需要急増中の音声解説の作り手「ディスクライバー」を養成するための講座が2024年4月から始まります。映像翻訳者として20年以上のキャリアがあり、現在「ディスクライバー」スキルも追加習得中の古瀬由紀子さんに、音声解説の難しさややりがいについて聞きました。
*「ディスクライバー」のお仕事の概要を知りたい方はこちらの記事もチェック!
目次
●現役翻訳者Interview
ディスクライバーは映像翻訳者にぴったりのセカンドスキルです!
●いよいよ今春スタート!
「音声解説ディスクライバー養成講座」の気になるポイントをチェック
・カリキュラムの構成は? 教材は?
・講師の先生はどんな人?
・修了後のサポートは?
・映像翻訳者におすすめのワケ
●無料ウェビナーのお知らせ
現役翻訳者Interview
ディスクライバーは映像翻訳者にぴったりのセカンドスキルです!
ブロードメディア㈱社内翻訳者。大学卒業後、現ブロードメディア株式会社に入社。字幕制作を経て社内映像翻訳者になる。現在は吹替翻訳をメインに活動。主な吹替翻訳作品は「プリズン・ブレイク」、「24」シリーズ、「BULL/法廷を操る男」、「ブラックスワン」、「ハンドメイズ・テイル」など。
Q 吹替翻訳者としてご活躍ですが、なぜ音声解説の勉強を?
高校生の時に映像翻訳に興味を持ち、大学卒業後、ブロードメディア㈱に字幕制作スタッフとして入社しました。入社当初は字幕翻訳もしましたが、現在は吹替をメインに社内翻訳者として働いています。担当するのは海外ドラマの吹替が多いです。
音声解説に興味を持ったきっかけは2つあります。
1つは映像翻訳でもAIの活用が視野に入ってきたことです。今後AI翻訳がさらに進歩したら、映像翻訳のあり方も変わっていくかもしれません。将来を見据え、仕事の幅を広げておいたほうが良いと思いました。映像翻訳のスキルを生かすことができる音声解説は、私にぴったりのセカンドスキルだと考えました。
もう1つは、社会貢献できる仕事だということです。点字図書館で朗読のボランティアをしたいと思ったこともあるのですが、なかなか実行に移せませんでした。ディスクライバーとして、仕事を通して社会貢献できることに魅力を感じました。そんな時、社員研修の一環で音声解説の講習が始まると聞き、ぜひやってみたいと手を上げました。
Q 現在、学習中とのことですが、音声解説はどのように作成するのですか?
映像と台本を受け取ったら、まずは音声解説を聞く人と同じ立場に立つために、目を閉じて作品の音だけを聞きます。音を聞いているだけでは何が起きているのかわからないシーンがあるので、画面を見ながら台本でそのシーンを確認し、いつ、だれが、何をしているかなど情報を拾い出します。
次に解説文を作ります。本編のセリフや効果音(SE)に音声解説がかぶらないよう、尺の長さに合わせて情報の取捨選択をし、ワードやエクセルなどに解説文を入力して台本を作ります。
Q ディスクライバーの作業をやってみてどうですか?
いちばん難しいと感じたのは、画面に見えている以上のことは解説しないということです。
音声解説は、本編のセリフとセリフの間の出来事を説明するものなので、最初は吹替台本でいう「ト書き」みたいなものかと思っていましたが、違いました。登場人物が悲しそうな顔をしていたら、吹替のト書きでは「○○が悲しむ」で済みますが、音声解説の場合は違います。「目を伏せる」や「涙を浮かべる」など、画面で見えているものを正確に伝えつつ、聞いている人の想像の余地を残すことが大切です。また、尺がたっぷりあるなら情報をすべて入れればよいと思ってしまいがちなのですが、「電話が鳴る」など聞けばわかることは解説しません。過剰な音声解説は、おせっかいになりかねません。
とはいえ私もまだ修行中なので、実際に音声解説をつける際は、どの情報を取捨選択するかすごく迷います。
Q 吹替翻訳のスキルは音声解説の作成に役立っている?
とても役に立っています。作品読解力はもちろん、吹替翻訳でいう「尺合わせ」、そして耳で聞いてわかりやすい言葉選びは音声解説に通じるものがあります。
吹替だけでなく、短い尺に情報を集約するために簡潔な表現にするなど字幕翻訳で培ったスキルも役立ちます。音声解説の講師から「理想の音声解説は、作品とともにありながら存在を感じさせないものだ」と教わったのですが、それはそのまま字幕の原則でもあると思います。
吹替と字幕、両方のスキルをいかせるのがディスクライバーです。
Q 今後のキャリアプランは?
