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2023.07.03 UP

全国通訳案内士試験 合格体験記
「50代から語学の勉強を始めた」

全国通訳案内士試験 合格体験記<br>「50代から語学の勉強を始めた」
※『通訳者・翻訳者になる本2023』より一部修正の上、転載

通訳ガイドには、何歳からでもチャレンジできる

翻訳者や通訳者には、スキルを証明するような公的な資格はないが、通訳ガイド(通訳案内士)には国家試験である「全国通訳案内士試験」が存在することが特徴のひとつ。試験に合格していない人でも通訳ガイドの仕事はできるが、「全国通訳案内士」と名乗るには試験の合格が必要になる。
年に1回実施される「全国通訳案内士試験」は、語学系唯一の国家試験・国家資格であり、通訳ガイドをめざす人はもちろん、語学力を証明するライセンスとして、またキャリアアップのためにチャレンジする人も多い。
「全国通訳案内士試験」に合格した皆さんの合格までのヒストリーを紹介。試験にチャレンジしたいと思う人はぜひ参考にしよう。
全国通訳案内士試験の詳細はこちら

2020 年度 試験合格 渡邉修三さんの場合

英語1次免除で社会を重点的に学習
2次で不合格も再チャレンジ

Q.受験の動機は?

定年後を見据え、インバウンド関連の仕事に興味を持ち、50代半ばから語学の勉強を始めました。どうにかTOEICで900 点超えができたタイミングで、会社の同僚から、「全国通訳案内士」の英語の1次試験がTOEIC900 点以上で免除になると聞いて、この資格に興味を持ちました。また、当時、娘が受験生で、子どもと一緒に日本史や一般常識などを学べること、親が勉強する姿を見せるのはよい影響を与えるのではないかとも思いました。

Q.試験対策はいつごろから どのように?

2019年2月頃から市販テキストで勉強を始めましたが、過去問をみると日本史や一般常識では、テキストにない難問、奇問が出題されており、どう進めるべきか悩みました。たまたま、ネットで通訳案内士試験対策スクール「ESDIC英語能力開発アカデミー」のメール講座の存在を知り、地理、日本史、一般常識、通訳案内実務の4科目を申し込み、開講後は毎週送られてくるメールのテーマに合わせて勉強を進めました。結果、TOEICで免除の英語とあわせて、1次試験に無事合格できました。

2次試験もESDICの対策講座を受講し、大いに得るものがありましたが、本番で舞い上がってしまい、結果は不合格。翌年の2020年はコロナ禍で試験勉強の継続を悩みましたが、最後までやり遂げようと思い直しました。ただ、前年のTOEIC免除が期間切れとなり、再度、TOEICを受験するところからの仕切り直しでした。

私は1回目、2回目ともTOEICで英語一次試験の免除をとりましたが、今思うと本試験を受験したほうがよかったかなと思うこともあります。1次対策で勉強する特有の単語や英作文は、結局、2次対策としてやる必要があること、また私のように1次が英語免除で2次で不合格となると、翌年、免除資格を取り直す必要がありますが、本試験に合格なら翌年も確実に免除になるからです。

Q.一次の社会科試験の対策は?

日本史は、ESDICのメール講座を中心に、山川出版の教科書や図録、娘の受験用の参考書「日本史実況中継」などを用いて、必要事項をノートにまとめて学習しました。難問奇問に惑わされずに、王道の勉強をすることが肝要だと思います。

地理は、インスタ映えスポットやネットで話題のエリアも出題されるように思います。「旅地図日本」や「旅行業務取扱管理者」受験用の対策本などを活用しました。一般常識は思いもしないテーマが出題されるなど対策がしずらい科目ですが、こちらもまずはベーシックな頻出内容をきちんと抑えていくのが結局は近道だと思います。 

Q.二次の口述試験の対策は?

私にとっては2次が最大の難関でしたので、ESDICの2次試験対策講座を受講しました。2次講座は和文英訳とプレゼンテーションについて事前にプリントが配られ、それを予習した上で授業に臨むという形式。初年度は、「消費税増税」という講座で学んだテーマがズバリ出題されたのに、緊張もあってその後の質疑等がしどろもどろになり、結局不合格でした。

翌年は夏までは英会話などで学び、9月から再びESDICの2次講座を受講しました。コロナ禍でリモート授業でしたが、通学の時間を節約でき、私にとっては良かったです。二度目の二次試験のテーマは「リモート飲み会」と、これまたESDICの講座で学んだものに近いテーマでした。ネイティブの面接官の声がマスクで籠り気味でよく聞き取れず苦戦しましたが、なんとか合格できました。

Q.ずばり合格の秘訣は?

とにかくゲストの役に立ちたい、そのためにできることは何でもするという姿勢を前面に出したことに尽きると思います。これはESDICの2次講座で最後まで念を押されたことでしたが、たしかに振り返れば、初回の試験時は、流ちょうなやりとりをすることばかりに気をとられ、ガイドとしてのホスピタリティに欠けていたのが敗因だったと思います。

Q.現在のかかわりは?今後は?

勉強を始めた当初は、自分がガイドをするイメージはあまり持っていませんでしたが、2年間勉強を続けて、自ら通訳ガイドをやりたいという気持ちが強くなりました。定年退職が近づいてきましたので、その時がきたら本格的に活動を始めたいと考えています。21年7月には英検1級にも合格しました。新人ガイドがすぐにやっていけるような甘い世界だとは思いませんが、研鑽を続けていきたいと思っています。

これから全国通訳案内士試験を受験する方へ―

2次試験は、試験というよりも就職面接ぐらいの気概で臨んだほうがよいと思います。単に聞かれたことに適切に答えられるかでなく、相手のニーズや要望をどれだけくみ取って応えられるかといった積極的な姿勢や熱意、ホスピタリティが大いに試されていると、二度の2次試験を通じて実感したからです。

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渡邉修三さん
渡邉修三さんShuzo Watanabe

大学卒業後、一般企業に勤務。定年退職後を見据えて英語の勉強を開始。2020年度の通訳案内士試験に2度目のチャレンジで合格。