英語のみならず、独語、仏語、西語、伊語、中国語を独学で身につけ、多言語での読書を楽しんでいるという作家・翻訳家の宮崎伸治さんに、多言語学習の魅力を余すところなく語っていただきます!
中国語は漢字の知識が生かせる!
漢字圏の人間は「やらなきゃ損」な言語
日本人にとっての中国語の魅力は、なんといっても使われている文字(つまり漢字)を見れば意味が推測できることです。
ご存じのとおり、漢字のように一つ一つの言葉に意味がある文字を表意文字といいますが、一口に表意文字といっても漢字以外の文字だったら日本人にはわかりづらいので、それほど興味を持てなかったかもしれません。
例えば、漢字以外の表意文字には、ヒエログリフ、楔形文字、インダス文字、トンパ文字などがありますが、いくら表意文字だとはいえ、わかりやすくはないですよね。
しかし漢字は違います。日本人は子供の頃から何百回も漢字のテストを受けて来ているので、その知識を埋もれたままにするにはもったいなさ過ぎると思うのです。逆に言えば、中国語を楽しんだほうが何倍も人生が楽しめるといったほうが適切かもしれません。
多言語の勉強をしている私はよくいろいろな人から「どの言語が一番簡単?」と訊かれるのですが、リーディングに関して言えば、断然中国語です。理由は単純で、漢字から意味が推測できるからです。いや、ホント、1年勉強していれば、中級レベルの本でも読めるようになります。こんな芸当、漢字圏の人間以外はまずできないことでしょう。韓国語同様、“やらなきゃ損”の代表選手といっていい言語だと思いますね。
中国語単語の意味を当ててみよう!
かくいう私、53歳のある日「熊」と「猫」を合体した「熊猫」が「パンダ」という意味だとわかり、中国語に一生を捧げる覚悟ができたというのは以前お話ししたとおりです。
そこで今回は、漢字から意味が透けて見えて「あ~、なるほどね」と思える中国語を紹介してみましょう。連想クイズだと思って考えてみてください。それぞれの中国語は日本語では何に相当するでしょうか。
「海馬」
海の馬? ん? 海の中に住んでいる馬ということかな? “馬”というのは比喩で言っているのだろうから、馬のような姿をしているものだろう。とすると…。そう、答えは「タツノオトシゴ」。
なるほどタツノオトシゴは海の中に生息している馬のような姿をしたものですね。
「巻紙」
紙が巻いてあるの? 虎の巻? なんだろう。答えは「トイレットペーパー」。
まあ、たしかに紙が巻いてあるから理にかなっています。でも、じゃあ「トイレ」の中国語相当語「厠所」と「ペーパー」の中国語相当語「紙」を合体させて作った「厠所紙」といったら中国人に通じるか試したら、「厠紙」と直されました。
「口水」
口の水? マウスウオッシュか? いや、それだったら「水」は使わないだろう。ではなんだろう?
答えは「つば(唾)」でした。
「変色蛇」
変色する蛇? そんな蛇っていたっけ? いるんですよ、中国には。それは日本語でいう「カメレオン」。なるほど、よくそんな言葉思いついたなと感心してしまいます。
「鉄人三項」
え~、戦隊ヒーローの名前かな、と思ってしまう人もいかもしれませんが、答えは「トライアスロン」。水泳とマラソンと自転車の耐久レースに耐えられるのはたしかに「鉄人」しかいないので、納得。
「袋鼠」
袋の鼠? え~なんだろう? 答えは「カンガルー」。中国語からはなかなか日本語がでてこなくても、そういえば、なるほど! と納得するので、すぐに覚えられます。
「蛙泳」
「蛙泳」は「平泳ぎ」という意味。なるほど蛙のような泳ぎ方をしますから納得できます。ちなみにイタリア語でも「nuoto a rana」と、平泳ぎには「rana(蛙)」が入っています。
どうです、中国語っておもしろそうでしょう。そう思ったあなた、早速、中国語の勉強を始めてみませんか。
なお、私が愛用している単語集は『暮らしの中国語単語10000』(佐藤正透 著、語研)です。この種の中国語単語集を一冊買って、友達同士で、「この中国語の意味はな~んだ?」ってクイズを出し合うのも一つの趣味としておもしろいと思うのですよね。
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著書に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)などがある。ひろゆき氏など多くのコメンテーターに対して翻訳業界の現状を語る番組に出演した際の動画が無料で視聴できる。https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p3575(ABEMA TV)。また「大竹まことのゴールデンラジオ」に出演したときのようすが、次のリンク先のページの「再生」ボタンを押すことで無料で聴くことができる。http://www.joqr.co.jp/blog/main/2021/03/110.html
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