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2025.10.15 UP

第198回 without further ado/“ado”は“a do”ではありません

第198回 without further ado/“ado”は“a do”ではありません

ネイティブが使う粋な英語表現を現場からお届け! グローバル化が進み、英語が飛び交う製薬業界。製薬会社で活躍している社内通訳者が、グローバルビジネスの現場で流行っていたり、よく耳にしたりする英語表現を紹介します。

ado=「騒ぎ」「面倒」

グローバル会議の冒頭で司会をしていて、ついつい話に熱が入ってしまって前置きが長くなってしまった……こんな経験はないでしょうか。その際に、「前置きはこのくらいにしてそろそろ……」と切り上げるにはどんな英語フレーズを使ったらよいでしょうか。

そんな時に便利なのがこちら、“without further ado”

ウン十年前に初めて耳にした際、「“a do”? 動詞“do”になぜ単数の“a”が付くのだろう??」と訝(いぶか)しく思ったのを今でも鮮明に覚えています。後日、“a do”ではなく“ado”と1つの単語で、「騒ぎ」「面倒」といった意味を持つ名詞であることが判明しました。ですので、“without further ado“とすると「さらなる騒ぎはなしにして」⇒「前置きはこのくらいにして」「私の口上はこのくらいにして」という意味になります。公式の会議でこのフレーズが使えると会の冒頭が締まりますので、ぜひ覚えて使ってみてください。

具体的には次のように使えるでしょう。

(グローバル会議で司会をしていて、冒頭の発表者紹介が長くなってしまって)
A:Without further ado, Dr. Sanchez, the floor is yours.
B:Sure, thank you for your kind introduction.

A:前置きはこのくらいにして、サンチェス博士、ご発表をお願いします。
B:はい、ご丁寧なご紹介をありがとうございました。

ぜひ使ってみてください!

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森田系太郎
森田系太郎Keitaro Morita

日米の大塚製薬を経て、現在は製薬CRO・シミック㈱のシニア通訳者 兼 フリーランス通翻訳者。日本会議通訳者協会(JACI)認定通訳者、JACI同時通訳グランプリ(学生部門)審査員(2023年~)、コミュニケーターズ土曜学校・通訳講師。モントレー国際大学院(会議通訳 [修士])、立教大学(社会デザイン学 [博士])卒。国連英検・特A級(外務大臣賞)。JACIのHPでコラム「製薬業界の通訳」を、『通訳翻訳ジャーナル』(2022-23年)でコラム「専門分野の通訳に挑戦【製薬編】」を連載。 編著書に『環境人文学 I/II』(勉誠出版)、『ジェンダー研究と社会デザインの現在』(三恵社)がある。 立教大学・兼任講師/研究員、社会デザイン学会・理事、文学・環境学会・広報担当役員。趣味は小6から続けているテニス。