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2025.04.01 UP

宅地建物取引士資格試験に合格
翻訳者インタビュー

宅地建物取引士資格試験に合格<br>翻訳者インタビュー
※『通訳翻訳ジャーナル』SUMMER 2024より転載。

語学や、通訳・翻訳に特化した資格以外にも、専門分野に関する資格を持っているフリーランス翻訳者は多い。資格を取得していることで、分野に関する深い知識を持っていることが示せるといったメリットもある。実際に試験に合格したフリーランス翻訳者の体験談を通して、専門分野の資格を持っていることのメリットや、資格を取得したい人へのアドバイスなどを紹介する。

翻訳者
翻訳者桐林誠さん

きりばやし・まこと/大学卒業後、繊維商社に入社し輸出業務に従事。その後、駐在のため香港に赴任。10年間滞在した後帰国。2000年に会社を辞め、フリーランス翻訳者として独立し、現在に至る。

〇合格した試験
宅地建物取引士資格試験
〇翻訳の専門分野
法律(主に契約書、規約)
〇翻訳歴 
24年
〇試験合格年
2003年

法律分野の翻訳を続けて24年
宅建合格で自信を深める

翻訳の仕事をはじめた当初は、副業として週末だけ翻訳に従事していたという桐林誠さん。トライアルに合格して初めて得た翻訳の仕事は、契約書の和訳だった。フリーランスとして働いて24年目の現在も、契約書や規約といった法律分野の翻訳を専門としている。今では取引先の担当者から「契約関係の翻訳案件の際は、いの一番にお声かけしています」と言われるほどだ。

「法律分野の翻訳を専門にするようになったのは、前職の輸出業務で『信用状』や『契約』、『保証』といった言葉に日常的に触れていたためか、法律文書を読んでも苦にならなかったことが理由です。他の分野には馴染めず、法律以外の分野はデビュー当時から打診があってもお断わりしていました」

ただ、法律分野に興味はあるが、法学部出身でもなく、法律事務所で働いた経験もなかった。フリーランス翻訳者として今後も法律分野で仕事を得るには、法律関連の資格取得が有利に働くと考えた。

「資格が知識を客観的に証明することになりますし、合格に向けた勉強により、法律知識が基礎から体系的に学べると考えました。その上で、契約書の翻訳に役立つ知識(民法、借地借家法、不動産登記法など)をまんべんなく習得できる宅地建物取引士資格試験(宅建)を選びました。宅建は国家試験なので信用性も高いと思いました」

試験合格後に知識の定着を実感

受験を決めてからは細切れの時間であっても毎日勉強時間を確保し、市販のテキストと過去問を使って勉強した。参考にしていたテキストの『らくらく宅建塾』(宅建学院)は500ページ以上のボリュームがあったが、最後まで何度も通読し、試験直前には模擬試験も活用した。約8カ月のこうした地道な勉強が実を結び、無事試験に合格。試験合格後は、当時NHKで放送していた法律相談番組の内容がすんなりと理解できるようになり、知識の定着を実感することができたという。

「試験に合格したことで、求人の応募時にアピールできる点が増えました。直接聞いたわけではないので自身の見解ですが、書類選考の段階で不合格になることがなくなったと感じています。ただ、仕事獲得のためにはあくまでもトライアルに合格することが前提条件です。資格を取得しても、仕事が保証されるわけではありません。ですが私の場合は宅建の試験に合格したことが、知識を持っているというアピールになるだけでなく、結果的に自分への自信につながっていると感じています」

資格を取得しようとしている人へADVICE📣
資格を持っていることは、アピールになってもマイナスに作用することはないと思います。合格に向けた勉強で身につけた専門知識は、翻訳にも役立ってくれるはずです。また、資格取得をめざすなら、記憶力と集中力が低下する年代になる前、なるべく早い頃に受験をするのが良いと思います。

宅地建物取引士資格試験とは
都道府県知事が、国土交通省令の定めるところにより行われる国家資格試験。試験は、委任を受けて一般財団法人不動産適正取引推進機構が実施している。「土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること」や「宅地及び建物についての税に関する法令に関すること」などについて出題され、宅地建物取引業の実用的な知識を持っているかどうかを判定する。宅地建物取引士になるには、合格後に都道府県知事の資格登録を受け、「宅地建物取引士証」の交付を受ける必要がある。

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