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通訳・翻訳の初仕事を得る方法はさまざまあるが、未経験者でもデビューの可能性が開けるのが「コンテスト」だ。特に、志望者が多く狭き門である出版翻訳においては、コンテストやオーディションからデビューを叶えた人も多い。コンテストがきっかけでデビューしたり、仕事が増えたりといった経験をした通訳者・翻訳者のリアルな声を紹介する。
興味のあるコンテストに参加して
デビューのチャンスをつかもう!
翻訳者と通訳者は、国家資格や免許がある職業ではないので、最初の仕事のきっかけをつかむのが難しい。産業翻訳であれば、翻訳会社のトライアルを受けて登録することが仕事への一歩になることが多いが、海外で発行された外国語の出版物を扱う出版翻訳では、出版社側に翻訳者を登録するようなシステムはないので、翻訳者デビューのハードルがより高い。そのため、出版翻訳のコンテストの中には、受賞者に課題作品の出版を約束しているコンテストもある。
コンテストの参加条件は特になし、もしくはあってもさほど厳しくないケースが多いので、仮に翻訳経験がなくても参加することができる。自分の訳文が審査・評価される機会である翻訳コンテストやオーディションがあれば、うまく活用していきたい。
実際に、プロの翻訳者に取材をしていると、コンテストがきっかけでデビューした方は多数いる。そういった方々へのインタビューを、他記事でいくつか紹介するので参考にしてほしい。また、通訳のコンテストも行われており、受賞がきっかけで仕事の増加につながった例も紹介する。
『通訳翻訳ジャーナル』では、ほぼ毎号「誌上翻訳コンテスト」を実施している。出版翻訳に限らず、映像翻訳や産業翻訳なども課題文としている。今回、過去に最優秀を受賞した方にアンケートを実施したところ、17名から回答をいただき、デビューにつながった方や、プラスのメリットがあった方もいた。
このように、コンテストはデビューのチャンスをつかんだり、仕事の増加につながったりするきっかけとなりうる。まだチャレンジしたことのない人も、これから他分野に仕事の幅を広げようとしている人も、興味のあるコンテストが開催されていたら、応募をしてみてはどうだろうか。

受賞者へのアンケート結果を紹介!
『通訳翻訳ジャーナル』主催で行われている「誌上翻訳コンテスト」の過去の受賞者にアンケートを行った。
応募の際に工夫したことは? コンテストを活用するには?
受賞者の声をまとめてご紹介する。
〇応募時の工夫や心がけたこと〇
産業翻訳編
●対象企業の背景や、使用している用語などを十分に調べた。
●わかりやすく、読み手が企業に好印象を持つような文章を心がけた。
●出典の記事だけでなく、その元となる公的なデータも参照した。
●致命的なミスをしないように気をつけた。
出版翻訳編
●作品全文に目を通し、描かれている様子を想像しながら課題文を繰り返し読んだ。
●課題文ではカットされている部分も原文を読み、関連資料をネットなどで調べた。
●課題になった著者の作品をまとめて読んだ。
●読んだことのないジャンルの課題文だったので、有名な翻訳本を一冊読んだ。
●作者のプロフィールや、作品中で描かれる文化や背景について詳しく調べた。
●商品として買ってもらえる文章を心がけた。
●過不足のない正確な訳出と一般の読者に読みやすい文章を意識した。
●訳文を何度も読み返し、見直しをして、誤訳、抜け、誤字脱字のないことを確認した。
●コンテストのルールに外れたところがないか見直しをした。
●言葉のバランスや流れ、リズムを意識した。
●締切より早めに仕上げて寝かせてから訳を推敲し、誤訳や表現が不自然な箇所を減らした。
〇コンテストに応募する人、翻訳者をめざす人へのアドバイス〇
どんどんチャレンジしよう!
●実力を測るためにも、勉強のためにも、コンテストにはぜひ参加するとよい。
●全力で取り組めば新たな発見が得られ、評価されれば自信になる。その経験が後々、思わぬ形で生きる。
●コンテストを通じて新たなジャンルをおもしろいと思ったら、別分野のトライアルに挑戦してみるとよい。
●勉強をさぼりがちになることもあるが、「これだけは毎年応募する!」と決めているコンテストを作って、情報収集を欠かさない。
●チャンスがあれば勇気を出してチャレンジ。作品や出版社とのいい縁に巡り合えるよう、あきらめずに継続することが大切。
スキルアップにつなげよう!
