話題の新作映画を、字幕または吹替翻訳を手がけた映像翻訳者が紹介します!
『ぼくらの居場所』2025年11月7日(金)公開

『ぼくらの居場所』
公式Webサイト
監督:シャシャ・ナカイ、リッチ・ウィリアムソン
出演:リアム・ディアス、エッセンス・フォックス、アンナ・クレア・ベイテル 他
原題:Scarborough|カナダ|2021年|138分|カラー|英語|スコープ|5.1ch|G
後援:カナダ大使館
配給・宣伝:カルチュアルライフ
©2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
*11/7(金)新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
【訳者が語る】
本作は、長年ドキュメンタリーを撮り続けてきたシャシャ・ナカイとリッチ・ウィリアムソンによる、初の劇映画です。原作は、カナダの作家キャサリン・エルナンデスが自身の実体験をもとに執筆したデビュー小説『Scarborough』(未訳)。エルナンデス自ら、監督2人に企画を持ち込み、制作がスタートしました。
舞台となるカナダ・トロント東部に位置するスカボローは、低所得者や移民が多く暮らす地域で、住民の半数以上が外国にルーツを持っています。そこに暮らす3人の子どもたちが、本作の主人公です。父親の暴力、貧困、ネグレクトなど、それぞれにさまざまな問題を抱え、家庭環境は決して恵まれているとは言えません。そんな彼らが、ソーシャルワーカーのヒナが運営する教育センターで出会い、ささやかな絆を育んでいきます。
注目していただきたいのが本作でスクリーンデビューを果たした3人の子どもたち。子どもらしい無邪気で自然な演技はもちろん、見る者の心を揺さぶる繊細な演技には目を見張るものがあります。時に2人だけのクルーで撮影されたという少数精鋭の撮影環境や、ドキュメンタリー出身監督ならではのアプローチが、彼らの見事な演技を引き出す助けとなったことは間違いありません。即興で撮影されたシーンも多く、役者たちのリアルなやり取りも印象的です。そのアドリブ感やテンポ感を損なわないよう気を配りながら翻訳を進めました。
世界中で分断が進む今だからこそ、ご覧いただきたい作品です。「他者とどう生きていくのか」。その答えを、ぜひ劇場で探していただければ幸いです。
※ 通訳翻訳ジャーナル2026 WINTERより転載

映像翻訳者。婚礼写真の会社でデザイナーとして勤務後、留学のため渡豪。帰国後、映像翻訳スクールで翻訳を学び、卒業後にカルチュアルライフ株式会社に入社。現在、外国映画の買付、劇場営業、字幕翻訳などを担当する。字幕翻訳作品に映画『マルティネス』などがある。