたように思います。
また当時は、夕飯の準備で大根を切りながら、洗濯し、CNNも聞くなどのマルチタスキングが日常でした。これは、一瞬で聞いて理解して訳して産出する(時には資料を読みながら)という、通訳の仕事に通じます。さらに子育てで時間がないときほど、自分が本当は何をやりたいのかが見えてきたこと、これらが今、振り返ってみると、子育てを通じて身についたことだと思います。

子ども達が小さかった頃は、いまから考えるととてもキラキラした、充実した時期でした。もちろん楽しいことばかりではありませんが、真っ最中の方々には、ぜひとも期間限定の子育てを通して“自分育て”も楽しんでもらいたいと思います。

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