話題の新作映画を、字幕または吹替翻訳を手がけた映像翻訳者の方が紹介します!
『きっと、それは愛じゃない』 2023年12月15日全国公開
『きっと、それは愛じゃない』
公式Webサイト
監督:シェカール・カプール
出演:リリー・ジェームズ、シャザド・ラティフ、シャバナ・アズミ、エマ・トンプソン、サジャル・アリー
イギリス/2022年/英語・ウルドゥー語/109分
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
© 2022 STUDIOCANAL SAS. ALL RIGHTS RESERVED.
*12/15(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
ロンドンっ子でドキュメンタリー映画監督のゾーイ(リリー・ジェームズ)は、幼なじみのカズ(シャザド・ラティフ)が見合いの設定を両親に頼んだと聞き、彼の婚活ストーリーを映画にすることに。
カズはパキスタン人のムスリムで、家庭観や信仰する宗教など条件を整えて見合い結婚すれば愛は一緒に暮らすうちに育つと言います。
一方ゾーイは結婚には愛が必要だと言い、マッチングアプリで出会いを重ねては失敗してばかり。カッコ悪い部分も隠さずもがく、まさに“等身大の女性”ゾーイには、つい感情移入してしまうことでしょう。
想像の斜め上をいく展開がおもしろく、また明るいトーンの中に社会的な問題が巧みに組み込まれている骨太な作品です。人種問題や、ダイバーシティを重視するあまりにバカらしい結論に至りがちな社会の問題など、“今”が詰まっています。でも押しつけがましさは全くないのです。笑いながら見ているうちに気づけば考えさせられているという点がこの作品のすばらしさのひとつだと思います。
ゾーイの母親(エマ・トンプソン)が実に自由奔放で突き抜けたキャラなのも楽しく、それでいてホロリとさせられるシーンもあり、コメディーとしても極上の作品です。物語の主軸以外の部分では、2人組の映画プロデューサーが“ああ、こういう人って業界にいそう~”とデフォルメされた感じでおもしろいので注目していただけたらなと思います。
ラブコメ好きのあなたにも、さまざまな結婚観に触れてみたいあなたにも、異国の華やかな結婚式を見てみたいあなたにも、社会問題を考えてみたいあなたにも、ただただ笑いたいだけのあなたにも、心からお勧めする1本です。ぜひ劇場でご覧ください!
※ 通訳翻訳ジャーナル2024年WINTERより転載
映像翻訳者。劇場公開作品、配信やDVD/BD作品の字幕・吹替翻訳を手がける。担当作品は『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』『クーリエ:最高機密の運び屋』『ラーヤと龍の王国』『ブラックパンサー』『メッセ―ジ』(字幕)、『ジニー&ジョージア』『おちゃのじかんにきたとら』『新少林寺』(吹替)など多数。