現役通訳ガイド(全国通訳案内士)が実際にお客様をお連れしたツアーの様子や観光地の魅力を紹介します。
今回は3言語(スペイン語、ポルトガル語、英語)の全国通訳案内士である萩村昌代さんが担当します。
●2023年4月某日
沖縄本島~石垣島・竹富島ツアー
お客様:ブラジルからの団体客(約20名)
•10日間のツアー後、沖縄を追加
•東京から飛行機で移動
スペイン語、ポルトガル語、英語の全国通訳案内士の萩村昌代です。
ポルトガル語のガイドとして、ブラジルからの団体のお客様をお連れした沖縄本島~石垣島・竹富島ツアーの様子を数回に分けてお伝えします。
前回に続く2回目は、沖縄本島3日目をレポートします。
美ら海水族館のガイディングは?
●ツアーの行程
3日目
那覇市内ホテル
万座毛岬~沖縄美ら海水族館
昼:館内ビュッフェ団体食
古宇利オーシャンタワー(シェルミュージアム&展望台)
ホテル戻り
夕食:自由食
断崖絶壁の岬を楽しむ
3日目もお天気に恵まれました。2日目夜の歌謡ショーは「楽しかった」と好評で、ツアーは絶好調。
「日本ではお行儀良いと翌日は晴れるんですよ」とお客様の気持ちを盛り立てつつ、同じ女性運転手さんのバスで「万座毛岬(まんざもうみさき)」へ1時間弱で到着しました。
琉球国王の尚敬王が「万人を座するに足る」と賞賛した景勝地で、東シナ海を見ながら断崖絶壁を散策できる絶景の地です。「岬へ行く」観光は島である沖縄ならではですね。
2020年10月には「万座毛周辺活性化施設」がオープン、その代わり入場料が100円/人必要になりました。
風が強い日があるので、帽子を飛ばされないようにご注意し、建物の導線もご説明し「買い物は後にしましょう」と言って出発しました。
岬の約20分間の散策はとても清々しいです。
自然科学分野もおもしろく
本部半島の「美ら海(ちゅらうみ)水族館」へは万座毛岬から約1時間。バス駐車場から水族館入口まで15分歩きます。
ここでは「4階“配布場所①②③……”と書かれた看板の下でお客様に待っていただく。ガイドは下層階の窓口へ走って入場券を買い再び上に戻ってお客様に切符を配布する。再度お客様を下の3階入口へお連れする」という団体入場時の独特な方法に要注意です。
館内では基本的に自由行動ですが、ぜひ見て頂きたい個体(ジンベイザメなど)についてはあらかじめご説明をしておき、館内でも遂次声をかけました。
観光施設でポルトガル語のパンフがある所はとてもまれなので、動物の種類名称などは事前に調べておくこともあります。ちなみに、やはり大型の水族館である大阪の海遊館では、以前あったポルトガル語パンフをコピーしてあらかじめ配布しています。
ブラジルの方を水族館にお連れすると、自然科学分野についてはあまり詳しくない方が多いと感じます。哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類という分類さえもご存じない方が目立ちます。自国のアマゾン川に生息するピラルクも、「生きているのを見たのは初めてだ」とよく言われます。
いかに興味を持っていただけるかが課題ですので、この日も水族館訪問前に「ジンベイザメは約何メートルか?」「ピラルクは何匹いたか?」などと車内で3択クイズを行いました。
水族館で2時間の見学は長かったようで、退館後の導線をご説明しておいたら、ほとんどの方が館外の指定レストランの入口に早めに集まっていました。
こちらの店はビュッフェスタイルで、ブラジル人の大好きなアイスもあり、さらに海の景色が綺麗で好評でした。ブラジルにもサンダーアンダーギーに似た揚げ菓子があるそうです。飲み物はドリンクコーナーへ行って各人がセルフサービスで買う、食事後は片づけるなど、各店のスタイルがありますので、事前に説明をしておきます。
各施設の導線は千差万別
30分程バスを走らせ開業10周年の「古宇利(こうり)オーシャンタワー」へ。全長1,960mの古宇利大橋を渡りますが、通行料無料の橋としては日本最長だそうです。ガイディングではこうしたトリビアが大切です。
展望デッキと1万個以上の貝殻の展示が見られるこの施設は珍しい導線で、展望台に行く前に店があり、買い物を始めてしまいバラケてしまうので要注意です。[シェルミュージアムを見学後→貝殻商品店に全員入る→エレベーターAで3階へ行く/又はエレベーターBで2階へ行き、エレベーターAに乗り換え3階へ→5階展望台(最上階)へ階段で上る。帰路は階段で3階まで降りる→エレベーター(1つのみ)で1階へ降りる→別の土産店に入る→出口からバス駐車場へ移動する]。こう書くだけでもわかりにくいですね。
あるお客様に「タワー内で妻とはぐれてしまった」と言われましたが、実はこの方のみ、ワイヤレスイヤホンを使わずにいたことが東京に戻った際に分かりました。
ホテルへ戻り、各人自由食、沖縄本島最終日の夜を迎えました。国際通りは22時頃まで営業している店もあり、とても便利です。明朝は東京へ戻るグループとそれに同行するTC(=現地からの添乗員様)にお別れをして、残りのお客様達と石垣島へ向かいます。
ガイドのマニュアルは無く、研修機会も無かったこの遠い沖縄で、何とか団体を動かせたのは運が良かったかと思います。そして、観光地の説明が上手にできる事よりも、ガイド自身がお客様の仲間に入れて頂けるよう、TC(=現地からの添乗員様)やお客様の心をつかみ、お客様の好みに合った楽しい雰囲気作りをすることは大切だと改めて感じました。
●「ようこそ日本へ! 通訳ガイドのツアーレポート」
過去回の一覧はこちら
各回はこちら
第1回 長野県~地獄谷野猿公苑をご案内~
3言語(スペイン語、ポルトガル語、英語)の全国通訳案内士。横浜生まれ横浜育ち。2006年より稼動の中堅ガイド。団体、インセンティブ、FIT等、北海道から沖縄離島まで全国を回る。
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