通訳・翻訳・語学関連の注目の新刊書籍を、著者の方のコメントとともに紹介します。
戦後の翻訳ミステリ受容史を 「叢書」を軸に解き明かす1冊
ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション
戦後翻訳ミステリ叢書探訪
川出正樹 著 東京創元社
出版社HP
Amazon
【著者が語る】
戦後、50社あまりの版元からこれまでに100近くの翻訳ミステリの叢書・全集が編纂されています。
本書は、今日まで連綿と続くミステリ・ブームの一翼を担ってきたこれらの中から個性豊かな顔立ちのものを訪れて、誕生の経緯や編纂の意図、収録作品と作家、そして翻訳者にまつわるあれこれを徹底的に調査した研究書兼ブックガイドです。と同時に著者自らの体験を交えつつ、戦後日本で海外ミステリがどのように受容され、浸透し、日本の作家や読者に影響を与えていったかを眺め考察したクロニクルでもあります。
本格ミステリからハードボイルド、サスペンス、スパイ小説、さらに冒険小説と満遍なく取り上げていますが、あえてメジャーな叢書は避けて、翻訳ミステリ紹介史を語る上で重要なれどほとんど顧みられることのなかったマイナーなものを中心に探訪しました。例えば、戦後退潮していた海外ミステリ紹介の動きを再起動した企画、ヒッチコックの名前を冠したアンソロジーを元に編まれた日本独自短編集、原題も作者名も隠して日本人作家の手による実録犯罪小説を装って刊行された謎の叢書等々。
読書案内の書であり、叢書を通じて翻訳文化という小宇宙の多様さと豊かさも感じていただける、これまでに類書がない本であることは保証いたします。
※ 通訳翻訳ジャーナル2024年SPRINGより転載
かわで・まさき/1963年愛知県生まれ。慶應義塾大学卒。翻訳ミステリを中心に文庫解説や書評などを多数執筆、2009年からは〈翻訳ミステリー大賞シンジケート〉サイトにて「書評七福神」の一人としても活動、毎月翻訳ミステリの新刊ベスト1を紹介する。共著に瀬戸川猛資編『ミステリ・ベスト201』『ミステリ絶対名作201』、池上冬樹編『ミステリ・ベスト201 日本篇』、村上貴史編『名探偵ベスト101』、書評七福神編著『書評七福神が選ぶ、絶対読み逃せない翻訳ミステリベスト2011-2020』、杉江松恋監修『十四人の識者が選ぶ本当に面白いミステリ・ガイド』などがある。