話題の新作映画を、字幕または吹替翻訳を手がけた映像翻訳者の方が紹介します!
『ソウルの春』 2024年8月23日(金)公開
『ソウルの春』
公式Webサイト
監督:キム・ソンス
脚本:ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン、キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク
2023年/韓国/韓国語/142分/シネマスコープ/5.1ch
原題:서울의 봄(英題:12.12: THE DAY)/字幕翻訳:福留友子/字幕監修:秋月望/G
配給:クロックワークス
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*8/23(金)新宿バルト9ほか全国公開
【訳者が語る】
スクリーンに映し出されるのは一面の闇。そして銃声、怒号が響き渡る。明るさや華やかさとは無縁で、しかも韓国人なら誰もが、その結末を知っているにもかかわらず約1300万人もの観客が本作を観に劇場に足を運んだ。その魅力はどこにあるのだろうか。
本作は、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の暗殺後、いわゆる「ソウルの春」と呼ばれる民主化ムードが高まる中、1979年12月12日に全斗煥(チョン・ドゥファン)を中心とした軍内部の私的組織ハナ会が起こした粛軍クーデターを、フィクションを交えて描いている。
その魅力の一つは何と言っても名優ファン・ジョンミン(保安司令官、チョン・ドゥグアン役)とチョン・ウソン(首都警備司令官、イ・テシン役)の熱演だ。野心を果たすためにクーデターを決行する男と、正義感により、それを阻止しようと奔走する男。この作品全体に緊迫感をもたらし、またストーリーを牽引する2人の演技に誰もが圧倒されるはずだ。
さらに、複雑な現実を単純化しすぎているきらいはあるが、明快な対立軸に沿ってストーリーが展開していくのもこの映画の魅力だ。思わず特定の登場人物に肩入れしてしまい、結末はわかっていても危機的な状況を描いたシーンでは思わず手に汗握ってしまう。
現在、空前の韓国エンタメブームで隣国の文化に興味を抱く人々が増えていて非常に喜ばしいが、さほど遠くはない過去の歴史を知れば、さらに隣国への理解が深まるのではないだろうか。この作品がそのきっかけになれば、これほど翻訳者冥利に尽きることはない。ぜひ劇場でご覧いただきたい。
※ 通訳翻訳ジャーナル2024 AUTUMNより転載
韓日映像翻訳者(字幕・吹替)。重厚な時代劇・政治劇から軽快なコメディーまで幅広いジャンルの作品をこなす。代表作は劇場公開作品『冬の小鳥』『ベテラン』『エクストリーム・ジョブ』『82年生まれ、キム・ジヨン』『KCIA南山の部長たち』『ハント』『THE WITCH/魔女-増殖-』など。