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実績に培われた指導力とカリキュラムで実践力を備えたプロを養成
こんな学校です!
大手通訳会社の㈱サイマル・インターナショナルが母体の通訳者・翻訳者養成スクール。1980年の創立以来、多数のプロ通訳者を輩出している。エージェントが母体のスクールである強みを生かし、受講生一人ひとりの経験・スキルとキャリアプランにあわせて、在籍中からキャリアカウンセリングや仕事の機会を提供している。通訳者養成コースは、プロ通訳者に求められるスキルを体系的に学び、レベルに応じて段階的に実力をつけるコース。今回は、「通訳Ⅱ」の授業をレポートする。
訪問クラス 通訳者養成コース 通訳Ⅱ
中間テストの内容を使って 英日・日英逐次通訳
「通訳Ⅱ」は、多様な逐次通訳訓練を行い、逐次通訳の基礎の完成をめざすクラスだ。現役プロ通訳者である井戸惠美子先生の指導の下、受講生はオリジナル教材や生スピーチ教材を使って英日・日英逐次通訳に取り組む。見学した日は中間テスト直後の回だったため、中間テストの内容をレビューする形で進行した。
授業冒頭、井戸先生は「今週は世界で大きな動きがありましたね」と話しかけ、韓国やシリアで起きた政変を話題にした。井戸先生はここで「戒厳令:martial law」「戒厳軍:martial law troops(special troops)」「弾劾:impeachment」「海外渡航禁止令:overseas travel ban」などの時事用語を提示し、話は2つの政変の背景にも及んだ。受講生は、現役通訳者によるタイムリーな時事解説に熱心に耳を傾けていた。
「それでは、中間テストの教材の振り返りをしましょう。英日から始めます」という井戸先生のかけ声で、英日逐次通訳の訓練が始まった。今回の試験の内容は「地球温暖化とエネルギー」に関するもので、受講生がこの音声を聴くのは中間テストを含めて2回目となる。30~40秒程度の長さに区切られた英語音声が流れ、指名された受講生が日本語訳を披露するという流れだ。
この試験問題は、一文が長く、どこにピリオドがあるのかわかりづらい文をあえて組み込んでいる。多くの受講生は、文の切れ目を把握することに難しさを感じている様子だ。井戸先生は、「スピーカーはどこで文を切っているのかということと、簡潔な訳にするために、自分はどこで文を切りたいのかということを考える必要があります。情報が正確であることに加え、きれいにまとめて訳出する編集力も重要になってきますので、訳す際は文の切れ目を意識するようにしましょう」とアドバイスを送った。
この他、「…… the Paris Agreement; to substantially reduce global greenhouse gas emissions ……」という例文の文末を「~ということです」と訳出した受講生に対して、「この場面は伝聞ではないので、『~ということです』という文末表現には違和感があります。このような場合は動詞を落として訳している可能性が高いので、動詞は何を使うのか、どの位置に置くのかということに注意しましょう」とアドバイスするなど、一人ひとりに向けた井戸先生のきめ細かな指導が続いた。
日本語の省略表現は主体を補って訳すとクリアな英文になる
授業後半は、中間テストの日英問題を振り返る。「サステナビリティ経営」をテーマにした日本語のスピーチだ。この問題も先生に指名された受講生が英語訳を行った。
「これも一つの理由としていいと思うんです」という発言を「I think this is one of the good reasons.」と訳した受講生に、井戸先生は「何に対する理由ですか?」と投げかける。この箇所は、スピーチの前半部分を受けて、省略されている語句を補って訳出する必要があるのだが、中間テストでも補足ができていた受講生は少なかったそうだ。井戸先生は、「今言ってくださった訳出に『I think this is also one reason why we have to be aware of sustainable business.』まで加えることができると理想的です。聞き手にとって親切な通訳になると思います」と話し、必要に応じて情報を補足したり編集したりすることの重要性を伝えた。
