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2023.10.20 UP

第24回 フランス語の綴り、どうなってるのよ?

第24回 フランス語の綴り、どうなってるのよ?

英語のみならず、独語、仏語、西語、伊語、中国語を独学で身につけ、多言語での読書を楽しんでいるという作家・翻訳家の宮崎伸治さんに、多言語学習の魅力を余すところなく語っていただきます!

フランス語への苦手意識の理由とは…

フランス語の綴りに関するビックリ話をご紹介しましょう。フランス語未修者の方、どうぞビックリしてください!(笑)

フランス語の動詞は主語によってコロコロと語尾が変化し、例えば、「歌う」に相当する単語chanterは主語によって、chantechanteschantechantonschantezchantentと変化します。

(そんなことではビックリしないよ。語尾が変化するのって、他の言語にもよくあることだよ)っていうあなた。ちょっと待ってください。それはそうなのですが、じつはフランス語にはややっこしいことがあるのです。なんとchanteもchantesもchantentも発音が同じなのです。どれも日本語で書くとすれば「シャントゥ」なのです。これって、信じられますか。


私は英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、中国語、韓国語、ロシア語とさまざまな外国語を学び続けているのですが、どうもフランス語だけは、苦手意識が払拭できないままです。レベル的にはフランス語もスペイン語もイタリア語もドイツ語も中国語も中級レベルに達していると自負しているのですが、苦手だと感じるのはフランス語が断然トップ。いや、ホント、フランス語は難しい!
私がそう思う理由は、いつまで経っても初級レベルの単語でさえ、そのスペルが正確に覚えられないからです。

冒頭でご説明したとおり、chanteもchantesもchantentも発音が同じです。ですから「シャントゥ」という音声が聞こえてきた場合、それがchanteなのかchantesなのかchantentなのかは主語から判断しなければならないのですが、それが難しい。

それから、語尾がzで終わる場合の変化形もなかなか馴染めません。
chantezというスペルを見たら、日本人の多くは「シャンテズ」って読みたくなると思うのですが、最後のzは読みませんので「シャンテ」と読むのです。先ほど出てきた「シャントゥ」とも微妙に違います。「いったい、なぜ!?」って毎回思うのですが、それがフランス語。文句を言ってもしかたがありません。ずっと完全独学で勉強してきた私は間違いを指摘されることがなかったので、ずっと「シャンテズ」と心の中で読んでいました。当然、「シャンテ」という音声が流れてきたら、「あれ、今のなんだっけ?」となります。

文字を覚えるのにもひと苦労

このようにフランス語では発音とスペルが一致しないという点がやっかいなのですが、それ以外にもやっかいなことがあります。それが英語にないフランス語独特の文字です。具体的には次のようなものがあります。

é、è、ê、à、â、î、ù、û、ô、ç、ë、ï 

他のヨーロッパの言語にも「英語のアルファベットには無い独特な文字」がある言語はあります。しかしそれがちょっと多いのがフランス語。しかも、é、èの発音も微妙に違っており、その違いをうまく言えるかといえば…(冷や汗)。これはなかなか独学では難しいことです。そんな調子ですからフランス語を書いているとき、ふと、「あれ、このeには、アクサン記号がついていたかな、付いていたとしたら、é、è、êのどれだったかな?」と常に頭を悩ませることになります。

フランス人はどうやって正しい綴りを身につけたのかなと疑問に思う方もおられると思いますが、じつはフランス人は学校の授業でディクテ(正しい綴りを覚えるための練習ともいえるもの)をやって(というか、やらされて)身につけているのです。フランス語のネイティブの先生に訊いてみたら、「フランス人だって綴りには苦労していますよ。国語の授業のたびに練習されられましたよ」と答えてくれました。まあ、それはそうですよね。日本人とて生まれたときから漢字が書けるわけではなく、漢字のテストを山ほど受けさせられながら身につけているわけですから。それと同じようなものです。

最後にもう一点。フランス語にはこれだけのハードルがあるのに、さらにもう一つハードルがあります。フランス語をパソコン入力することです。é、è、ê、à、â、î、ù、û、ô、ç、ë、ï…って文字、どこをどう打てば出てくるのかが分りにくいのです。いろいろ調べたのに私はいまだに悪戦苦闘しています。じつは今も手入力ではなく、ネット上にあるものをコピーアンドペーストして使っているのです、てへへ(笑)。

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作家・翻訳家 宮崎伸治
作家・翻訳家 宮崎伸治Shinji Miyazaki

著書に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)などがある。ひろゆき氏など多くのコメンテーターに対して翻訳業界の現状を語る番組に出演した際の動画が無料で視聴できる。https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p3575(ABEMA TV)。また「大竹まことのゴールデンラジオ」に出演したときのようすが、次のリンク先のページの「再生」ボタンを押すことで無料で聴くことができる。http://www.joqr.co.jp/blog/main/2021/03/110.html