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2024.03.01 UP

セカンドキャリア
ミドル・シニアから通訳ガイドになるには

セカンドキャリア<br>ミドル・シニアから通訳ガイドになるには
※『通訳翻訳ジャーナル』WINTER 2024より転載。

中高年からの挑戦で重要なこと

自己研鑽、身体のメンテは
欠かさず、働き続ける

コロナ禍でインバウンドがストップした際も、旅行会社が新たにチャレンジした京都のオンラインツアーを任されるなど、取引先からの信頼は厚い。さらに、新人研修からの縁で、GICSSのさまざまなイベントに参加している。
「2011年からは新人研修で講師を務めています。そのほか、各地の研修の講師も経験させてもらっています。研修講師は自分自身の勉強にもなります」

コロナの時期を除き、平均で年間約200日は稼働する多忙な日々。しかも2週間ほどかけて日本を縦断するタイプのロングツアーをメインで担当している。家を空けることも多いが、通訳ガイドとしてのスキルの研鑽は欠かさない。学生時代から50年以上、毎朝、英字新聞を読んで、日本の社会情勢や外交問題などを英語と日本語でインプットしている。記事の中でも社説はガイドとしてのトーク構成の勉強になるそうだ。
「オフの日は、精算業務や次のツアーの準備が中心ですが、体が資本ですので、体力、気力維持のために、スポーツジムで泳いで、近隣を1日1万歩程度歩くようにしています。ガイド時の1日あたりの歩数は平均1万歩を超えるんですよ。さすがに2万5000歩を歩いた日は、その晩と翌日に筋肉痛になります。ロングツアーが1本終わるたびに、整体の先生の施術をうけてメンテナンスしています」

ロングツアーや富裕層向けのツアーを担当すると、お客様が同世代であることも多い。いつも笑顔で元気いっぱい、親しみやすいミッキーさんはどのツアーでも人気者で、お客様から別れ際に「会えなくなるのがつらい」と泣かれてしまうこともあるという。
「通訳ガイドの仕事をしている中で年齢がハンデだと感じることはあまりありません。しいて言えば、登山などが組み込まれたちょっとハードな内容のツアーやお客様が元気いっぱいの中高生だと、体力面で厳しいときもあります」

通訳ガイドの仕事を始めたのが58歳。ほぼシニアと呼ばれる年代からのスタートだったが、「ガイド歴はもう会社員時代の半分になりました。本当に毎日が楽しいです」と福井さん。すでに2024年のロングツアーの予定も10本以上、決まっているそうだ。セカンドキャリアで輝く福井さんの働きぶりは、シニア層のあこがれの姿かもしれない。

ミドル・シニアだから
よかったこと・メリット

定年なし!知識はトークに生かせる
ビジネス業界では再雇用制度などもありますが、それでも70才以上の在職はなかなか難しいと思います。その点、全国通訳案内士は、本人が通訳ガイドとして必要な能力を発揮できる限りは、定年はありません。また通訳ガイド業務ではオペレーションが基本ですが、お客様はガイドのトークを期待しています。シニア層の通訳ガイドは社会全般の知識が豊富、人生経験も豊かなので、話題満載のトークを展開できます。その点はシニア世代が有利だと私は思っています。

☆ADVICE☆
セカンドキャリアで通訳ガイドをめざす人へ

前職の「地位」は役立たない
今までの社会経験と人生経験を大いに生かせるのが通訳ガイド業界で、実際、私のように60歳前後で参入しようとする方は多くいらっしゃいます。ただ、前職の最終職位(地位)はまったく役に立たないということを知っておいていただきたいです。通訳ガイドはお客様をご案内する立場です。地位にこだわっていては成功しませんので、割り切りが必要です。そしてまずは全国通訳案内
士試験に合格し、通訳ガイド団体に所属し、新人研修を受けるところからはじめましょう。

※『通訳翻訳ジャーナル』WINTER 2024より転載。

★ミドル・シニア 翻訳者の記事はこちら

*ミドル・シニアの挑戦について詳しく知りたい人は『通訳翻訳ジャーナル』2024年WINTERをチェック!

https://tsuhon.jp/book/journal/24_1/
福井 ミッキー道孝さん
福井 ミッキー道孝さんFukui Michitaka

大学卒業後、貿易会社(2社)、メーカー(1社)の海外部門に計33年間勤務。退職後、通訳案内士試験(現在は全国通訳案内士試験)に合格し、2006年より専業の通訳ガイドとして稼働開始。パッケージツアー、FIT、インセンティブ、VIP&セレブまで多岐に渡り、通訳ガイドおよび商談通訳等の業務に従事。