また、英訳がカジュアルな文章になりがちな受講生には、「日本語の文章では動作主体を省略することがある」と前置きした上で、「誰が、何を、という情報を入れると、英語にしたときにクリアでわかりやすい文章になります。そうすることでカジュアルさも抑えられますので、その点を意識して訳すようにしましょう」と具体的にアドバイス。「話の流れはわかりやすかったので、良いところはそのまま伸ばしていってくださいね」と励ましの言葉も送っていた。
一通り日英問題のレビューが終わり、授業は残り20分ほどになった。最後に中間テストの英日・日英の問題を改めて各自が一斉に逐次通訳し、井戸先生がそのパフォーマンスをモニタリング。先生からの全体フォードバックをもって授業は終了した。中間テストを終え、今期プログラムの折り返し地点に来た受講生は、後半に向けて気持ちを新たにしていた。
講師からのメッセージ
大学在学中より、サイマル・アカデミーで学ぶ。一般企業勤務、社内通訳業務に従事した後、フリーランス通訳者に。現在はサイマル・インターナショナル専属通訳者として、政府・企業関係の会議やセミナーを中心に通訳を行う傍ら、講師として後進の育成にも力を注いでいる。
フィードバックに留意して自主訓練に取り組み、 次のステップにつなげましょう
「通訳Ⅱ」では、受講生のレベルにあわせたオリジナル教材や実際のスピーチ音源を使って、逐次通訳の基礎固めを行います。授業の際に私が心がけているのは、一人ひとりの個性に応じた指導をすることです。受講生にはそれぞれ異なる強みや改善点がありますので、毎回の授業で何かしらパフォーマンスの改善につながるような、具体的なフィードバックができればと考えています。授業後は、その点に留意しながら自主訓練に取り組み、次のステップにつなげるよう伝えています。
通訳という職業は、世界で起きている出来事に現在進行形で参加できるおもしろい仕事です。AI技術の進歩により、通訳者の真価が問われる時代になりましたが、人だからこそできる通訳はあります。何のためにその会議があるのか、何のためにその発言がなされたのかを考えて通訳することが大切です。
受講生に聞く!
通訳者養成コース 通訳Ⅱ 受講生
井手真弓さん
授業の中で扱った教材をダウンロードして、リテンション、リプロダクション、要約などの通訳トレーニングを行っています。復習に活用することで効果的に学習できていると思います。メモ取りについては、記号や単語の一部をメモするコツなどを学びました。井戸先生は、パフォーマンスに対する指摘だけでなく、改善のために何に気をつけるべきか、的確なアドバイスをしてくださいます。良い環境、良いクラスで学ぶことができていると感じています。
ここもチェック
サイマル・グループの総合力を生かしレベルやキャリアプランにあった仕事を紹介
通訳Ⅱ在籍中からフリーランス通訳者として登録可能。レベルにあった仕事を通じて、学びながらキャリアを積むことができる。また社内通訳者としての就業を希望する受講生に対しては、同グループの人材派遣・人材紹介会社との連携により、在籍レベルに応じてさまざまな仕事を紹介。
成績優秀者には特待生制度あり
優秀な人材に向けたキャリアサポートの一環として、特待生制度を設けている。通訳Ⅲ以上に在籍中で成績優秀な受講生は特待生として認定。授業料免除の他、会議通訳Ⅱ修了後、㈱サイマル・インターナショナル専属通訳者として登録の機会を提供する。
講座紹介
● 通訳準備
通訳訓練に必要な英語力の養成と日本語表現力向上にフォーカス。英語ネイティブ講師と日本人通訳者のチームティーチングによる相乗効果で、効率的に言語スキルを向上させる。
● 通訳Ⅰ〜Ⅳ
さまざまな通訳訓練を実施し、通訳者としての基礎力を養成。さらに、ビジネス通訳者として必要な知識と技術を身につけ、信頼性の高い逐次通訳技術を習得する。
● 会議通訳Ⅰ・Ⅱ
逐次通訳技術の土台の上に、同時通訳のスキルを身につける。同時通訳技術に必要な瞬発的解析力と表現力を身につけ、会議通訳に不可欠な知識・教養の強化も行う。
英語以外の言語の通訳コース
● 中国語通訳者養成コース
基礎科、本科Ⅰ・Ⅱ、同時通訳科
レギュラーコース…4月/10月開講
短期プログラム…3月/9月開講
※レベルチェックや体験レッスン、授業はオンラインにて実施している。
インターネット講座
・ 基礎からはじめる通訳トレーニング
・ 通訳者が教える英語力アップ講座 中級/上級
・ 通訳のためのノート・テイキング
・ IR通訳セミナー ほか
お問い合わせ先
サイマル・アカデミー
〒104-0061
東京都中央区銀座7-16-12 G-7ビルディング 4F
TEL: 03-6226-3120
FAX: 03-6226-3331
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