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2023.06.01 UP

ゲーム翻訳の仕事とは?必要なスキルやなり方を聞いてみました!

ゲーム翻訳の仕事とは?必要なスキルやなり方を聞いてみました!
※通訳・翻訳ジャーナル2021年夏号 特集「ゲーム翻訳者になりたい!」より転載

ゲーム翻訳の仕事を始めるには、どのようなルートがあり、どんなスキルが必要なのだろうか?
現役のゲーム翻訳者に、志望者が気になるポイントをうかがった。

大江昌道さん
大江昌道さんMasamichi Oe

株式会社キーワーズ・インターナショナル リードリングイスト。大学卒業後、市役所勤務のかたわら翻訳を学び、2003年からフリーランスの英日ゲーム翻訳者として活躍。2014年に㈱キーワーズ・インターナショナルに社内翻訳者として入社。翻訳に携わった代表作は『Alien: Isolation』、『Far Cry 4』、『Rage 2』、『Ghost Recon Breakpoint』など。

ゲーム翻訳の仕事は、どのように始めるのか? 大江さんの例を紹介

働きながら翻訳学校で学び
偶然出会った「ゲーム翻訳」という天職

フリーランスのゲーム翻訳者を経て、世界的なゲームローカライズ会社、キーワーズ・インターナショナルの東京オフィスでリードリングイストを務める大江昌道さんは、ゲーム翻訳の仕事を始めて20年近くのキャリアを持つベテランだ。

しかし、最初からゲーム翻訳という道をめざしていたわけではないという。
大学卒業後は市役所に入職し、国際交流を担当する部署に配属。そこでの業務で英語を使ったことがきっかけで、次第に本格的に英語を使う仕事がしたいと考えるようになった。独学で英語を学び直した後、仕事として真っ先に思いついた「翻訳」の勉強をしようと、翻訳学校の基礎コースと出版翻訳コースを計3年ほど受講。並行して翻訳者ネットワークの「アメリア」にも入会し、仕事の情報も探すようになった。

「アメリアで、たまたま『ゲーム翻訳者募集』の求人を見つけて、ゲーム翻訳という仕事があることを初めて知りました。もともとゲームは大好きで、色々なゲームをプレイしていたため、興味を持って応募したところ、採用されて仕事がもらえるように。それが翻訳者デビューとなりました」

その後、2003年にフリーランス翻訳者として独立。当時はゲーム案件を多く扱う翻訳会社から仕事を受注しており、主にFPS(※)やPC向けのストラテジーゲームの翻訳を行っていた。

2014年には社内翻訳者としてキーワーズ・インターナショナルに入社。現在は登録翻訳者のトレーニングやマネジメント業務にも携わり、翻訳学校のフェロー・アカデミーなどでゲーム翻訳講座の講師もつとめている。

※ FPS:ファーストパーソン・シューティングゲーム(First-person shooter)。操作するキャラクターの視点で進行するシューティングゲームのこと。

ゲーム翻訳で扱う文章の種類
ゲーム翻訳では、主にこのような文書を扱う。ゲーム内のテキストがメインではあるが、それ以外にも様々な翻訳需要がある。

【ゲーム翻訳者の働き方】

フリーランスが大半
社内翻訳者はより広範な業務も

ゲーム翻訳の仕事をするためには、大きく分けて、
①フリーランス翻訳者として仕事を受注する
②ゲーム案件に強い翻訳会社やローカライズ会社、ゲーム会社に社内翻訳者として就職する

という2つの道がある。大江さんによると、業界全体では社内翻訳者の割合は少なく、フリーランス翻訳者が大半のようだ。

①の場合は、ゲーム翻訳案件を扱う翻訳会社や、ゲームに特化したローカライズ会社などに翻訳者として登録し、そこから仕事を受注する。
ここで言う「ローカライズ会社」とは、翻訳・校正のみを行う一般的な翻訳会社とは異なり、デバッグやLQA、音声収録など、ゲームローカライズ関連の幅広いサービスを提供している会社のこと。国内外には多くのローカライズ会社があり、登録の際は翻訳会社と同様にトライアルが課せられる場合が多い。

ソースクライアントのゲームパブリッシャー/デベロッパーが直接フリーランス翻訳者に仕事を依頼することもあるようだが、それは稀なケース。基本的には、翻訳会社やローカライズ会社を経由して仕事を請けることとなる。仕事の内容としては、テキストの翻訳のみを担当する場合が多い。

②の場合は社員という立場になるため、翻訳以外にも、用語集の作成、クライアントへの問合せ、音声収録への立ち合いなど、より多くのローカライズ上の工程に関わることとなる。

「フリーランス時代は、だいたい午後から始めて深夜まで翻訳をするという生活リズムでした。1日の処理量は原文で2000ワードほど。今は10時〜19時という勤務時間に従って仕事をしています。いずれにしても、集中して翻訳できるのは1日8時間くらいが限界ですね」

【ゲーム翻訳の仕事に必要なスキル】

高い語学力とゲームのプレイ経験は必須

ゲーム翻訳では、翻訳に必要な高い英語力、日本語力は必須だが、さらにゲームならではの決まりごとや専門用語に関する知識が必要となる。また、翻訳するテキストは一つのゲームで数十万ワードにもなり、複数の翻訳者がチームとなって作業を行うことが多いため、コミュニケーション能力も求められる。

『セーブ』『実績』など、ゲーム特有の用語や概念を扱うので、適切な翻訳にはある程度のゲームプレイの経験が欠かせません。RPG、アクション、シミュレーションなど、さまざまな分野のゲームを一通りやっておくと良いでしょう。また作品によって、ファンタジー、軍事、SFといったエンタメ系の各ジャンルの知識も必要です」

加えてゲーム翻訳ならではの難しさに、台詞や場面の文脈情報が不足しがちということがある。翻訳用のファイルに、話者の性別や年齢、コマンドが出る状況などの情報が示されていない場合もあるのだ。

その場合はクライアントに確認したり、文脈を予測して翻訳する。たとえばシューティングゲームの“cover”の訳は、「援護する」という動詞か「遮蔽物」という名詞、2通りの可能性があり、文脈情報がないと判断が難しい。

「そのような場合の対処の仕方は、経験を積むことでわかってきます。ゲーム翻訳は、多くの人にゲームを届けるお手伝いができ、また開発の舞台裏も覗けるという、ゲーム好きにとってはたまらない仕事。スキルのある翻訳者の需要は高いので、興味と向上心のある方はぜひ挑戦してみてほしいです」

ゲームコントローラー

気になるポイント! Q&A

Q プログラミングの知識は必要?

A 特に必要ありません。ただ、翻訳するテキストに変数やプログラム上の「タグ」が含まれる場合があるので、その処理の仕方は実地で学ぶ必要があります。また、基本的なPCスキルと、守秘義務などに関するITリテラシーは必須です。

Q CATツールは使う?

A ローカライズ会社やクライアントの方針によります。弊社では、発注元から指定が無い場合は主にmemoQを使用しています。複数人での作業の際に用語集や資料などの共有がしやすく、またQA機能でタグの抜けなどがチェックできて便利です。CATツールの使用が条件の案件もあるため、基本的な操作は覚えておいたほうが良いと思います。

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