●応募時に読む翻訳時に考慮すべき点や結果発表後の講評が、その後の自分の翻訳業務や学習をよくするヒントになった。
●受賞者の訳文を自分の訳文と比べたり講評を読んだりして、自宅で学習できるので活用した。
●気づいていない自分の強みに気づかせてくれた。
●力試し&勉強のモチベーションになる。応募して講評を読んだり、訳例と自分の訳を比較すると、強みや課題が見えてくる。
●「通訳翻訳ジャーナル」のコンテストはさまざまな分野の課題があるので実際に取り組むことで、それぞれの分野の基本的なルールを学ぶことができた。
結果をアピールしよう!
●翻訳会社への履歴書送付時、コンテストで受賞した訳文を添付するなど、受賞歴をアピールすべき。応募者の中から「一番よかった」と評価された事実は誇るべきことで、翻訳会社の担当者の目にとめてもらうためのアピール材料として最適だと思う。
●さまざまな媒体にプロフィールを載せ、コンテスト受賞を含めて今持っている強みを書くといいと思う。人の目につくところに載せておいたことで、忘れた頃にスカウトメールが来て、良いご縁もあった。
●翻訳者としての実務経験はなくても、コンテストの受賞歴を履歴書などに書いておくことで翻訳会社の目にとまることもあると思う。
※上記コメントは編集部が過去の「誌上翻訳コンテスト」の最優秀受賞者に依頼したアンケートの結果より
「誌上翻訳コンテスト」がきっかけでデビューした人も!
〇副賞としてゲーム関連会社の仕事現場を見学させていただく機会があり、ご縁をいただいてトライアルに挑戦。研修期間を経てフリーランス翻訳者として登録することができた。(ゲーム編・Aさん)
〇コンテストの最優秀賞者が、課題の訳書を出版できるという条件だったので、1冊訳書を出すことができた。本当にラッキーだった。(アジア文芸編・Bさん)
〇最優秀賞の副賞として紹介してもらったトライアルにパスして、初めての翻訳の仕事につながった。翻訳実績のない身としては本当にありがたかった。(ノンフィクション編・Cさん)
※上記コメントは編集部が過去の「誌上翻訳コンテスト」の最優秀受賞者に依頼したアンケートの結果より
デビュー以外にも受賞のメリットはある!
〇受賞歴として履歴書に書けるようになった。そのせいかはわからないが、書類選考で不合格になることはほとんどなく、トライアルの機会をいただいている。(ノンフィクション編・Cさん)
〇出版翻訳に挑戦する自信が得られた。当時すでに実務翻訳の仕事をしていたが、出版翻訳については、挑戦できるだけの力があるのかわからなかった。賞をいただいたことが励みとなり、挑戦し続けることができた。(ポピュラーサイエンス編・Dさん)
〇受賞前はほぼ翻訳校正者のみで、受賞後に翻訳者と名乗り始めた。バックグラウンドや翻訳者としての実績がない状態だったが、さまざまな媒体経由でスカウトメールをいただき、それが実際の案件につながっている。(医薬翻訳編・Eさん)
〇翻訳者としての実績がなかったため、アメリアのプロフィールにコンテストの受賞について書いたところ、翻訳者としてスカウトを受けた。(アメコミ編・Fさん)
〇翻訳を続けられるかどうか不安に感じていたが、コンテストで最優秀賞をいただき、翻訳を続けようと決意することができた。( ミステリー編・Gさん)
※上記コメントは編集部が過去の「誌上翻訳コンテスト」の最優秀受賞者に依頼したアンケートの結果より
コンテストでデビューできた! 仕事が増えた!
~翻訳者・通訳者インタビュー~
〇出版〇
「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」
最優秀賞 牧野美加さん
→インタビューを読む
〇出版〇
「いたばし国際絵本翻訳大賞」
大賞 吉澤珠紀さん
→インタビューを読む(現在準備中)
〇産業〇
「JAT新人翻訳者コンテスト」
英日部門第1位 北本聖月さん
→インタビューを読む(現在準備中)
〇出版〇
「新韓流文化コンテンツ翻訳コンテスト」
日本語部門大賞&文化体育観光部長官賞 山田早織さん
→インタビューを読む(現在準備中)
〇通訳〇
「JACI同時通訳グランプリ」
準グランプリ 鶴田千佳さん
→インタビューを読む(現在準備中)
コンテストで通訳者・翻訳者デビュー!
特集は『通訳翻訳ジャーナル』2025年WINTERに掲載!
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