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2025.03.05 UP

第13回 日本eスポーツアワード2024「功労賞」受賞と今後の連載について

第13回 日本eスポーツアワード2024「功労賞」受賞と今後の連載について

韓国でeスポーツに魅了され、ライターとして取材・執筆活動を行うほか、eスポーツ関連の韓日通訳者・翻訳者としても活躍されているスイニャンさん。韓国と日本のeスポーツ業界の状況と、まだ専門とする人が少ないeスポーツの通訳・翻訳の仕事について語っていただきます!
(*毎月末~翌月初旬ごろ更新)

日本eスポーツアワード「功労賞」を受賞!

前回予告したとおり、今回は私の近況を中心にeスポーツ業界の通訳周りの動きなどをお伝えできればと思います。

実は私、「日本eスポーツアワード 2024」という祭典で賞をいただきました。昨年から始まったこのアワードは、日本国内のeスポーツ業界における功績を表彰する(一社)日本eスポーツ連合(Japan esports Union:JeSU)主催の祭典です。さまざまな部門が設けられているなかの「功労賞」部門において、個人的に昔からお世話になっている犬飼博士氏、そして格闘ゲーム界の生ける伝説・ウメハラ選手とともに私スイニャンが受賞する運びとなりました。

2025年1月15日にパシフィコ横浜国立大ホールにて表彰式が開催され、私も現地に参加して参りました。当日の生配信のアーカイブもありますので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。

(日本eスポーツアワード2024:スイニャンさんの受賞の様子は2:31:51~

「功労賞」受賞の決め手は「長年」の功績

この連載の第1回でも詳しく触れていますが、私はライター業と通訳業をメインに長年eスポーツに携わってきました。そういった活動を評価していただき、このような素晴らしい賞をいただくことができたのだと思います。今回、受賞の大きな決め手は「長年」の功績という部分にあったようです。

私とともに功労賞を受賞されたウメハラ選手は「お金にならない時期に熱意を持って続けていたことが評価された」というような趣旨のことをおっしゃっていましたが、確かに今回受賞した3名は、黎明期にものすごい情熱を向けて活動していた点が共通していると思います。

私の場合は活動のなかに通訳も含まれるということで、いわゆる「技術職を無料で引き受けることの是非」について、少しだけ触れておきます。今でこそeスポーツの通訳・翻訳は立派なお仕事になりましたが、当時はそんなお仕事自体が存在しなかったのです。私自身も当時の自分の活動を趣味の範疇と捉えており、自分の語学力が大好きなeスポーツの盛り上げに一役買えるならという気持ちでした。今なら同業者のことも考えてなるべく無償では引き受けないようにしていますが、黎明期とは得てしてそういうものだとご理解いただけると幸いです。

日本eスポーツアワード「功労賞」「功労賞」
日本eスポーツアワード2024 授賞式の様子(©︎JAPAN eSPORTS AWARDS)

私の近況とそこから読み取るeスポーツ通訳事情

ここからは現状をお伝えするという意味で私の個人的なお話に少しだけ触れさせてください。実はこれまでメインでやっていた通訳のお仕事の機会が、今年からかなり減ってしまいました。eスポーツ界の状況は目まぐるしく変わっているので、いつかこうなるかもしれないと覚悟してはいたのですが、いざ直面してみるとなかなか厳しいものですね。

この事態から読み取れる最近のeスポーツ界の通訳事情として、専門の通訳者を雇うよりも他業務と兼務して通訳を行うパターンが多くなってきているように見受けられます。特殊な分野であるがゆえ、一般の通訳会社に委託しても思うような成果があがらないこともしばしば。それならばいっそのこと通訳の技術よりも、専門知識に精通しているかつ多少の語学力を持ち合わせている人を雇おうという流れが増えてきているような気がします。

こういった流れを把握しつつも私がフリーランスにこだわる理由は、その方が通訳としてのお仕事の幅が広がるからです。特定のチームやゲーム会社に所属するとそこのライバルチームやライバル会社のお仕事が引き受けにくくなるというのは、簡単に想像がつくと思います。eスポーツ業界で語学力を生かして働きたいという人は、自分がどんな立ち位置で仕事をしたいかということをよく考える必要があるでしょう。

今後の連載内容について、新企画も検討中

ここまでお話してきたとおり、個人的な環境の変化もあり、最近はこの連載の今後の方針について少し悩んでいました。タイトルが「奮闘記」ということもあってなんとなく今頑張っているお仕事について伝え続けるイメージがあり、それが今までより減ってしまったことで「このまま同じスタンスで続けられるだろうか」という不安があったんです。

そこで先日、担当者の方と直接お会いしてご相談させていただいたところ、結論としては今と変わらず連載を続けさせていただくことになりました。よく考えてみれば、eスポーツ通訳のお仕事が完全にゼロになったわけではないですし、正直まだまだ書ききれていないことも沢山あるんです。今後eスポーツ通訳に携わる方々のお役に立てることもあると思いますので、引き続きこれまで培った経験や知識をもとに読みものとしてもおもしろく、時には語学面でも学びのあるものにしていきたいと考えております。

それに加えて、今後はeスポーツ業界で語学を生かして活躍している色々な方に登場していただくような内容も検討しております。まだまだ企画中ではありますが、是非お楽しみに!

 

さて、来月はいつも通りのコラムに戻ります。次回は、韓国のとあるeスポーツ事情と日本との関係にフォーカスを当ててお話していく予定です。

★スイニャンさんの連載一覧はこちら!

スイニャン
スイニャン韓日通訳者・ゲーム(eスポーツ)ライター

留学を含めた5年間の韓国在住時にeスポーツと出会い、『StarCraft』プロゲーマーの追っかけとなる。帰国後、2008年から「スイニャン」のペンネームで取材・執筆活動を開始。2017年からは『League of Legends』の国内プロリーグ「LJL」で韓国人選手のインタビュー通訳としてネット配信の生放送に出演。近年は『VALORANT』や『PUBG』などのeスポーツ大会でも通訳をこなしている。ただし自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ「観戦勢」。