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2023.05.26 UP

第11回 語学検定を10倍楽しむ方法

第11回 語学検定を10倍楽しむ方法

英語のみならず、独語、仏語、西語、伊語、中国語を独学で身につけ、多言語での読書を楽しんでいるという作家・翻訳家の宮崎伸治さんに、多言語学習の魅力を余すところなく語っていただきます!

語学検定を受けるメリットを考えよう


語学検定の有効な活用法とは?

語学検定について否定的な主張をする人に遭遇するたび、もっと良い語学検定の活用法を見つければいいのになぁ…と思わざるをえません。というのも私から言わせれば、せっかく存在している語学検定を活用しないことはもったいなさすぎるからです。

否定的な主張とは例えば次のようなものです。

「TOEICで高得点とっても、話せなかったら何の意味もない」
「資格試験中心の勉強を断ち切らないかぎり、できるようにはなりません」

私は、語学検定をうまく活用すればモチベーション維持にもなるし、十分意味のあることだと思っています。「意味がない」と主張している人たちの言い分も分からなくはありませんが、それはあくまで彼らが意味を感じていないだけのことであって、語学検定そのものに意味がないわけではありません。

ところで語学検定を受けるメリットは何でしょうか。いろいろ考えられますが、私が強調したいのは次の2点です。

① 客観的な自分の実力が分かる
実力の伸びは一人ではなかなか分かるものではありません。語学検定を受けることで自分の実力を客観視でき、過大評価も過小評価もしなくて済むようになります。

② 学習のモチベーションになる
英語以外の外国語の場合、学校やサークル等に所属していない限り、なかなか実力を発揮する場などないでしょう。それでも困難にぶつかったときに投げ出さず続けられるのであればいいのですが、目標がないと学習を止めてしまいがちになります。そんなとき語学検定は良いモチベーションになってくれます。

こうしたメリットを享受するための、私流「語学検定を10倍楽しむ方法」をお話ししましょう。

合格のみを重視するのではなく モチベーション維持のツールとして考える

前回のコラムで「英検、独検、仏検、伊検、西検、中検などの検定試験の主催者に提案したいのは、一次試験と面接試験を別々にし、どちらか一方でも合格すれば、部分合格証を出すようにすればいいと思うのです」と述べましたが、いくら望んだところで簡単に変更になるとは思えません。

ならどうすればいいか。既存の語学検定を自分のニーズに合わせてカスタマイズするのです。え? そんなことができるのかって? できます。意識さえ変えれば、だれにでもできます。ご存じのとおり、コペルニクスは当時主流だった天動説(地球中心説)を覆し、地動説(太陽中心説)を唱えて天文学の常識を一変させましたが、私の「語学検定を10倍楽しむ方法」も「合格(スコア取得)中心思考」を脱し、「モチベーション維持中心思考(モチベーションの維持に役立てられればそれで良しとする考え方)」に意識変革する点では語学検定の常識を一変させるものです。

そのテクニックは次のようなものです。

① 自分のニーズに合った語学検定を見つけて受ける。仮にそのような語学検定がなければ、既存の検定を受け、自分が伸ばしたい部門だけ注目する
話せるようになることを目的にしない人であれば、フランス語なら面接試験の無いTCFがありますし、ドイツ語ならゲーテ・ドイツ語検定のリーディングとリスニングだけを受ける…といった具合です。英検、独検、仏検、伊検、西検、中検などの上級には二次試験として面接試験が課されますが、一次試験だけに限定して受けるのもいいでしょう。
逆に、話せるようになりたいという向きには、中国語ならHSK口試がありますし、ドイツ語なら上記検定のスピーキングだけを受けるという手があります。

② 語学検定は実力の伸びを測定するためのものとして割り切って受け、過去問題集には手を出さない
あなたが外国語を学ぶ究極の目的は何ですか。もしそれが「異文化を深く理解する」であれば、合否やスコアにこだわる必要はありませんよね。あるいは「翻訳家になりたい」であれば、リスニングの点数にこだわる必要はありませんよね。
よく「受けるからには合格しなければ…」と思い込んでいる人を見かけますが、不合格になったところで何ら“恥ずかしいこと”ではありませんし、他人が決めた合格基準に達していなくても自分の価値が否定されるわけではありませんから、合否を気にせず、点数の伸びをチェックするためだと思って割り切って受ければいいのです。

合否(またはスコア取得)を目指して過去問題集に取り組んでいると、合否(またはスコア取得)が気になり始めますが、原書で良書を読んだり洋画を楽しんだり…といった自分の究極の目的に合わせた学習を続け、語学検定は実力の伸びを測定するためのものとして割り切って受ければ、不合格になっても(またはスコアが悪くても)は気にならなくなります。それでいて合格すれば(またはスコアが良ければ)モチベーションが上がるのですから、“メリットしかない”ともいえるのです。

このように意識改革をすれば、語学検定はモチベーション維持に大いに役立ちます。実際、私は幾多もの不合格にも腐ることなく学習を続けています。ぜひ私の方法を参考にしてみてください。

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作家・翻訳家 宮崎伸治
作家・翻訳家 宮崎伸治Shinji Miyazaki

著書に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)などがある。ひろゆき氏など多くのコメンテーターに対して翻訳業界の現状を語る番組に出演した際の動画が無料で視聴できる。https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p3575(ABEMA TV)。また「大竹まことのゴールデンラジオ」に出演したときのようすが、次のリンク先のページの「再生」ボタンを押すことで無料で聴くことができる。http://www.joqr.co.jp/blog/main/2021/03/110.html