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2024.10.11 UP

第12回 (最終回)「前向き」を表す英語表現
positive

第12回 (最終回)「前向き」を表す英語表現<br>positive

通訳トレーニングには五感をフル活用

練習問題2 英→日 通訳してみよう!

1. The analyst is giving a positive outlook for the future.
2. Although we are now facing a challenging situation, we can work out the solution.

positivechallenging が出てきましたね。ちなみに work out は「答えを見つけ出す」という意味です。

訳例2-1◎
1.アナリストは将来に関して楽観的な見通しを示しています。
2.大変な状況に今私たちは直面していますが、解決法を見つけ出すことはできるでしょう。

解説
positive outlook をここでは「楽観的な見通し」と訳してありますね。「プラスの展望」でも「前向きな予測」という意訳でもここでは通じます。「将来に関しての」の部分では前置詞の for を用いていることにも注目しましょう。前置詞には色々なものがありますので、不安なときはぜひその都度辞書で確認するようにしてください。
challenging situation は「大変な状況」です。difficult situation よりも前向きな印象を与えるのが challenging ですよね。なお、situationstate はどちらも「状況」という意味ですが、state は具体的なものの状況について用いることがよくあります。
一方、situation は同じ「状況」でも「一時的で変わりやすい状況」というニュアンスが強くなります。

今回は positivechallenging をご紹介しました。そういえば本コラムも「やってみよう通訳・翻訳自習ドリル」というタイトルですよね。challengingな練習問題もあったかもしれませんが、いかがでしたでしょうか?

*****

さて、本連載もこれが最終回となりました。
通訳トレーニングで大切なのはみなさん自身が実際にご自分の「手」や「口」を動かすことで「通訳」という作業に慣れていくことです。目だけで、あるいは頭だけで理解しただけでは声を出すという行為に直結しづらいのです。ぜひ今後もトレーニングの際には五感をフル活用して、通訳力のアップを目指してみてください。

通訳という仕事に終わりはありません。勉強すればするほど自分自身が知らなかったことに気づかされます。大切なのは、「どれだけ自分が通訳できるか」という単語変換力だけではなく、「いかに自分にはまだ課題が残されているか」を自覚することなのです。通訳という仕事は言葉を瞬時に変換することに加えて、わかりやすい言葉でお客様に伝える必要があります。話し方や場の空気を素早くくみ取り、お客様に喜ばれ、お役に立てることが仕事の上では重視されます。

通訳現場では様々なトピックが登場します。そのたびに仕事を通じて未知の分野を知ることができます。新しいトピックを「知りたい!」という知的欲求さえあれば英語力向上にも寄与するはずです。
ぜひこれからも楽しみながら勉強を続けていってください。

★前回のコラム

放送通訳者 柴原早苗
放送通訳者 柴原早苗Sanae Shibahara

同時通訳者。獨協大学およびISSインスティテュート講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールドを経て現在はCNNおよび民放局で放送通訳業に携わる。近年では米大統領選、ノーベル賞、エリザベス女王国葬、テニスATPカップ、G7広島サミット記者会見、ノーベル平和賞受賞ユヌス博士、国会議員連盟の通訳などに従事。