学習は心の中に「余裕」を持ち続けることが継続につながる
練習問題2 英→日 通訳してみよう!
1.
Could you please clarify the sentence for me?
2.
It’s alright but I need to understand fully.
3.
This is because it has some leeway for various interpretations.
キーワードで出てきた leeway がセンテンス3で使われていますね。こちらも英日通訳同様、ビジネス会議が舞台になっています。話者が一番イイタイコトを常に通訳者は把握しつつ、上記の文章を和訳してみましょう。ここでもコンパクトに聞きやすく訳すことが大切です。
訳例2-1△
1.その文章を私のためにハッキリしてもらえませんか?
2.OK ですが、私は完全に理解する必要があるので。
3.これはなぜなら、色んな解釈の余地があるからなんです。
解説
1.「私のために」は英語をそのまま訳出した印象です。また、全体として日本語が不自然に感じられます。この場合、「ハッキリして」ではなく「ハッキリさせて」の方がまだ分かりやすい気がしますよね。一方、丁寧に表現するなら「もらえる」ではなく「いただく」「くださる」が正解です。
2.尻切れトンボな感じがしますので、文末まできちんと訳すことが大切です。「OK」も間違いではありませんが、もう一工夫欲しいところです。「私は」という主語を入れなくても聞き手が想像してくれるのが日本語ですので、省ける部分は省いた方が良さそうです。
3.やはり直訳調です。「色んな」や「〜なんです」と「ん」が頻繁に出てきているのも気になります。「色んな」も間違いではありませんが、「色々な」の方が丁寧な印象を与えます。
訳例2-2◎
1.その文を補足していただけますか?
2.これでも良いのですが、正しく理解しておきたいのです。
3.と申しますのも、いくつかの解釈ができるからなんです。
1.丁寧に聞いているのがわかります。また、あえて主語を入れなくても聞き手が補ってくれるという日本語の特徴も生きています。clarify は厳密には「明確にする」という意味ですが、この文脈では「わかりやすく補う」というニュアンスを伴います。日本語のボキャブラリーも勉強の際にはたくさんストックしておくと、TPOに応じた訳語が使えます。
2.ここでも「私」を入れていません。日本語の場合、むしろ気をつけたいのは目上や位が上の人を「彼」「彼女」「あなた」と呼んでしまうことです。逆に日英通訳の場合は相手の年齢や位に関係なく、必ず主語や代名詞が入ります。ことばそのものの構造が英語と日本語では異なることを常に意識してください。
3.various は中学校で学ぶ基本語ですが、「多様な、様々な、いくつかの」という語義があります。ちなみにdifferent とは微妙にニュアンスが異なります。既知の単語もあえて調べ直し、ニュアンスの違いを把握しておくことでネイティブの言わんとしていることを把握するよう努めましょう。
* * *
いかがでしたか? 今回は「余地」「余裕」という語を取り上げました。さて、英語学習を続けていると、伸び悩む時期もありますよね。そのような時も焦らずたゆまず、心の中に「余裕」を持ち続けることが継続に繋がります。ぜひこれからも楽しみながら通訳学習を続けていってください。
★前回のコラム
同時通訳者。獨協大学およびISSインスティテュート講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールドを経て現在はCNNをメインに放送通訳業にも携わる。近年では近年では米大統領選、ノーベル賞、エリザベス女王国葬、テニスATPカップ、G7広島サミット記者会見、ノーベル平和賞受賞ユヌス博士、国会議員連盟の通訳などに従事。通訳や英語関連のコラムも執筆中。