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2023.05.19 UP

第141回 nuance/ビミョーなニュアンス?

第141回 nuance/ビミョーなニュアンス?

ネイティブが使う粋な英語表現を現場からお届け! グローバル化が進み、英語が飛び交う製薬業界。製薬会社で活躍している社内通訳者が、グローバルビジネスの現場で流行っていたり、よく耳にしたりする英語表現を紹介します。

今回は最近、グローバル会議でよく耳にするようになった単語の1つである“nuance”をご紹介したいと思います。

先日、通訳を担当した会議2件でそれぞれ参加者が使っていたのが、この“nuance”という単語を使った“cultural nuances”という表現でした。2件のうち1件は製薬関係の会議で、「日本の規制に係る“cultural nuances”を知りたい」という発言がありました。
“cultural nuances”は直訳すると「文化的ニュアンス」となりますが、上記の例の場合、「文化差」、さらに言い換えれば「日本特有の(Japan-specific)」製薬に係る規制要件を知りたい、という意味での発言でした。

日本語には、表面からはわかりにくい繊細な部分を表す単語に「機微」という美しい言葉があります。「機微」は“subtlety”と英訳されることが多いですが、そこに“nuance”を付け加えてもいいかも知れません。また、“nuance”は動詞としても使えますので、たとえば“a culturally nuanced word”であれば「文化差のある単語」=「文化によって微妙に意味が異なる単語」となります。

具体的には次のように使えるでしょう。

A:What are cultural nuances to consider when doing business in Japan?
B:Yes, but let me organize my thoughts first before discussing with you.

A:日本でビジネスをする際に考慮すべき文化差は何かある?
B:あるけど、まずは思考を整理させてくれ。それから議論しよう。

ぜひ使ってみてください!

森田系太郎
森田系太郎Keitaro Morita

会議通訳者・翻訳者。日米の大塚製薬を経て、現在は製薬CROのシミック㈱のシニア通訳者 兼 フリーランス通翻訳者。上智大学(法学[学士])、立教大学(異文化コミュニケーション学[修士]、社会デザイン学[博士])、モントレー国際大学院(翻訳通訳[修士])卒。編著書に『環境人文学 I/II』(勉誠出版、2017年)がある。日本会議通訳者協会(JACI)理事で、JACIのホームページでコラム「製薬業界の通訳」を連載中。立教大学・兼任講師/研究員、英検1級・全国通訳案内士・国連英検特A級保持者(外務大臣賞)。 趣味は小6から続けているテニス。