
語学や、通訳・翻訳に特化した資格以外にも、専門分野に関する資格を持っているフリーランス翻訳者は多い。資格を取得していることで、分野に関する深い知識を持っていることが示せるといったメリットもある。実際に試験に合格したフリーランス翻訳者の体験談を通して、専門分野の資格を持っていることのメリットや、資格を取得したい人へのアドバイスなどを紹介する。

ひらの・よう/翻訳者。大学中退後(農学部)、海外留学で英語力を磨く。帰国後、畜産関係の仕事に就くも都合により退社。その後、通信の翻訳講座を受講。2006年、トライアルに合格しフリーランスの翻訳者に。
〇合格した試験
行政書士試験
〇翻訳の専門分野
契約書・法務・行政(日英)
〇翻訳歴
18年
〇試験合格年
2004年
民法・商法・会社法・行政法など、法律を幅広く学ぼうと受験を決意
大学中退後、海外留学をして英語力を磨いたという平野陽さん。帰国後は、培った英語力を生かした仕事に就こうと考え、通信の翻訳講座を受講することに。
「最初は出版翻訳(英日)の通信講座を受けていました。その後、アメリアの翻訳トライアスロン(※)の総合順位で上位に入賞したことで、翻訳スキルに自信がつき、翻訳会社のトライアルを受けるようになりました」
トライアルに合格しフリーランスの英日翻訳者として活動を始めたが、強く打ち出せる専門分野がなかったこともあり、仕事の受注量は思うように増えなかった。これから翻訳の仕事を続けるうえで、何か専門分野があったほうがよいと感じたという。
「もともと法律に興味があったこともあり、契約書の翻訳を専門分野にしようと決めました。契約書翻訳の通信講座も受講しましたが、せっかくなら法律について幅広く勉強してみたいと思い、より真剣に取り組むために行政書士試験を受けることを思い立ちました。また私の場合は、大学を卒業せずに中退しているため、履歴書に記載することのできる資格がほしい、という思いもありました」
参考書を買って独学で勉強をはじめ、当時発行されていた行政書士試験の月刊誌を購入して情報を集めたり、模擬試験を受験したりして対策をした。
「当時はまだ、翻訳の仕事がそれほど多くなかったため、試験勉強の時間が十分にあり、5カ月弱の勉強で合格することができました」
※ 翻訳をトライアスロンに見立て、出版・映像・実務の3種の課題を翻訳するイベント。㈱アメリアネットワークが主催しており、アメリア会員のみ参加できる。
勉強した知識を使い、多様な案件をこなす
現在は、日英の契約書や法務、行政の分野を中心に翻訳の仕事を受注している。
「行政書士試験に合格したからといって、すぐに仕事の受注が増えるというわけではありませんが、法律関係の知識がそれなりにあるという裏付けにはなると思っています。依頼をいただく際や翻訳会社に登録する際、少なからずクライアントや翻訳会社にポジティブな印象を与えられているのではないかと感じます。行政書士の扱う法律分野には民法・商法・会社法・行政法などがあります。民法・商法については契約書に密接に関わる分野なので、翻訳をする際にも大いに役に立っています。また、定款など会社法に関する案件も少なくないため、会社法の知識も生きていますし、行政法を勉強したことによって、行政手続きについての知識が深まり、行政関係の仕事にもつながっていると思います」
クライアントに喜んでもらえたときにやりがいを感じるという平野さん。身につけた知識を生かして、さまざまな案件に関わることができている。
資格を取得しようとしている人へADVICE📣
資格そのものが、仕事を得るにあたって大きなアドバンテージになるとは思えません。やはり実際の翻訳(トライアル)の出来が重要です。資格の取得をめざす場合は、自身が専門にしたい分野に直結する資格に限定して勉強するのが良いと思います。
行政書士試験とは
法律系の国家資格試験。行政書士法に基づき、行政書士の業務に関して必要な知識能力について問われる。憲法、行政法、民放、商法および基礎法学の中から出題する「行政書士の業務に関し必要な法令等」と、政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護などについて問われる「行政書士の業務に関連する一般知識等」の試験科目がある。受験資格はなく、誰でも受験することができ、試験は年に一度行われる。行政書士になるには、試験合格後に「日本行政書士会連合会」の名簿に登録が必要になる。
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