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2025.04.07 UP

登録販売者試験(医薬品)に合格
翻訳者インタビュー

登録販売者試験(医薬品)に合格 <br>翻訳者インタビュー
※『通訳翻訳ジャーナル』SUMMER 2024より転載。

語学や、通訳・翻訳に特化した資格以外にも、専門分野に関する資格を持っているフリーランス翻訳者は多い。資格を取得していることで、分野に関する深い知識を持っていることが示せるといったメリットもある。実際に試験に合格したフリーランス翻訳者の体験談を通して、専門分野の資格を持っていることのメリットや、資格を取得したい人へのアドバイスなどを紹介する。

通訳・翻訳者
通訳・翻訳者Bさん

フランスへ語学留学をし、帰国後在日の外国政府機関に採用され、仏企業の日本進出支援業務に約28年間従事。業務の一環として翻訳や通訳に携わる。退職後、医薬品登録販売者と医科医療事務管理士の資格を取得し、一般用医薬品のカウンセリング・販売のオペレーターとして勤務。同時に副業で通訳翻訳業を始める。現在は英語・仏語でフリーランスの通訳・翻訳者として稼働。

〇合格した試験
登録販売者試験(医薬品)
〇翻訳の専門分野
メディカル関連
〇翻訳歴 
3年
〇試験合格年
2019年

知的好奇心から取得した資格が専門分野の決め手に

フランス企業の日本進出支援業務に従事し、消費財分野をはじめ、ライフサイエンス、ヘルスケア分野(バイオ、医療機器、アニマルヘルスなど)を担当していたBさん。長年フランス語を使う職場で働き、業務の一環としてフランス語の翻訳や通訳を経験していたため、退職後も語学力を仕事につなげたいと考えていた。仕事を辞めた後、フランス語のTQE®(※)に挑戦し合格。これを機に、通訳・翻訳エージェントへの登録活動をはじめたものの、フランス語の需要がもともと少ないうえにコロナ禍も重なり、1〜2年は仕事のチャンスがほとんどなかった。

「コロナが落ち着き、少しずつ案件をいただく機会が増えました。ただ、フランス語だけで仕事を得るのは難しいと感じていました」

Bさんが登録販売者の資格を取得したのは仕事を退職した後で、前職でメディカル分野を担当し興味を持ったことや、薬についてもっと詳しくなりたいといった知的好奇心が理由だ。資格を取得した当時、将来的に通訳や翻訳の仕事をしたいという思いはあったが、専門分野をもつことを念頭に置いていたわけではなかった。しかし、いざフリーランスとして稼働しようとしたときに、資格取得のための勉強が役立つこととなった。フランス語以外で仕事のチャンスを広げるため、新しい分野を開拓したほうがいいと考えたときに思いついたのが、これまでの経緯から一番親和性のあるメディカル翻訳だったのだ。

「メディカル関連の翻訳を専門にしようと、医学・薬学の翻訳講座をいくつか受講することにしました。その際に資格取得のために学んだ基礎知識はかなり役立ち、学習意欲を高めるモチベーションにもなりました。試験勉強で、人体の各臓器の名称、仕組みや働き、薬の作用、検査用語、カルテに記載される医師のコメントなどを、日本語で既習していたおかげで英語での学習をする際もなじみやすかったです」

※ サン・フレア アカデミーが実施する実務レベルの翻訳力を認定する資格試験

医療通訳の仕事も視野に入れる

講座終了後トライアルにも挑戦し、少しずつメディカル関連分野で英日翻訳のオファーがくるようになった。また、現在は医療通訳にも挑戦したいと考えており、「ICM認定医療通訳士」の認定をめざしている。

「近年の訪日・在留外国人の増加にともない、医療知識を備えた通訳者が求められていると聞いています。医療通訳は、通訳スキルと専門知識のほかにも、この業務ならではの倫理観や対話におけるコミュニケーション力を身につけていることが大事なので、実務経験を積み重ねて力を培っていきたいです」

新たな目標もでき、習得した知識を生かせる分野で活躍している。

資格を取得しようとしている人へADVICE📣

個人的な好奇心がきっかけで資格を取得しましたが、資格を取得していたことがのちに自分がめざす分野の決め手になり、学習する際の予備知識やモチベーションにつながったといえます。メディカル分野に興味がある方にとっては、基本的知識を習得するという意味で、資格の取得が一つの選択肢になるのではないかと思います。

登録販売者試験とは

厚生労働省が発表するガイドラインをもとに、都道府県ごとに実施される試験。「医薬品に共通する特性と基本的な知識」、「人体の働きと医薬品」、「主な医薬品とその作用」などについて問われる。一般用医薬品の第2類、第3類の販売をすることができる登録販売者になるには、試験合格後に都道府県に販売従事登録をする必要がある。

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