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2023.04.18 UP

第1回 自己紹介に関する表現方法 introduce

第1回 自己紹介に関する表現方法 introduce

季刊『通訳・翻訳ジャーナル』本誌で連載し、ご好評をいただいていた「通訳者のためのビジネス英語ドリル」がWeb版になって登場!
放送通訳者の柴原早苗さんがビジネス通訳の場面で役立つ表現を取り上げ、訳出のコツや関連フレーズなどを紹介します。

introduce を使った様々な自己紹介の英語表現

通訳者として必ず訳す場面といえば、まずは「自己紹介」が挙げられます。
大規模セミナーであれ、こぢんまりとしたビジネスミーティングであれ、初めてお目見えする際には話し手が紹介をしますよね。
「え?自己紹介の通訳?本題に入る前でしょ。決まり文句で切り抜けられるのだから、それほど難しくないのでは?」
確かに一見そのように見えるかもしれません。
けれども、会議の冒頭だからこそ、聴衆を引きつけ、その後の話の流れをスムーズにするためにも、紹介の部分は大事なのです。
そこで今回は introduce という単語を中心に、自己紹介に関連した表現を見ていきましょう。

練習問題1 日→英 通訳してみよう!

1. みなさん、こんにちは。
2. 私は柴原早苗と申します。
3. 本日は、弊社の販売戦略についてお話いたします。

いわゆる典型的な自己紹介の場面です。
開口一番、聴衆にあいさつをして自分の名前を述べ、その日のトピックについて伝えています。
みなさんはこの3つの文章をどのように訳しますか?まずは声に出して言ってみてください。
通訳訓練で大事なのは、頭の中で文章を組み立てるだけではありません。
必ず自分の頬の筋肉を使って声に出してみることです。
通訳者に必要なのは瞬発力と即応力です。「頭では分かっているけれど、とっさに出てこない」という悩みを克服するためにも、今ここで声に出してみましょう。

声に出せましたか? 
では、声に出した文章をノートに書いてみてください。
これは頭で組み立て、発声した内容を文字に書き起こすことにより、視覚的に検証するためです。できれば声に出しながら書いてみましょう。

訳例1-1△
1. 
Hello, everybody.
2. 
My name is Sanae Shibahara.
3. 
Today, I will speak about our company’s sales strategy.

解説
1. 確かに「こんにちは」と言っていますので、Hello でも間違いではありません。
けれども、ややもすると唐突な印象を受けますよね。
everybody は「みんな、すべての人」という意味ですが、厳密に言うと相手に対して親しみを示す際に使う話し言葉です。この場合、聴衆と話し手の親密度も考えなければなりません。

2. こちらも間違いではありません。
ただ、印象としては「私の名前は柴原早苗です」と直訳している感じがします。もう少し自然な表現を工夫したいところです。

3. 忠実に英訳しているのがわかります。
「何か物事について話す」は speak about ですので合っていますよね。では「話す」のもう一つの単語、talk を使うとどうなるでしょうか?
通訳の勉強をする際には talkspeak の違いを即座に使い分けられる必要があります。

訳例1-2◎
1. 
Good morning, ladies and gentlemen.
2. 
Allow me to introduce myself. I’m Sanae Shibahara.
3. 
In my presentation today, I will show you our company’s strategy.

解説
1. 訳例2 同様、時間帯に応じて Good morningGood afternoon を使い分けましょう。「みなさん」はここでは ladies and gentlemen となっています。さらに丁重に言うのであれば、distinguished guests, ladies and gentlemen としても良いでしょう。

2. これも丁寧な表現です。「自己紹介申し上げます」というニュアンスが盛り込まれています。allow me to … はよく使われる表現ですので、ぜひ覚えておきましょう。
たとえば Allow me to repeat myself.(繰り返して申し上げます)、Please allow me to clarify.(明確にしておきたい点がございます)などがあります。
introduce は今回のキーワードです。後ほどご説明します。

3. 一定のプレゼンテーション時間を与えられたという状況であれば、presentation という単語を盛り込むこともできます。show は中学校で学ぶ単語ですが、「見せる、示す、明らかにする、証明する」などの意味があります。
tell も同義語ですが、「言葉で教えるだけ」というニュアンスです。
show は言葉だけでなく、視覚的な道具なども用いる際に使う単語になります。

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放送通訳者 柴原早苗
放送通訳者 柴原早苗Sanae Shibahara

同時通訳者。獨協大学およびISSインスティテュート講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールドを経て現在はCNNをメインに放送通訳業にも携わる。近年では近年では米大統領選、ノーベル賞、エリザベス女王国葬、テニスATPカップ、G7広島サミット記者会見、ノーベル平和賞受賞ユヌス博士、国会議員連盟の通訳などに従事。通訳や英語関連のコラムも執筆中。