応用情報技術者試験に合格<br>翻訳者インタビュー
※『通訳翻訳ジャーナル』SUMMER 2024より転載。

語学や、通訳・翻訳に特化した資格以外にも、専門分野に関する資格を持っているフリーランス翻訳者は多い。資格を取得していることで、分野に関する深い知識を持っていることが示せるといったメリットもある。実際に試験に合格したフリーランス翻訳者の体験談を通して、専門分野の資格を持っていることのメリットや、資格を取得したい人へのアドバイスなどを紹介する。

翻訳者
翻訳者Aさん

大学(英米語学科)卒業後、翻訳部を持つシステム開発会社に入社し、システム開発部門に5年程度、翻訳部に3年程度勤務。その後、フリーランスの翻訳者に。

〇合格した試験
応用情報技術者試験
〇翻訳の専門分野
IT、ビジネス
〇翻訳歴 
15年
〇試験合格年
2020年

資格取得を目標にしたことで
学習を効率的に進められた

新卒で翻訳部を持つシステム開発会社に入社したAさん。当初は入社してすぐ翻訳部に配属予定だったが、会社の事情でシステム部門に配属されることになり、システム開発に携わることに。

「システム開発について学ぶのは初めてでしたが、自分に合っており、知識ゼロからの研修もその後の実務も、興味を持って取り組むことができました」

数年後、翻訳部に配属され実務翻訳の基本を学び、その後、IT専門のフリーランス翻訳者へと転身。翻訳の求人ではトライアル前に書類審査があることが多いため、フリーランスとして働く上で、履歴書に記載できる資格が欲しいと考えたという。

「応用情報技術者試験に合格すれば履歴書で好印象を与えられると思い、受験することにしました。また、私の専門はIT分野ですが、実際に翻訳する内容はさまざまです。『IT知識』が重要なのは確かですが、いざ学ぶとなると、あまりに漠然としていて何をすればよいのか迷ってしまいます。その点、応用情報技術者試験は重要なことを幅広くカバーするように作られているので、資格取得を目標にしたことで、学習が進めやすくなりました」

選択問題対策として『キタミ式イラストIT塾』(技術評論社)、記述問題対策として『応用情報技術者 午後問題の重点対策』(アイテック)をそれぞれ購入し、学習に使用。テキストを読む際には、内容を理解すると同時に「これはIT業界特有の言い回しでは?」「このカタカナ語は和製英語かも?」など、翻訳者の視点で、業界の中で普段使われている日本語に触れるということを意識した。過去問はWebサイトで公開されており、スマホやタブレットからもアクセスできるので、隙間時間を有効活用して勉強を進めた。

ソースクライアントに直接応募も

勉強を始めて約1年後、2020年に試験に合格。資格を取得したことで以前よりも自信を持って求人に応募できるようになり、翻訳会社だけでなく、IT企業が直接出している翻訳職の求人にも応募しやすくなったという。

「IT企業にとっては、特別高い価値の資格ではないかもしれませんが、知名度はあると思います。資格を持っていることで、『語学だけでなく専門知識も勉強している』という点をアピールできます。また、IT企業の中で仕事をする際は、周りに翻訳関係の人がいないケースも多く、不安を感じることがあります。そうした場合も『資格を持っているから大丈夫』と自分に言い聞かせて、エンジニアの方々とコミュニケーションを取るようにしています」

翻訳とシステム開発の仕事には通ずるところもあり、この二つの組み合わせが気に入っているというAさん。今後も、語学と専門知識の両方を生かして仕事に向き合っていきたいと考えている。

資格を取得しようとしている人へADVICE📣

翻訳そのものについては、イベントや講習会などでさまざまな情報が入ってきますが、専門分野については、知識を得るのがなかなか難しいように感じます。そのような場合も、資格という具体的な目標があると勉強がしやすくなります。まずは、資格を取ることでその分野の基礎を学び、そこから自分の仕事や興味に合わせて知識を広げていければよいと思います。

情報処理技術者試験とは

経済産業省が認定し、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験で、情報技術の背景として知るべき原理や基礎となる知識・技能について幅広く総合的に評価する。情報システムを構築、運用する技術者からIT利用者まで、ITに関わる全ての人が目的に応じて受験することができる。「応用情報技術者試験」は、この試験の内の一つで、「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」が対象とされる。入門者向けは「ITパスポート試験」。

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