英語のみならず、独語、仏語、西語、伊語、中国語を独学で身につけ、多言語での読書を楽しんでいるという作家・翻訳家の宮崎伸治さんに、多言語学習の魅力を余すところなく語っていただきます!
ハングル文字への苦手意識を60歳間近で克服!
日本人にとって“食わず嫌いがもったいない”言語、それが韓国語
以前、韓国語単語は覚えるのが驚くほど簡単というお話をしました(第25回)。その根拠は「日韓で共通する言葉が多いから」というものでした。中国語の履修者ならさらに覚えるのが簡単というお話もしました。日本人にとって韓国語は“食わず嫌いはもったいない”の代表ともいいました。
発音だけを比べれば非常に似ているものがたくさんありますので、リスニングとスピーキングに関しては上達しやすいと思います。しかし、読むとなると話は変わってきます。一部の漢字は漢字のまま使われる場合もありますが、基本はハングル文字。ハングル文字が分らなければ韓国語が読めるようにはなりません。これがネックになって韓国語の本に手が出ないとい人も多いのではないでしょうか。かくいう私自身、ヨーロッパの言語や中国語に比べ、ハングル文字は見ただけで拒絶反応が出ていたので、手をつけないまま、いつの間にか60歳間近になっていたというわけです。
しかし、ハングル文字は覚えるのが驚くほど簡単なのです。ハングル文字がネックになっている人こそ、まさに“食わず嫌いはもったいない”です。
考えてもみてください。私たち日本人は多くのヨーロッパ人から「非常に難しい言語」と言われている日本語を自由自在に操っているのです。かくいうヨーロッパ人に何が難しいのか訊いてみたら、難しさの原因は日本語の表記らしいです。日本語には漢字・カタカタ・ひらがながありますし、漢字には読み方が複数あります。私は「日本語はヨーロッパ人にはとてつもなく負担がかかる言語だろう」と他人ごとながら思っているのですが、日本語の表記と比べれば、韓国語の表記を覚える苦労は何万分の1、いや、何十万分の1といえるのではないでしょうか。
実はシステマチックで覚えやすいハングル文字
ハングル文字は、日本語のカタカナ・ひらがなと同じように文字を発音のまま表記していたものですが、カタカナ・ひらがなとは異なり、システマチックに出来ているので、遙かに覚えやすいのです。
『1時間でハングルが読めるようになる本』(Gakken)という本があったので、半信半疑で買って試してみましたが、まったくのゼロの状態の私でも数日でハングルを一通り覚えることができました。さすがに「1時間」というのは、私にはきつかったですけれど、でもあながちウソというわけではありません。それくらいシステマチックなのです。
例えば、日本語の「あ」「い」「う」「え」「お」「か」「き」「く」「け」「こ」…というひらがなを覚えるときの外国人の苦労を考えてみてください。何のつながりもない1つ1つの文字と発音をつなげて覚えなければならないのです。ところがハングルはそうではありません。すべてシステマチックです。
ハングル文字には母音が10個(複合母音を合わせれば21個)、子音が19個とそれぞれに1つずつ文字が決まっており、文字を組み合わせることですべてのハングル文字ができあがるのです。例えば、「기」は「ㄱ」と「ㅣ」が組み合わさってできたものですが、「ㄱ」は「k」、「ㅣ」は「i」に相当し、日本語でいえば「기」は「キ」になります。
ということで、ハングル文字を発音するとしたらどういう発音になるかが分るようになるには、それほど時間はかからないのです。もっともどういう発音になるかが分っても、それが何を意味するかを覚えなければ、ハングルで書かれた文章は読めるようにはならないでしょうけれど…。
私の親友Nがしきりに「韓国語は簡単だ」と言っていたのは、きっと「ハングル文字をどう発音するかを覚えるのは簡単」という意味だったのでしょう。でも、それだけでは韓国語の本が読めるようになるわけはないのですけれどね(笑)。
★宮崎伸治さんの連載一覧はこちら
著書に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)などがある。ひろゆき氏など多くのコメンテーターに対して翻訳業界の現状を語る番組に出演した際の動画が無料で視聴できる。https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p3575(ABEMA TV)。また「大竹まことのゴールデンラジオ」に出演したときのようすが、次のリンク先のページの「再生」ボタンを押すことで無料で聴くことができる。http://www.joqr.co.jp/blog/main/2021/03/110.html
*2024年3月30日にトークショーを開催予定。詳細はこちら