可能なかぎり、ディスクライバーと吹替翻訳者の二足のわらじでやっていきたいと考えています。
音声解説は、1作品にかかる作業時間が映像翻訳に比べると短いとされます。たとえば30分の映像だとすると、吹替翻訳なら2.5日は必要ですが、音声解説は1日程度で初稿をあげられる想定です(始めたばかりはもっとかかるかも知れませんが)。ドラマシリーズの吹替翻訳を2作品かけもちするのは時間的に難しいのですが、吹替翻訳と音声解説とであればかけもちも可能ではないかと考えています。
海外作品は仮の映像とスクリプトから翻訳作業がスタートすることも多く、完成版が届くまで手が空くことがあるのですが、そんな時に音声解説の仕事とうまく組み合わせられれば、スケジュールの穴を埋めることもできそうです。また吹替を担当した作品なら、理解度が最高の状態で音声解説をつけることができるのも良いですね。
2024年からの法律改正で、映画やテレビ番組、配信動画などの映像作品に対して、字幕と音声解説をつけることが努力義務になります。今後、音声解説の需要が爆発的に増えると思いますので、まずは実務経験を積んで、プロのディスクライバーとして恥ずかしくない音声解説をつけられるようになりたいです。
【こんなメリットも!】
音声解説のスキルがあれば国内の映像作品にも関われる
ディスクライバーは、作品の読解力と日本語力が問われる仕事です。翻訳者ならこの2点はクリアしているでしょう。さらに尺合わせや情報集約力も備えている映像翻訳者には圧倒的なアドバンテージがありますので、うってつけのセカンドスキルだと思います。
また、音声解説のスキルを身につけると国内の映像作品に仕事の幅を広げられます。ディスクライバーの勉強を兼ねて日本のドラマもよく見るのですが、ディスクライバーの仕事を通して日本語の脚本に触れられたら、それは吹替翻訳にも役立つと思います。やってみて損はないと思います。
いよいよ今春スタート!
「音声解説ディスクライバー養成講座」の
気になるポイントをチェック
2024年4月から、ブロードメディア㈱でディスクライバーを養成するオンライン講座が新たにスタート。講座の特徴や内容について、ご担当者に詳しく聞いた。
(お話・講座担当者)
カリキュラムの構成は? 教材は?
「音声解説ディスクライバー養成講座」は、ディスクライバーになるために必要な概念から台本制作の実務的なスキルまでを総合的に学べる全10回の講座です。オンライン講座なので、全国どこからでも参加可能です。
基礎講座が2回、実践講座が8回です。基礎講座では音声解説の基本的なルールや用語をしっかりと学んでいただきます。実践講座では基礎講座で学んだことを基に、実際に地上波で放映されたドラマに先生が書いた音声解説を当て読みし、何故ここにこの内容を入れるのか、または入れないのかなど、詳しく説明していきます。
初めは音声解説をつけやすい映像作品を課題として取り組んでいただき終盤では「ファイトシーン」と呼ばれるアクションシーンなど、音声解説をつけるのが難しい作品にも取り組んでいただく予定です。
講師の先生はどんな人?
フリーランスとして活躍しているベテラン現役ディスクライバー2名のほか、NPO法人シネマ・アクセス・パートナーズ(CAP)理事の川手美由紀さんにも講師に加わっていただいています。
実は音声解説には、公に決まっているルールがありません。それだけに情報をどう取捨選択するかが難しいところです。当講座では40年以上のキャリアを持つ講師陣がこれまでの経験を基に、エンドユーザーである視覚障害者にとって最適な音声解説とは何かを解説します。ベテランの講師陣から、音声解説の基礎から実践までみっちりと学べるのがこの講座の最大の強みです。
修了後のサポートは?
現在、国内でプロとして活躍しているディスクライバーは30名ほどではないかと考えられています。絶対数が不足しており、ディスクライバー養成が急務となっています。
この講座の目的は、多くのディスクライバーをマーケットに輩出することで、1つでも多くの作品に音声解説が付与されることです。当社から業務を委託する場合もございます。
映像翻訳者におすすめのワケ
音声解説を書くディスクライバーの仕事は、映像翻訳者にとって学びが多いと感じています。当社では、映像翻訳者が音声解説の勉強をすることを「リスキリング」と位置付けています。
音声解説を学ぶことで、映像翻訳のスキルアップも図れたという人もいらっしゃいます。翻訳業務と並行して進められる仕事でもあると思いますし、どちらかに完全にコンバージョンする必要もありません。映像翻訳者のセカンドスキルとしてぴったりだと思います。
ディスクライバーの仕事に興味がある人必見の無料ウェビナー開催!
※こちらのウェビナーは終了しました
【つーほんウェビナー特別編】
音声解説を作るディスクライバーの仕事を知ろう!
「ディスクライバー」の仕事について、現役のプロディスクライバーが解説する無料ウェビナーを開催します。仕事のニーズや、仕事内容・進め方、どのようなスキルが必要かを紹介。また、「音声解説」とはどんなものなのかを、ウェビナーの中で動画を使って体験していただけます。
日時:2024年2月27日(火)12:00~12:50
形式 :Zoomウェビナー
参加費:無料(※参加には下記リンクより申込が必要です)
申込締切:2024年2月27日(火)11:00
主催:イカロス出版株式会社『通訳翻訳ジャーナル』編集部、ブロードメディア株式会社
※ブロードメディア株式会社のウェビナー申込ページに遷移します。必要事項をご記入の上、お申込みをお願いいたします。
※ウェビナー参加用のURLは、ブロードメディア株式会社よりご連絡いたします。
※その他、ウェビナーに関するお問い合わせは、同社のお問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。
2024年4月 ディスクライバーのスキルを学べる新講座がスタート!
多数の映像作品の音声解説制作を手がけてきたブロードメディア株式会社(https://www.broadmedia.co.jp)では、ディスクライバーになるために必要な、概念理解から台本制作の実務的なスキルまでを総合的に学べる「音声解説ディスクライバー養成講座」を2024年4月に開講します。現役のプロディスクライバーが講師をつとめ、リアルタイムでの質問も可能です。
「音声解説ディスクライバー養成講座」の詳細・お申込みは以下のリンクをクリック
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